昨日とおととい、二日続けて、夕方の時間に月を撮影しました。その撮影に使ったカメラについて書くのが本投稿の趣旨です。
今、ネットの動画共有サイトYouTubeにアップロードされる動画のほとんどはミラーレス一眼カメラや自撮りに最適なアクションカメラ、あるいはスマートフォンでしょう。
私が月を動画で撮影するのに使ったのは民生用ビデオカメラです。
同種のカメラとしては、キヤノンのiVis HF M41(M41)というビデオカメラを持っており、手軽に撮影するときは重宝しています。
私がそのビデオカメラを使い始める前によく使っていたビデオカメラがあります。JVCケンウッド(JVC)のGZ-HM350-B(ブラック)(HM350)という非常に小さなビデオカメラです。
購入したのはずいぶん前になります。
このカメラにはファインダーがついていないため、モニタを見ながらの撮影になります。操作方法は簡単で、モニタになる扉を開くとスイッチが入り、録画ボタンを押せばすぐに撮影が始まります。
このHM35にはM41にはない機能が搭載されています。
ひとつは、「タイムラプス」動画が手軽に撮影できることです。
今はミラーレスにもそれに準じる機能が搭載されています。しかし、多くはインターバル撮影で、タイプラプス動画として記録されるカメラは多くはないのではないでしょうか。
そしてまた、ミラーレスは撮像素子のサイズが大きいため、比例して静止画のサイズがおおきくなります。仮に30フレームで撮影した場合、1秒間分の再生には30枚の静止画が必要になります。それを想像するからか、私はミラーレスでインターバル撮影をするのは億劫です。
インターバル撮影というのは、設定した間隔で静止画を連続して撮影する機能です。撮影されたデータを確認すると、撮影済みの静止画が設定した枚数保存されます。
これはアニメーションのためにコマ撮りするのと同じ理屈で、少しずつ動きが異なる静止画を連続して再生すると、本来は動きがないものや、少ないものに、眼に見える動きを与えることができます。
HM35の場合は、インターバル撮影するところまでは同じですが、それがカメラの中でひとつのタイムラプス動画を自動で作成してくれることです。
それが楽しくて、HM35を使って、雲の動きを撮影し、本コーナーで何度か紹介しています。
こんな風に、他のカメラにはなかなかない機能がHM35にはあり、私のお気に入りのカメラでした。
そのHM35が数年前のある日、突然反応しなくなりました。モニタになる扉を開いても全く無反応になったのです。すぐに修理に出せば、その時なら、まだ修理を受け付けてもらえたかもしれません。
しかし、先延ばししているうち、メーカーの修理が終了してしまいました。
それでもタイムラプス動画を撮りたかった私は、タブレットPCにインターバル撮影をするためのアプリを入れることで同じような撮影のできることがわかり、何度か試したことがあります。
ただ、HM35のように手軽でなかったため、使わなくなりました。
HM35にはもうひとつ、私が気に入っている機能があります。それは、超望遠の撮影ができることです。
HM35に搭載されている撮像素子のサイズは、1/4型です。キヤノンのM41は1/3型です。今のミラーレスなどに比べれば小さく感じるかもしれません。しかし、テレビ局のスタジオカメラは、未だにこのレベルの撮像素子ではなかったかと記憶しています。
私はテレビのニュースは見ませんが、テレビのニュース映像を見ていて、写りに不満を持つ人はいないでしょう。このサイズの撮像素子で、充分、綺麗な映像は撮影できるのです。
逆のいい方をすれば、ミラーレスの撮像素子は、無駄に大きすぎるといえなくもありません。
ともあれ、撮像素子のサイズが小さいことで、超望遠域を持つレンズを小さく作れ、搭載することができます。
HM35に搭載されているレンズは、焦点距離が3.0mmから108mmまでの36倍ズームです。35ミリフルサイズに換算すると、標準レンズの50ミリに近い43.7mmから始まり、最望遠は1573mmです。
フルサイズのカメラで使う1500mmのレンズはありません。それが、HM35は、掌に載る大きさのボディに収まっています。
私はあまり使う予定はありませんが、デジタルズームも使えるようになっています。デジタルズームというのは、部分を拡大して、遠くのものをより大きく撮影する機能です。
部分を拡大するため、映像の画質が低下します。
そのデジタルズームは、光学ズームの2倍に相当する72倍と、5.5倍の200倍を選べます。
最高広角の43.7mmの72倍は、35ミリフルサイズ換算で3146mm、200倍は8740mmです。映像の粗さを我慢できれば、これだけの超々望遠で撮影することだけはできます。
このように、他のカメラには換えがたい魅力を個人的には持っていたHM35が、数年前から使えない状態にありました。
