色の検証は難しい

ネットの動画共有サイトYouTubeに、Vloggerのおひとりのドリキン氏が、次の動画を上げていました。

ドリキン氏のYouTube動画から 2種類の可変NDフィルター比較

ドリキン氏が現在使っているプロ向けシネマカメラで使う可変NDフィルターを2種類使い、主に色相を検証する動画です。

私も最近、自分がLog動画の撮影に備えて保有している可変NDフィルターで発生する色被りを調整することを本コーナーでしたばかりだったため、興味深く見ました。

私の場合は、Kenko(ケンコー・トキナー)製の「バリアブル ND Intial」という可変NDフィルターを使っています。メーカーの説明では、これをつけることで起こりやすい色被りを改善した製品ということです。

しかし、実際に使ってみると、個人的には、若干、Y(イエロー)の色被りが発生するように感じました。そこで、ピクチャープロファイル(PP)にある[色の深さ]で、G(グリーン)を-1、R(レッド)-2に設定し、同じ被写体を撮影して、どの程度補正できるか確認しています。

それをしたことで、PPで設定しておけば、可変NDフィルターを使っても、より見た目に近い色相になりそうなことが自分なりにわかりました。

可変NDフィルター色被り補正テスト

ドリキン氏は、新しく手に入れたDrop-in Filtersというメーカーの可変NDフィルターの“BREAKTHROUGH FILTER”と、キヤノンのレンズを使うときに使うマウントアダプタ「EF-EOS R ドロップイン 円偏光フィルター A付」に取り付けられるキヤノン純正のNDフィルターを交互に付け替えて、それぞれで撮れる映像の色相を検証しています。

ドリキン氏の動画に、2種類の可変NDフィルターの色相をひとつの画面に並べたショットがありますので、その部分を静止画にしてみました。

ドリキン氏のYouTube動画から 2種類の可変NDフィルター比較

比較すると、色相が大きく異なるのが一目でわかります。左がBREAKTHROUGH FILTERで、右がキヤノン純正のNDフィルターで撮影した映像です。

ドリキン氏は、BREAKTHROUGH FILTERの方が、より忠実な色相になっていると考えているようで、動画のタイトルにも「噂の神NDフィルター」とつけています。

私が動画を見た印象では、BREAKTHROUGH FILTERをつけた映像は、NDフィルターにありがちなイエローの色被りのようなものを感じました。

その一方、キヤノンの純正フィルターは、若干マゼンタのような色味が被っているのか、空の色が、絵具の色でいえば、ウルトラマリンを感じさせる色味に見えます。

ドリキン氏は検証動画を午前6時台に撮影したといっていますので、今朝、私は自分のカメラとレンズで空を撮影してみました。

使用したカメラは、ソニーのミラーレス一眼カメラのα7 IIです。それに、マウントアダプタを介して、ヤシカ・コンタックス(ヤシコン)用カール・ツァイス、プラナー50ミリ F1.4をつけています。

ソニーα7 IIとカール・ツァイス プラナー50mm F1.4

撮影は本日の午前6時39分です。関東南部の当地は快晴です。

本日の日の出時刻は、東京が午前6時21分です。ということで、日の出から20分ほど経った時刻になります。レンズを向けた方向は、順光の方がより正確な色になるだろうと、ほぼ西方向です。

本日の豆知識
一年で最も遅い日の出時刻は、東京でいえば午前6時51分です。元日の頃にその時刻になり、それが13日続きます。ということは、今の時点からまだ30分間日の出が遅くなります。

撮影時の露出の設定は次のとおりです。

マニュアル露出で撮影していますが、露出のメーターを見て、プラスマイナス0になるようにして撮影しました。RAW画像で記録しています。

撮ったままの状態が下の画像です。

空 AWB

目で見たよりも暗く写っています。肝心の空の色は、ややグレーっぽく見えますね。

同じ設定で撮影したRAW画像を使い、WBをプリセットの[太陽光]に変更したのが下の画像です。

空 WB(太陽光)

同じRAW画像であるのに、色相がまるで違って見えます。空の青が強く出ています。ただ、見た目ではこれほど青は強くありませんでした。

次は、自分の眼で見た記憶を基に、それに近づけるように、WBと明度を変更したのが下の画像です。

空 WB(7700 K)+1.0EV

WBをマニュアルで色温度を7700ケルビン(K)にし、明度を1.0プラスにしました。これが見た目の空の色に近いのでは、と考えています。

ドリキン氏の動画の話に戻ります。ドリキン氏が撮影した動画からでは、どちらのNDフィルターがより忠実な発色をしているか他者には判別できません。基の発色がわからないからです。

厳密に発色を比較するのは難しいことでしょう。その場合、時間の変化で見える色が変わる、自然の風景は検証には向きませんね。また、今回の動画のように、変化がより激しい早朝は、一番検証が難しいです。

望ましいのは、カラーチャートに人工光を当て、その光の色温度をカメラに設定した上で、種類の異なるフィルターを撮り比べなければ、その違いがより正しくはわかりませんね。

ドリキン氏の動画から切り出した静止画には、太陽光を受けて光るビルの壁面が写っています。その色合いが違います。

左の画像に映る壁面は、温かみを感じる色合いに見えます。午前6時台に、そのような色合いに見えるのか、実物を見たドリキン氏にしかわかりません。また、ドリキン氏にしても、時間が経てば記憶に頼らざるを得なくなり、正確な色はわからなくなるのではないでしょうか?

手前のビルの陰になった壁面が、左は右に比べて若干明るく見えます。壁面だけでなく、ビルの背景の青空が、右に比べて左の方が、明るくなっています。

逆のいい方をすれば、本来はもっと暗く沈むべき部分がやや浮いているともいえます。

遠景に見える東京タワー1958~)の鉄骨に塗られた赤も、どちらの赤色がより忠実な色合いなのかは、裸眼で見たドリキン氏しかわかりません。そのドリキン氏にしても、あとになれば、あやふやな記憶に頼るしかならなくなります。

いつでも自分の眼で色合いを確かめられるものを同じ条件で撮ることでしか、フィルターの発色の違いは比較できないでしょう。

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