人が持つ根源的な欲求

昨日、Yahoo!ニュースで記事がひとつ目に入りました。ある人の発言を話題として扱ってニュースにしたものです。

その話題を提供したのは、ネットの大規模掲示板「2ちゃんねる」のサービスを始めたことで知られる「ひろゆき」こと西村博之氏(1976~)です。

私は西村氏や「ホリエモン」こと堀江貴文氏(1972~)が登場するニュースはなるべく目に入れないようにしています。しかし、今回は内容に興味を持ち、下に貼り付けた記事を読みました。

記事によると、西村氏の発言は、彼が生出演したABEMAのネット番組”Abema Prime”で、ある事柄に反応して飛び出しています。

ひとりの女性バイオリニストが、SNSのXに投稿したものが取り上げられます。その女性は、音楽大学を出ても、その世界で収入を得て生活していくのがいかに大変なことであるかについて書いていたそうです。

この投稿を紹介したあと、西村氏が次のようにコメントします。

油絵具が持つ物質的な魅力

デジタル全盛の今は、物としての物質を所有しない時代といえるでしょう。

写真の場合も、昔は、プリントされた写真を自分の手に取り、物としての実感を味わいながら、それが撮影された時のことを思い出すことができました。私はネガフィルムよりもポジフィルム(リバーサルフィルム)を好みました。それでも、現像されたフィルムは一枚ごとにマウントされ、それを手に持って鑑賞する喜びがありました。

音楽を楽しむにしても、今はネット配信ができたことで、パッケージされた商品としての物がありません。昔はレコード盤やコンパクトディスク(CD)を手に入れ、レコードプレーヤーやCDプレーヤーに自分の手でセットし、音楽を愉しみました。

絵の世界も、漫画チックなものやイラストであれば、PCの画面を見ながら描くことが可能となりました。自分で描かず、人工知能(AI)に作成させることもできます。

私は昨日、絵具と接する時間を持ちました。パレットに油絵具を載せ、自分の手で絵筆を持ち、カンヴァスに絵具を載せていきます。デジタル時代にあっても、やっていることはアナログです。手で触れることができないデジタルでは味わえない実感がアナログにはあります。

今の子供たちが泥んこ遊びをするかどうか知りません。自分の手で泥を掴み、思い思いの形を作る楽しさは何物にも代えられません。油絵具を使って絵を描く行為は、子供の泥んこ遊びに似た楽しさがあります。

つげ義春 独りの世界

つげ義春1937~)という存命中の漫画家がいます。ご存知ですか?

私はその人の存在は知ってはいましたが、漫画に接する機会が極めて少ないこともあり、つげの漫画は読んだことがありません。

つげについて書かれたネットの事典ウィキペディアで確認すると、次のような記述があります。

ガロ』を通じて全共闘世代大学生を始めとする若い読者を獲得。1970年代前半には『ねじ式』『ゲンセンカン主人』などのシュールな作風の作品が高い評価を得て、熱狂的なファンを獲得した。

つげ義春『発表50周年記念 ねじ式 原寸大複製原画集』
つげ義春’s ゲンセンカン主人 summarized in English

漫画家の蛭子能収1947~)も、つげが書いた『ねじ式』を読んで衝撃を受け、まったく興味がなかった大阪万博(日本万国博覧会)へ行くからと嘘をついて、勤めていた看板店を辞め、東京へ出たことが知られています。

ガロの時代

朝日新聞の土曜版には「歴史のダイヤグラム」というコーナーがあります。

このコーナーのことは本コーナーで取り上げたことがあるかもしれませんが、原武史氏(1962~)が毎回、鉄道にまつわるさまざまなエピソードを書いています。

本日のそのコーナーは、つげが、もしかしたら彼の人生で、最も精力的に作品を発表した1968年9月のある日に起きた出来事が書かれています。題して「つげ義春、九州への逃避行」です。

ポートレイト撮影の心得

本日の日経新聞「このヒト」のコーナーに次の記事があります。

記事では、実業団の相撲部として名門の日本通運相撲部で初の女性部員となった奥富夕夏氏(1998~)を紹介しています。

女子相撲に関心を持つ人であれば、奥富氏を知らない人はいないのでしょう。

奥富氏は小学生のときに相撲を始め、千葉県柏市の少年団で相撲を始めたと書かれています。それを読んで、もしかしたら、先月あった九州場所で初優勝を飾った琴櫻将傑関(1997~)とは、子供の頃から相撲を通じた仲間意識を持つのではと思いました。

琴櫻 初優勝!<令和6年九州場所>SUMO

琴桜関も5歳の時に相撲を始めていますが、通ったのが柏の相撲道場だからです。年齢も1歳違いです。

奥富氏は「女子の部では敵なし」の状態で、中学時代には全国大会で優勝を重ねたそうです。日本大学時代も頂点を極め続けたとのことです。

舟越桂の作品について

舟越桂19512024)という彫刻家を知っていますか?

