ハイな気分はセザンヌ

これを書き始めた今の時刻は午前8時53分。まだ9時前ですが、ひと仕事を終えた気分です。

朝の時間に、1時間ほど絵を描きました。これが予想外にうまくいった感じを持ち、気分がとても良いです。手を加え過ぎると今ある感じが崩れてしまいそうで、今日はこれ以上手を入れないでおきます。

使っている絵具は油絵具で、今回は木枠に張ったカンヴァスではなく、手元にあったボールドキャンバスに絵具をつけています。日本の画材メーカー、ホルベイン工業の製品で、大きさはF3(27.3×22.0センチ)です。

昔のヨーロッパの画家がカンヴァスに描くようになる前は、板に描いています。私が今使っているホルベイン製支持体は、厚紙に目の細かいカンヴァスを張り付けたものです。

木枠に張ったカンヴァスと違い、筆で色をつけていてもカンヴァスがしならず、板にでも描いている気分が味わえます。

描いているのは自分の顔です。小さなF3いっぱいに自分の顔を描いています。

今日でこの絵に手を入れるのは3回目です。油絵具ですから、一度絵具をつけますと、数日間は加筆できません。

これを描き始める前、想像で女性を描いていました。しかし、描いていて気分が乗らず、断念しました。そんな気分になった原因は、色が思い通りの表現にならなかったことです。

想像で描くわけですから、自分の思い通りの色にすればいいのに、いわゆる“肌色”を作ろうとし、その結果として、ありきたりの女性像になってしまいました。

この失敗のあと、自分の顔を鏡に映し、見えた通りの色で描こうとしました。

私は、絵を描く人の多くがする(?)ような、木炭などで下書きするのが好きではありません。そこで今回も、直接絵具で描き始めました。2回目までは、常識的な色合いになりそうでした。

それが3回目の今日は、“ひらめき”のようなものが私に振り降りてきた(?)のか、これまでの自分とは違う色遣いが自然にでき、その結果に自分で驚いています。

いつもは伝統的な色を主に使いますが、今日は色数を増やしました。

本日の豆パレット
パレットに載せたのは次の絵具です(いつものように、パレットの右から左に載せた順)。
・シルバーホワイト
・パーマネントイエローライト
・イエローオーカー
・ローシェンナ
・ブライトレッド
・オレンジオーカー
・カーマイン
・バーントシェンナ
・ローアンバー
・バーントアンバー
・アイボリーブラック
・コバルトブルー

また、加筆のはじめは、暗い部分から始めますが、今日は、気になったところから色を作り、載せ始めました。

使った筆も、豚毛の平筆2本だけで、サイズは4号と8号です。

溶剤はあまり使わないため、明るい部分も暗い部分も、筆についた絵具を新聞紙などでこすり落とし、同じ筆で描きました。

途中から、自分の眼で見える色より派手目の色を載せることを始めました。これがなかなかいい感じで、気分がハイになっていきました。ミリアム・ストックリーのファースト・ソロ・アルバム”Miriam” (1999年)を始終流していました。

それ以上手を加えると、今の状態が崩れるように感じ、1時間程度で作業を終えることにしました。

本棚にある絵の作品集を1冊取り出しました。1988年にNHKが放送した『エルミタージュ美術館』の番組をまとめた本で、その3巻目の『近代絵画の世界』です。

『エルミタージュ美術館(3)近代絵画の世界』表紙

その中に、ポール・セザンヌの『鳥打帽をかぶった自画像』を見つけました。

ポール・セザンヌ『鳥打帽をかぶった自画像』(1989年に日本放送出版協会発行の『エルミタージュ(3)近代絵画の世界』より)

伝統的な描き方とは異なり、その新しさから“近代絵画の父”などといわれる画家です。

この自画像にしましても、セザンヌの前の時代の作風を見慣れた人たちからは、評価が低かったかもしれません。

しかし、今この自画像を見ますと、私には魅力的に見えます。陰の部分に緑っぽい絵具をつけています。全体的に未完成の雰囲気が漂いますが、セザンヌはこれ以上絵具を載せて、ここに現れた雰囲気を壊すことを避けた(?)のでしょう。

絵というのは、どこで終えるかは自分次第ですが、これが難しいです。ある程度までは上手くいったと思っていたものが、もう少しもう少しで手を加えているうちに魅力が雲散霧消することがあります。

その見極め方を、セザンヌのこの自画像から学びたい気分です。

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