それがいつ以来のことか、とても思い出せないくらい、あることを本当に久しぶりにしました。
デジタルの時代に育った人には縁もなく、想像できないこと(?)かもしれません。デジタルになる以前、テレビ番組を録画するには、アナログのビデオテープに番組を録画しました。
私は昔から映像が好きで、民生用のビデオレコーダーが発売になると、いち早く興味を持ちました。1980年代初めの頃のことです。
ビデオの録画規格は、日本ビクターが開発したVHS方式と、ソニーの開発によるベータマックス方式の2種類があり、両方式には互換性はまったくありませんでした。
私はビクターのVHS方式を選択し、その方式で駆動するビデオレコーダーとしては、たしか、ビクターから発売された民生用レコーダーの2号機を手に入れ、使い始めました。
詳しい仕組みはわかりませんが、ビデオテープは、回転するドラムに密着して巻き付き、ドラムについているビデオヘッドで、信号を読み取る仕組みになっています。
こんな仕組みのため、録画中や再生中は一時停止を長くすることは、ヘッドのために良くないため、しない方がいいといわれたりもしました。
このドラム上のヘッドを掃除したのです。
本コーナーの何回か前に、年後半に私に起こった小災難について書きました。今回起きたことも、小災難に加えてもいいようなことです。
今は、デジタルのレコーダーをテレビ番組の録画・再生に使っています。
それに録画したままになっていた、米国の古い映画を見ては、本コーナーに取り上げることをしました。
録画しただけになっていた番組がなくなり、暇になりました。そこで今度は、昔にビデオテープに録画した番組を見ることを始めようとしました。
それをしたことで、小災難に見舞われました。
1997年6月4日にテレビ東京で再放送された番組を録画してあり、それを見ようと思ったのです。
その番組は「ドキュメンタリー人間劇場」枠の「のんきに暮らして…82年 たぐちさんの一日」というドキュメンタリー番組です。
制作された年の1996年度に、優れたテレビとラジオの優れた番組に贈られるギャラクシー賞の「テレビ部門 優秀賞」を受賞しています。これまでに、思い出しては見ることをするお気に入りの番組のひとつです。
私はビデオテープを基本的には3倍速で使いました。この場合の3倍は、3倍遅くテープを回転させながら、録画し、再生することを意味します。
この速度であれば、120分のビデオテープに3倍の時間を録画することができ、2時間用のテープに6時間分の録画ができます。その分、画質は低下しますが、私は画質の良し悪しは気にしないため、これで問題はありませんでした。
「たぐちさんの一日」はテープの最初に録画し、他に8番組が同じテープに録画されています。
テープの冒頭の「たぐちさんの一日」を見ようとしたところ、テレビの画面がノイズだけになり、映像を見ることができませんでした。
ビデオレコーダーを使ったことがない人であれば、故障を疑う(?)でしょうか。これまでレコーダーを使い続けてきた私は、その画面を見て、ビデオヘッドが汚れてしまったことを知らされました。
デジタルの時代にはこんなことは起こりませんが、アナログの時代は、こうしたアクシデントがつきものでした。
ビデオヘッドが汚れると、このように、ノイズで映像を見ることができないことがよく起こります。
これを解消するには、ビデオヘッドをクリーニングしなければなりません。ビデオが一般的だった時代は、クリーニングのためのビデオテープが発売されており、それをレコーダーに入れて再生や録画ボタンを押すことで、ヘッドのクリーニングができました。
昔に使ったクリーニングテープを捜しましたが、見つからないので、何十年ぶりぐらいに、クリーニングテープを購入しました。
それが昨日届き、早速クリーニングをしました。しかし、1回やっただけでは、変化が見られませんでした。そこで、3回続けてやってみました。それでも変化が無しです。
業を煮やした私は、クリーニングテープの効果を諦め、レコーダーの外蓋を外しました。ヘッドを自分の手で掃除しようと考えたからです。
無水アルコール(エタノール)があればよかったのですが、手元になかったので、カセットデッキのヘッドをクリーニングするための液を綿棒に湿らせ、ヘッドを綿棒でこすってみました。
これで、何とか映るようになってくれ、と願いながら再生スイッチを押しました。それ以前に比べてノイズが減りましたが、まだ、再生に適した画質ではありません。
そこでもう一度、手に入れたばかりのクリーニングテープでクリーニングを3回続けてしました。そのあとにテープを再生させると、元通り、ノイズのない映像が再生できることが確認できました。
再生を確認するのに「たぐちさんの一日」が入ったテープは使っていません。おそらく、そのテープの表面にカビなどがついており、それがノイズを発生させる原因となったであろうことが想像できるからです。
ということで、「たぐちさんの一日」は見ることを見送っています。
このようなことが起こると、再生させる前に、テープをよく観察しなければなりません。これが、アナログの時代の感覚といわれれば、そう、かもしれないです。