舟越は、彫刻家・舟越保武19122002)の次男として生まれ、父と同じ彫刻家の道を歩みました。

舟越は、今年の3月29日、肺がんで亡くなりました。享年は72です。

私がはじめて舟越を知ったのは1989年4月2日です。日付まで正確にわかるのには理由があります。

その年、NHK総合は毎週日曜日の午後11時25分から45分までの20分間で、「一点中継 つくる」という美術番組を放送していました。毎回、ひとりの作家の創作の様子を伝える番組です。

私は当時から、興味を持った番組は録画する習慣がありました。しかも、深夜の放送ですから、早寝する私は録画してしか見ることができません。

当時のことですから、私はVHS方式のビデオデッキでビデオテープに録画し、あとで見ました。

ですから、舟越を初めて知った日は、4月2日に録画した番組を見た3日以降となります。

95歳の美術史家

ここ最近、高齢であるのに、現役で元気に活動されている人を知り、驚かされることが続きます。

横尾忠則1936~)が87歳になられるのに、とてもその年齢に見えないことに驚かされました。続けて、宇野亞喜良1934~)は90歳で今なお、若々しい感覚で仕事をされていることを知り、これまた驚きました。

そして今度は、美術史家の高階秀爾氏(1932~)です。高階氏は95歳になられますが、顔つきは現役時代そのままの鋭さです。

高階秀爾 – 「アートの歴史は未来を語る」

日曜日の午前9時からNHK Eテレで放送される美術番組に「日曜美術館」があります。私はこの番組を半世紀近く見ているはずです。高階氏は、美術全般について語れる専門家として、同番組には欠かせない存在です。

NHKが同番組のほかに美術を取り上げる番組を作ると、高階氏は監修として関わることが多くありました。番組は書籍にもまとめられ、そこにも、高階氏が登場され、それぞれの作品について解説されています。

この日曜日(9日)、「日曜美術館」は高階氏を取りあげた「美を見つめ、美を届ける(2)名画を見る眼 高階秀爾」を放送しました。私は録画して見ました。

宇野亞喜良商店の少女の魅力

2日にNHK Eテレで放送された「日曜美術館」を録画し、昨日見ました。

私は昔から同番組を見る習慣がありました。それがいつからか、疎遠になりました。理由は、昔に比べて内容が浅くなったように感じたことなどです。

昔の同番組は、美術の専門家をゲストに招くようなスタイルでした。それが、2000年代に入ってしばらくした頃からでしたか、タレントが多く出演するようになりました。それだけ、バラエティ色が強まっています。

そんな感じで、最近は同番組を見ないだけでなく、放送内容をチェックするのも疎かな状態でした。

新年度になり、同番組の制作スタイルに少し変化があったようです。新聞のテレビ欄を見て、見てみたいような放送をしているのに気がつきました。

2日は「変容するイラストレーション 宇野亞喜良」。一世を風靡したイラストレーターでグラフィックデザイナーの宇野亞喜良1934~)を特集しています。

横尾忠則に学ぶ何でも受け入れる生き方

昨日(2日)の午前7時から、NHK BSで「横尾忠則 87歳の現在地」が放送されました。これは、今年の3月にNHK BSプレミアム4Kで放送された番組です。

少し前にそれがNHK BSで再放送されることを知り、早くから録画の予約をしていました。

私は横尾忠則1936~)の作品そのものがそれほど好きというわけではありません。

彼は西洋絵画の歴史や技法を学ぶことをせず、本能的に絵具を使い、コラージュを織り交ぜて、自己流の作品を作りあげています。

どんな時代もマスメディアは、珍しい人が登場するとそれを盛り立て、時代の寵児に祭りあげます。若き日の横尾もマスメディアによってその地を得て、それが今に続いています。

彼は途中で、商業美術から画家宣言をしたりしていますが、彼がやっていることは、それ以前と以後で変わったことはありません。彼流の思いつきで筆を動かし、それを「作品」としていることです。

強い粘性の触感を味わう愉しみ

昨日は、油絵具と接する時間を持ちました。どんなことでも、それに接する機会を多くするほど、得られることが多くなります。

直近まで描いた『自画像』が出来上がってしまい、今のところは、新しい絵を描いていない状態です。それでも、絵具に接する時間を持つため、年単位で手を入れている、レンブラント16061669)作品の模写もどきをしています。

レンブラントは63歳まで生きましたが、晩年になるほど作品の出来栄えが向上しました。私が年単位で手を入れているのは、マルガレータ・デ・ヘールという老婦人を描いた肖像の顔の部分です。

模写に使っているのは、1990年12月27日に購入した『巨匠の絵画技法 レンブラント』です。この技法書については、本コーナーで何度か取り上げています。

レンブラント作品を初期から晩年まで11作品取り上げ、それぞれの作品を、レンブラントの絵画技法の観点から検証しています。

画面の縦横の比率と表現の幅

油彩画を描くのに最も用いられる支持体カンヴァスです。昔は板に描かれることが多かったようです。

今でも絵画作品を「タブロー」といったりします。これはおそらく「テーブル」から派生した言葉(?)で、板に描かれた油彩画を昔はタブローといったりしたのかもしれません。

ルーベンス15771640)の作品は板を貼り合わせたパネルに描かれています。

ルーベンスは大きな工房を持っており、多くの弟子を使っていました。ルーベンスには外交官の一面もあり、注文を受けた作品さばくため、ルーベンスが下絵だけを描き、あとの工程を弟子たちに任せることが多くありました。

はじめから終わりまでルーベンスがひとりで描いた油彩画は、ルーベンスの油彩技法の特徴がよく表れています。

ルーベンスがパネルを好んだのは、平滑な画面を求めたからです。パネルには、今のジェッソのような下地材を塗り重ね、それを平滑に磨きます。

その上に油絵具をつけていきます。その際、暗部は溶剤で薄く溶き、透明性を持たせます。一方、明部はシルバーホワイトなどで不透明に塗ります。