大谷選手へ贈る「雄弁は銀」

英語に”Speech is silver, silence is golden”があります。翻訳すると「雄弁は銀、沈黙は金」です。時と場合に応じては、沈黙が雄弁に勝るということになります。

今、騒動の渦中にいるロサンゼルス・ドジャース大谷翔平選手(1994~)がこれを実践していますが、本件の場合は、それが今のところ金とはなっていません。

私は人間の心理に詳しいわけでも何でもありませんが、次のように考えます。

学校のクラスで、誰かの所持品が紛失する「事件」が起きたとします。クラスの中の誰かが、紛失した所持品を不正に入手したことになります。

けれど、不正に入手した人が名乗り出ず、所持品が持ち主に戻りません。

「事件」が解決しない中、クラスのひとりが「犯人」だという噂が流れます。

もしも、「犯人」だと噂されたのがあなたで、あなたが不正行為をしていない場合、どのような行為に出るか想像してみてください。

あなたは「雄弁は銀、沈黙は金」のどちらを選ぶでしょう。他の人はわかりませんが、私は断然、銀であっても雄弁を選びます。不正行為を働いていないのですから、どこまでも自分の「無罪」を主張します。

自分の主張が通らず、クラスで仲間外れされることが起きるかもしれません。それでも私はどこまでも自分の「無罪」を雄弁に語ります。

これが多くの人間に現れる心理ではないでしょうか?

大谷選手の場合は、沈黙を守るため、憶測だけが広がっています。今のたとえ話でいえば、大谷選手を疑う噂が広がりつつある状態です。

大谷選手が「潔白」であるのなら、そのような立場に置かれた人が採るであろう「雄弁は銀」を選ぶでしょう。

自分は自分の通訳を務めてくれた水原一平氏(1984~)が違法賭博をしていることはまったく知らなかった。だから、彼がその賭博で多額の借金をしていることも知らない。当然のことながら、彼の借金返済のために、自分の銀行口座から賭博の胴元へ送金などするわけがない、と。

自分が「無実」であれば、誰かに促されなくても、自分から取材陣を集め、「雄弁」にそう語るでしょう。

大谷選手が本件で持たれた疑いをこのように「雄弁」に話し、疑問点を記者たちから質問されても、滞りなく答えることをすれば、大谷選手にかけられている「疑い」は晴れます。

ところが、大谷選手は自ら進んで本件について語ることを避けています。

また、人間の心理を持ち出せば、そのような対応する人の多くは、何らかの「弱み」を持つものです。

本件では、大谷選手の元通訳だった水原氏が、違法賭博をして、多額の借金を作ったとされています。先物取引を使ったため、返済額が膨らみ、二進(にっち)も三進(さっち)も行かなくなった水原氏が、大谷選手に事情を打ち明け、大谷選手によって返済してもらったとしています。

その後、大谷選手が本件に関ることに気づいたおそらくは大谷選手の代理人弁護士の指示で(?)、水原氏が自分の発言を自分で否定しています。

大谷選手は水原氏の違法賭博のことはまったく感知していない。自分が勝手にやったことで、大谷選手にも借金の話はしていない。それでも、借金を返済しないわけにはいかず、悪いと知りつつ、大谷選手の銀行口座から、8、9回にわけ、胴元へ送金した。

このように「弁明」するよう、大谷選手の代理人弁護士か誰かに助言されたのかもしれません。とすれば、この助言は将棋でいう「悪手」といわざるを得ません。

「弁明」の不自然さが素人の眼にも明らかだからです。

悪人が誰かの銀行口座に不正侵入し、盗み取ろうとする場合、一回の「チャンス」で犯行を終わらせるでしょう。そして仮に、一回の送金額が設定されている場合は、不正送金は一回だけでやめ、あとの「不正送金」は諦めるのではありませんか?

それが悪人の「心理」というものです。

水谷氏の「弁明」が本当だとは私は思いませんが、本当だったとしても、不自然な点がいくつも指摘できます。

まず、どうやって水谷氏が大谷選手の銀行口座に「不正侵入」できたのかです。そのような「テクニック」を大谷選手の通訳をする傍ら、「学習」でもしていたのでしょうか?

仮に「不正侵入」できたとしましょう。しかしそれだけでは、単に大谷選手の銀行口座に侵入できただけのことです。問題は、どのようにして、大谷選手に気づかれることなく、8回も9回も、自分の送金先へ送金できたのかということです。

本サイトを運営するため、私はレンタルサーバを利用しています。その利用料金が定期的に、私のネット銀行の口座から自動で引き落とされます。

銀行からその料金分のお金が引き落とされると、必ず私のメールアドレスに銀行から連絡のメールが届きます。

大谷選手の場合は、一回につき50万ドル(約7500万円)も自分の銀行口座から引き出されているわけですから、必ず銀行から連絡が入ったでしょう。

だから、大谷選手がそのことに気がつかないことは考えられません。しかも、本件ではそれが8回から9回あったとされています。これだけの回数を見逃すことはあり得ません。

水原氏がはじめに述べたように、大谷氏が水谷氏の違法賭博の借金を肩代わりして返済した場合であっても、それを8回から9回にわけて送金したというのであれば疑問を持たれます。

お金がない場合は複数回に分けて返済することも考えられますが、大谷選手であれば、一回で肩代わりの返済ができたはずだからです。

面倒なことは、なるべく一回で済まそうというのが人間の深層心理です。

水原氏が本件について二度メディアに事情を述べていますが、どちらを「採用」しても、疑問点が残ります。

ここはやはり、本件への関わりを疑われている大谷選手が、自分の口で「真相」を明確に述べるべきです。

人は多かれ少なかれ、間違いを犯しやすいものです。肝心なことは、間違いを犯したあと、どのように対応するかです。

自分が何か不正をしたのであれば、隠すことなく、自分の不正を認めることです。その上で、その不正が罪に問われるようなことであれば、刑に服することです。

潔い態度を採れば、人の見方も変わります。それとは逆に、いつまでも「逃げて」いると、ますます、憶測だけが大きくなってしまいます。

疑われたまま一生を送るのは心身に良い影響を与えません。まして、大谷選手は身体の好不調が覿面(てきめん)に現れるスポーツ選手です。

はじめのたとえ話で書いたように、疑われているようなことが大谷選手にないのであれば、ここまで「沈黙は金」をすることはないでしょう。

ということは、雄弁に語れない「何か」が大谷選手にあると見なさなければなりません。

大谷選手には最善の決断を願っておきます。

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