極めて順調に見える人生においても、「好事魔多し」を思わせる出来事です。
今シーズンからロサンゼルス・ドジャースに移籍した大谷翔平選手(1994~)の通訳を務め、公私にわたって大谷選手をサポートしていた水原一平氏(1984~)がドジャースから解雇されたとの報道は、韓国で行われたドジャースのオープン戦の期間中です。
私は大リーグには関心がなく、大谷選手の試合も見たことはありません。ですから、通訳の水原氏のことはたまに聞く程度で、ほとんど知りませんでした。
そんなわけで、水原氏が解雇されたとの報道に接しても、大きなショックはなく、どうして解雇されたかも、当初は特別関心を持ちませんでした。
遅ればせながら知ったところでは、水原氏が違法賭博にのめり込み、多額の借金を作ってしまい、それを大谷選手に代わって払ってもらい、それが違法行為にあたるため、解雇されたというようなことです。
水原氏は、問題が発覚した今月19日、米国のスポーツ専門局ESPNから取材され、その時点では次のように説明しています。
水原氏が個人でした賭博で借金を作ってしまい、その返済に困ったことで、大谷選手に相談した。大谷選手は賭博行為を快く思っていなかったが、今後二度と同じ過ちをしないことを条件に、大谷選手自身の銀行口座から返済のための送金を大谷選手にしてもらった。 |
ところが翌日、水原氏は前日、取材で述べた自分の発言を次のように自分で否定します。
大谷選手はギャンブルや借金について何も知らない。ブックメーカーに対して送金もしていない。 |
これに加えて、大谷選手の代理人弁護士も次のように述べ始めました。
水原氏は、大谷の了承を得ずに大谷選手の資金を使い込んだ。大谷選手は、大規模な窃盗被害を受けた被害者だ。 |
弁護士は次のように認識し、本件を捜査当局に告発し、それを受けて、大谷選手が所属するドジャースが水原氏を解雇したという流れになります。
これを聴いて不思議に思うのは、水原氏が大谷選手の銀行口座からどうして送金ができたのかということです。公私にわたってサポートしてもらっているとはいえ、大谷選手が水原氏に自分の銀行口座を利用することを許すことは考えられません。
水原氏や弁護士のいうことが真実だとすれば、水原氏が何らかの方法で大谷選手の銀行口座に「侵入」できたことになりますが、そんなことはあり得るでしょうか?
本日の朝日新聞に、本件の続報のような記事があります。
それによると、米国のスポーツ専門局ESPNは、大谷選手の銀行口座から違法賭博の胴元に、少なくとも450万ドル(約6億9千万円)が送金されたことを巡る取材の中で、大谷選手名義で昨秋に50万ドル(約7500万円)ずつ2回送金されていたことを示す記録を確認したということです。
ESPNによると、水原氏が19日の取材時には、大谷選手が水原氏のPCにログインし、水原氏の指示で、数カ月に渡って送金したと主張したとのことです。
本件は今月になって報道が始まりましたが、問題の「送金」は昨秋に行われていたであろうことがわかってきました。
水谷氏のはじめの説明では、大谷選手は、水原氏の賭博行為を快く思ってはいないものの、今後は同じ過ちをしないという条件で、嫌々ながら送金に応じたと話していたわけですよね?
