私はフィルムの一眼レフカメラの時代から写真を趣味にしています。被写体は身の周りのものがほとんどなので、表現の幅は、昔から一貫して狭いです。
本コーナーで何度も書くように、フィルムの一眼レフカメラを使った時代、私が好んで使ったのは焦点距離が50ミリのレンズです。
その時代、ズームレンズは一般的でなく、焦点距離が単一の単焦点レンズが使われました。
その中で私が50ミリのレンズを好んだのは、自分の眼の延長のように使える感覚が気持ちよかったからです。このレンズをつけたカメラのファインダーを覗くと、自分が撮りたい被写体の大きさが、肉眼で見たのとほとんど同じ大きさに見えます。
フィルムの時代に使ったカメラは、断るまでもなく、デジタル時代の今でいう35ミリフルサイズです。このカメラに焦点距離50ミリのレンズをつけると、ファインダーに結ばれる像の大きさが肉眼で見たのと同じになると書きました。
私は使ったことがありませんが、中判カメラや大判カメラ用レンズにも50ミリのレンズがあります。使ったことがないので、そのレンズをつけたとき、どのくらいの範囲が写るのか実感として持っていません。
大判になるほどその範囲は広がり、35ミリフルサイズでいうところの、広角や超広角に相当するでしょう。
それでも、中判や大判のカメラに50ミリレンズをつけてファインダーを見たとき、被写体との大きさは35ミリフルサイズと同じで、肉眼で見たのとほぼ同じになるように考えます。
30ミリフルサイズと中判や大判で見え方が違うのは、ファインダーで見える範囲と実際に写る範囲が広くなることです。
カメラを換えずに、レンズでその範囲を広げるには、焦点距離の短いレンズを使うことになります。具体的には、より広角のレンズを使うということです。
私がフィルムの一眼レフカメラで写真を楽しんだときは、いずれも単焦点レンズで、焦点距離が35ミリ、50ミリ、85ミリ、200ミリのレンズを揃えて使いました。
私にとっては35ミリが最も広角のレンズです。デジタル時代の今の感覚では、35ミリでは、広角の効果が薄いように考えるでしょう。
ですが、当時の私にとっては十分広角で、50ミリのレンズが好きな私には、35ミリのレンズは使いどころが難しく、実際、あまり使いませんでした。
長年、こんな感覚でカメラやレンズに接してきました。そんな私が、つい最近、焦点距離28ミリのレンズを使い始めたことは本コーナーで書いた通りです。
私は半月ほど前にキヤノンのミラーレス一眼カメラ、EOS RPに乗り換え、そのカメラを使い始めた一週間後に、RFマウント用レンズとしてRF28mm F2.8 STMを購入し、使い始めました。

これまで、長いこと写真を趣味としてきましたが、35ミリでさえ、私には広角で、使いにくく感じていました。その私が、より広角の28ミリに手を出し、果たして使いこなせるのか、使ってみるまで自分でもわかりませんでした。
それが使い始めてすぐ、非常に使いやすく感じていることは本コーナーで書いています。
人間の視野は広く、左右の幅は、両耳の脇に手を置き、それが視野に入るか入らないかぐらいの範囲までが見えます。
28ミリのレンズをカメラにつけ、ファインダーを覗いて、どのぐらいまで見えるか確認しました。
私が確認した限りでは、両肩の幅で手を前に出した範囲ぐらいまで画面に収まる感じです。ということで、人間の視野よりは狭く、前方に広がる視野の一部を切り取った感覚です。
雄大な自然を撮るには視野の広がりが狭いといえますが、日常的なスナップ写真を撮るには、ちょうど良い視野角といえましょう。
私が写真を撮る時は、ISO感度とF値、シャッター速度の露出三要素を自分で設定するマニュアル露出を使います。
私が使うEOS RPは、小型軽量に作られていることもあり、ダイヤルは、メイン電子ダイヤルとサブ電子ダイヤルのふたつしかありません。
それ以前使っていたソニーのα7 IIは、ボディの背面にコントロールダイヤルがついており、私はそれにISO感度の変更機能を割り当て、便利に使っていました。
RPにはそのダイヤルがないため、ISO感度の変更が非常な手間に感じました。
その後、RFレンズについているコントロールリングにその機能を割り当てられることに気がつき、快適に使えるようになりました。
焦点距離の使いやすさとコントロールリングの利便さとで、RPを使った28ミリでの撮影が、今の私にはベストの組み合わせに感じられます。
RPは、35ミリフルサイズの撮像素子が搭載されていますが、中心部分をAPS-Cサイズにクロップする撮影もできます。キヤノンの場合は、35ミリフルサイズの1/1.6です。ニコンなどのAPS-Cは1/1.5です。
28ミリのレンズを使いながらAPS-Cを選ぶと、28ミリに1.6をかけた44.8ミリのレンズの画角になります。私が好きな50ミリのレンズに近い画角です。
フルサイズとAPS-Cを使い分けることで、一本のレンズで、人間の視野に近い28ミリと、私が好きな50ミリ相当のレンズを使うのと同じ画角が得られ、二倍楽しむことができます。
遠くのものを大きく撮りたい欲求には応えてくれませんが、私の主な被写体である身の周りのものを撮る限り、28ミリのレンズ一本で、カバーできそうです。
RF28mm F2.8 STMのフィルター口径は55ミリです。私がおそらく半世紀ほど使うヤシカ・コンタックス用カール・ツァイスのプラナー50ミリのフィルター口径も55ミリです。


ということで、プラナー50ミリ用に買ったフィルターをRF28ミリで使うことができます。
昔、私はマクロレンズを持っていなかったので、プラナー50ミリにクローズアップレンズをつけて、花などを接写したりしました。そのクローズアップレンズを広角の28ミリにつけて使ったら、どんな感じでしょう。
ほかにも、プラナー50ミリ用のNDフィルターは、ND8、ND16、ND64、ND1000の4種類があります。
実際に使うかはわかりませんが、必要であれば、それをRF28ミリにつけて使ってみてもいいでしょう。
私としては、RFマウントのレンズがとりあえず一本欲しいということで、RF50ミリ F1.8 STMが品切れ状態ですぐには手に入らないことも手伝って、28ミリを購入しました。
この偶然が、これまでの私の感覚を大きく塗り替える結果を生み、これまで私が持っていた広角レンズに対する考え方も大きく変えてくれました。
広角レンズとしては、28ミリより24ミリが好まれる傾向があります。それもあって、メーカーは、24ミリのレンズに力を入れ、28ミリを多少蔑ろにしています。
もしかしたら、メーカー自身が、28ミリレンズが持つ可能性に気がついていないのかもしれません。
私は今、やっとそれに気がついたばかりなので、大きなことはいえませんけれど。
近いうちに、28ミリブームが来たりして。