ニューヨークを漢字でどう書くか知っていますか? 「紐育」と書いて「ニューヨーク」の意味になります。
こんな書き出しをしますと、本ページで何について書こうとしているか、勘のいい人で、古い映画を知る人であれば、気がつくかもしれません。
今回は、ミュージカル映画の『踊る大紐育』(1949)を取り上げます。
このところずっと、昔のハリウッド映画について書いています。NHK BSプレミアムで放送された作品を、あとで見ようと録りため、それが溜まったので、時が経ってから見ることをする一環で本作を昨日見ました。
放送されたのは昨年3月12日です。
例によって、予備知識なく見始めました。
出演者がタイトルで紹介されます。その中に、フランク・シナトラ(1915~1998)の名がありました。
本作は、”On the Town“(1944)というブロードウェイ・ミュージカルを下敷きとしたミュージカル映画です。3人の若い水兵が、24時間の時間制限で、ニューヨークの街を舞台に飛び回る設定の作品です。
原題は、舞台と同じ”On The Town”ですね。
教訓的なことが語られるわけではなく、3人の水兵が街で出会う女性たちとのドタバタを気楽な気持ちで見ていればいい作品です。
水兵を演じる3人のひとりがフランク・シナトラです。演じた当時、シナトラは34歳。「若い」というには、やや年齢が高いです。
スタンリー・ドーネン(1924~2019)と共同監督をするのは、『雨に唄えば』(1929)のジーン・ケリー(1912~ 1996)です。
ジーンにしても37歳のときの出演で、若い水兵さんたちの平均年齢は低くないです。
もうひとりの水兵は、ジュールス・マンシン(1915~1970)という俳優です。彼が出演した作品をネットの事典・ウィキペディアで確認すると、見たばかりの『イースター・パレード』(1948)にも出ていますね。
あとでもう一度見て、どんな役回りを演じていたか、確認することにします。
『イースター・パレード』でジュールズ・マンシンがどんな役を演じていたか確認しました。
フレッド・アステア(1899~1987)演じる主人公の名ダンサー、ドン・ヒューズに見いだされた新しいパートナーで、ジュディ・ガーランド(1922~1969)が演じるハンナ・ブラウンが、連れられて行ったレストランの支配人を演じています。
彼の店は祖父の代から続くらしいですが、自慢の料理を紹介する迷演技をするため、ガーランドは、ハンナを演んでじていることを忘れ(?)、地のガーランドとして笑いを堪えられずにいる(?)ように見え、微笑ましいです。
『イースター・パレード』を確認したことで、もうひとり、『踊る大紐育』と両方に出ていた俳優がいたことに気がつきました。
それが、本作でジュールズ・マンシンと意気投合する女性を演じたアン・ミラー(1923~2004)です。彼女は、変わった人類学者の役です。
彼女と出会うのはアメリカ自然史博物館で、そのときに、恐竜の骨格標本を倒壊させてしまう騒動を起こすのでした。
彼女が『イースター・パレード』では、ドン・ヒューズの元パートナーのダンサーを演じていました。
3人の水兵を演じる俳優が誰なのか、見分けられるようになるまで少々時間がかかりました。
全体的にコミカルな演出ですが、終盤のカーチェイスは、さすが本場、とうならされます。
水兵3人と彼女たち3人が乗ったタクシー(タクシーの運転手はシナトラの彼女)が逃げ、パトカーや白バイが追いかけます。
水兵たちが警官に追われる理由は、博物館に展示されていた恐竜の骨格標本を、倒壊させてしまったことです。
もうひとつ、逃げるために、速度オーバーでタクシーを走らせたことも、追われる理由ではあるでしょうね。
ニューヨークの下町の道路を走り回るのですが、道路を渡っていた人が、危うく車に撥ねられそうに見える場面が2カ所ほどあります。
それがスリリングだったため、何度か再生して確認しました。猛スピードで走る車の前を、すれすれで人が通り過ぎたりしています。
本作は1949年に公開された作品ですから、今のように、CGで合成映像を作ったりはできません。スタントマンを使ったにしても、命がけの撮影(?)のように見えます。
このあたりの演出は、ベースとなった舞台ミュージカルでは表現できないことで、映像作品ならではといえそうです。
音楽を担当したひとりとして、レナード・バーンスタイン(1918~1990)の名がありますね。
ファーストシーンとラストシーンは同じです。
午前5時57分。誰もない港を、体の大きな港湾労働者の男が、心はまだベッドの中、、、と朗々と声を響かせながら歩いています。
午前6時ちょうどに警笛が鳴り、港に停泊している米海軍の戦艦から、水兵たちが一斉に下船し、まだ眠っているニューヨークの街へ飛び出していきます。
3人の水兵は、24時間の制限を有効に使い、初めて見るニューヨークの街を堪能してやる、と張り切っています。
ヘルメットの作業員は、クレーン車の上から張り切った3人の水兵を見て、笑い、3人に「急いでるな。たった一日で何ができる?」と声を掛けます。
ラストシーンも同じで、外出許可の出た水兵たちが、一斉にニューヨークの街へ飛び出していきます。作業員の男は、同じように、水兵たちをクレーン車の上から眺めています。
ジーン・ケリーやフランク・シナトラが演じたような、おっちょこちょいの水兵たちが、今日もまた、ニューヨークの街で騒動を起こしているのだろう、と_。