本日の朝日にある記事では、ESPNの取材により、送金が数カ月に渡って行われたとあります。それが真実であれば、大谷選手が送金に折れた話と合わなくなるように感じます。
本件から離れますが、水原氏について書かれたネットの事典ウィキペディアを確認すると、水原氏が大谷選手の言葉をサポートするだけでなく、あらゆることで手を貸していたのであろうことが想像できます。
水原氏について書かれたウィキペディアに次のような記述があります。
MLBへ所属した日本人選手の中にはクラブハウス(選手たちの控え室)で孤立してしまう者もいたことを耳にしており、大谷を孤立させないように注力した。エンゼルスの選手たちが、あるスマートフォンゲームで遊んでいることに着目し、大谷がそれをダウンロードして仲間に加わった。その3年後の2021年の取材時点でも、水原たちは同ゲームを楽しんでいた[12]。
水原氏は、日本人選手がチーム内で孤立しがちなことを知っており、大谷選手がそうならないよう、スマートフォンゲームをダウンロードすることまで手伝っています。
これから書くことは、まったく証拠も根拠もありません。私の単なる「妄想」です。それを断ったうえで、私なりの本件における「推理」のようなものを書きます。
本件では、大谷選手の銀行口座を使って、大谷選手の通訳をしていた水原氏が、勝手に、自分の借金を返済するため、数カ月に割って、計450万ドルの金を窃盗したとされています。
大谷選手はMLBを代表する選手で、非常に高い年俸で球団と契約を交わしています。大谷選手の銀行口座には、多額の資産があるでしょう。
それだから、450万ドルが「被害」にあってもどうってことないのでは、といった声も聴きますが、本当にそうだろうかと私は考えます。
世界で最も成功した投資家に米国のウォーレン・バフェット氏(1930~)がいます。彼の子孫が何代かけても使い切れないほどの巨額な資産を得ています。
そんなバフェット氏が、自分の資産管理にいい加減という話は聴きません。それどころか、資産が大きくなるほど、管理には慎重になっています。
バフェット氏が暮らす家は、世界的に成功した資産家の家には見えません。とても質素です。この一事をもってしても、大谷選手が自分の銀行口座の運営に無頓着だったとの考えには結びつかないように考えます。
どんなにお金を持っていても、いや、資産があるからこそ、自分の銀行口座から、数カ月に渡ってお金が自分の知らぬ間に送金されていたことに、気がつかないわけがありません。
大谷選手は、自分の代理人弁護士の助けを借りなければ自分の金を「窃盗」されたことを当局に告訴することもできないほど「愚鈍」なのでしょうか。
水原氏が捜査当局の調べを受ければ、どのようにして、借金が約450万ドルにまで膨らんだのかを問われるでしょう。また、大谷選手の銀行口座に水原氏が複数回に割って本当に「侵入」したとすれば、その「手口」についても訊かれるはずです。
それらに水原氏が明確に答えることができなければ、「別の可能性」を探ることになります。
日本のほとんどの国民は、大谷選手の人間性の良さを無条件に信じています。しかし、どんな人間にも「裏の顔」があります。大谷選手にそれはないのか、ということです。
これは私の単なる「妄想」ですが、水原氏が大谷選手がチームから孤立しないよう、チームで流行っていたスマホゲームのアプリをダウンロードすることまで手伝いました。
その水原氏が、誰かから、賭博を勧められたとしましょう。言葉巧みに話す相手を信じ、水原氏がそれを大谷選手に話します。うまくいけば、少ない資金を大きく膨らませることができるかもしれない、と。
水原氏には、その賭博のための資金が潤沢にはありません。そこで、わからないところは自分がやるからといって、実際には、はじめから、大谷選手の資金でそれを始めた、というようなことは考えられないでしょうか?
大谷選手は野球一筋の人生を送ってきたため、物事に無警戒な面があったでしょう。自分をサポートしてくれる水原氏の誘いに乗り、違法であることも知らず、自分で、自分の銀行口座から賭博のための資金を、水原氏の指示で送金することをしたことも考えられなくはありません。
この「推理」は、根拠も証拠もない私の「妄想」です。
本件の続報として本日の朝日新聞に載った記事には、米誌「ロサンゼルス・タイムズ」でコラムを書くコラムニストの次のような指摘で締めくくられています。
大谷選手の沈黙が憶測につながっている。
大谷選手には、「真実」を包み隠さず語って欲しいです。
万が一、己の「罪」を逃れるため、これまでサポートしてもらった水原氏に「罪」をすべて着せるようなことをしたら、あなたの人生の大きな禍根となります。
一皮むけた大谷選手の生きざまを見たい心境です。