今は、主力商品がミラーレスやアクションカメラなどに移ったことで、メーカーはこの種のビデオカメラからほとんど撤退しています。それにより、欲しい人がいても手に入らない状況です。
使ってみたいけど修理しなければならない、その修理もできないとなれば、中古で手に入れるよりほかありません。しかし、中古市場で流通することは少ないです。
そのHM35が中古で手に入れられることを知り、すぐに購入しました。
届いた商品は、カメラ本体だけが入っているだけで、ほかの付属品は、専用電池も、電池に充電するための電源ケーブルも入っていませんでした。
もしも、このHM35を初めて使う人であれば、最小限、電池と電源ケーブルを別途用意しなければならなくなります。私はそれらを持っているため、電池の充電をしてすぐに使うことができました。

このHM35で、月を動画で撮影したというわけです。すでに書いたように、光学ズームの最望遠にすると、35ミリフルサイズ換算で1573mmの超望遠になります。
おとといは、久しぶりに使ったこともあって、フルオートで撮影しました。すると、月の発色やフォーカスが、月の移動によって変化するなどしたため、昨日はマニュアルモードで撮影しました。
マニュアルフォーカスで天体の月を撮影するのだからと、目一杯フォーカスを遠くにしたところ、月がぼやけて写ります。おかしいと思って、近い方へフォーカスを移動し、ようやくフォーカスを合わせることができました。
思っているよりも月は地球から近い、ということになりましょうか? それともHM35の最望遠域は宇宙の端ぐらいまで余裕があるということでしょうか?
ホワイトバランスは、マニュアルの[太陽光]を選びました。ほかには、明るさの補正をしています。
撮った動画を動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioに取り込んで、動画の前後をカットすることなどをしました。
それを取り込む際、ひと手間余計にかかりました。
撮影された動画を確認すると、フレームレートが【23.97】となっているので、DaVinciのマスター設定で、タイムラインフレームレートを【23.97】にしました。
すると、次のように注意を促す確認画面が現れました。

一旦は[変更しない]を選んでファイルを読み込んだのち、新しいプロジェクトファイルを作り、今度はフレームレートを【30】に設定して同じ動画を読み込もうとすると、また、同じ画面が現れました。
最終的には、【59.94】にし、[インターレス処理を有効化]にチェックを入れることで、この画面が現わさずにファイルを読み込むことができました。
同じことは、キヤノンのM41で撮影した動画ファイルのときにもいえます。
ビデオカメラは、テレビ放送の規格に合わせ、「インターレース(飛び越し走査)」(59.94フィールド/秒)で撮影する構造になっているようです。
このような過程を経て出来上がった月の動画を下に埋め込んでおきます。なお、動画は、前後の部分をカットしただけで、色編集などの手は一切加えない、撮って出しの状態です。
撮影した時刻は、昨日の午後4時37分です。昨日は一年で最も昼の時間が短い頃とされる「冬至」の翌日です。東京の日の入り時刻は、最も早かった4時28分より4分遅い4時32分でした。
ということは陽が沈んだ5分後ぐらいになります。しかし、まだ空は十分な明るさが残り、快晴の青空に月が東の空の高いところに浮かんでいました。
昨日正午の月齢は【10.1】です。
その月が、HM35の光学ズームを最望遠にして撮ると、ちょうど月が画面一杯近い大きさで写すことができます。私が持っているかほかのカメラでこれだけ大きく月を撮ることはできません。
そういえば、1964年に開かれた東京オリンピックを記録する市川崑監督(1915~ 2008)の公式記録映画には、水平線から昇る朝日を画面いっぱいに捉えたカットがあります。それを撮るため、超望遠レンズを使ったというような話を昔に何かで読んだ記憶があります。
このように、JVCのお気に入りのビデオカメラGZ-HM350-Bを数年ぶりに使うことが叶い、大満足です。
思えば、私と日本ビクターのビデオカメラは付き合いが長いです。その昔、VHSビデオのデッキに接続して使うビデオカメラを使いました。
おそらく、民生用ビデオカメラの一号機でしょう。カメラは非常に大きくて重く、とても外に持ち出して使えたものではありませんでした。
専用のビデオレコーダーにしても、テレビ番組を録画するビデオデッキからテレビチューナーを外しただけのような大きくて重いもので、それとビデオカメラを担いでひとりで撮影に行くことはまず不可能でした。
当時ですから、ビデオカメラには撮像素子ではなく、撮像管が内蔵されていました。
それぐらい昔からビクターのカメラとは付き合いがあり、JVCケンウッドに替わった今も個人的には技術を信頼しています。
ミラーレスやアクションカメラのブームが一段落したら、また、昔ながらの民生用ビデオカメラを開発・販売して欲しいと思っていますが、どうなりますことやら。