時速60キロ以外の走行禁止といっているようなもの?

前回は、ミラーレス一眼カメラに搭載されている動画機能を使い、Log撮影するときのISO感度について書きました。今回もこの話題の続編のようなことを書きます。

私はソニーのミラーレス、α7 IIを使っています。

ソニーのα7 IIにFE 24-240mm F3.5-6.3

このカメラでもLogの撮影ができるということで、数年前から、興味本位で使ったりしています。

しかし、私が使うα7 IIに搭載されているS-Log2は使いこなすのに難儀させられます。最も苦労させられるのが、ISO感度の扱いです。

晴れた屋外でスチルを撮る時、ISO感度をISO1600まで上げるシチュエーションはほぼないか、まったくないです。晴れた屋外ですから、光量があります。

ですから、シャッター速度を速くするなど、ある条件がなければ、日常の対象を撮影する限り、ISO1600にする必要はなかなかないのではないでしょうか。

それが、S-Log2で動画を撮る時は、否応なしに、ISO1600始まりとなります。初めてLog撮影した時は戸惑いました。

それに加えて、動画撮影では、シャッター速度にも「縛り」があります。

動画は、静止画の集合体です。静止画として撮られた画像が連続して再生されることで動きが生まれます。このような仕組みのため、スチルと動画の静止画は異なった要素が求められます。

スチルの場合は、必要がない限り、被写体ブレが起きることを避けます。一方、動画における静止画は、モーションブラーが必要です。つまり、被写体ブレがないと、静止画のつながりが悪くなるからです。

フィルムで映像を撮影した頃は、フィルムで撮影することで、必然的にモーションブラーが得られました。

このことも本コーナーで何度となく書いていますが、フィルムのシネマカメラのシャッターは、半円形の円盤が回転する構造です。

円盤の半分が切り取られた状態で、これをシャッターアングル(シャッター開角度)といいます。通常のシャッター開角度は180度です。

商業映画は毎秒24コマ撮影します。それを、シャッター開角度180度で撮影するわけですから、必然的に、シャッター速度は毎秒24コマの半分の1/48秒にならざるを得ません。

この考え方がデジタルのシネマカメラにも採用され、基本的には、撮影フレームレートの半分の時間、シャッター速度にすれば2倍程度が理想的です。

24fpsであれば、1/48秒はないので、1/50秒、30fpsの場合は、1/60秒といった具合になります。

S-Log2で動画の撮影をするときは、ISO1600に加え、24fpsであれば、晴れた屋外で、陽射しがたっぷりある状態でも、シャッター速度を1/50秒にしなければならないと、非常に困難な状況となります。

このため、趣味で動画を撮る時、Logで撮影するのはなかなかに面倒です。

その点、BlackMagic Designのシネマカメラは、Log動画を撮るミラーレスに比べ、ユーザーに配慮した設計になっています。

私は使ったことがないので実感がありませんが、BlackMagic Designのシネマカメラに搭載されているデュアルネイティブISOは、ISO400とISO3200だそうです。

シネマカメラの使い方 #2|DaVinci Resolveでの撮影素材の処理方法

これはなかなかに考えられた設計であるように感じます。フィルムであれば、ISO400とISO3200の二通りのISO感度のフィルムが用意されているようなものです。理にかなっています。

しかも、BlackMagic Designのシネマカメラは、ISO400のベースISO感度を設定しながら、ISO100からISO1000までで撮影できるようです。

また、高感度のISO3200は、ISO1250からISO25600まで使えると聞きます。デュアルネイティブISOがちょうど良いISO感度に設定されており、使い回しが良さそうです。

その点、ソニーのS-Log3のデュアルネイティブISOは、下がISO640、上がISO12800です。これはどう見ても、使い勝手が悪いです。

二種類のフィルムを出すとき、この値にしたら、消費者から苦情が殺到するでしょう。どうして、高感度がISO12800なんだ、と。

デュアルネイティブISOに関しては、前回の更新で、ネットの動画共有サイトYouTubeで解説する動画で語られていることに、私が以前から疑問に感じていることを書きました。

彼らの多くが、デュアルネイティブISOであらゆる撮影をするよう勧めているけれど、その考え方は、もしかしたら間違った捉え方をしているのではないのか、と。

車のエンジンやモーターにも、公表されているかどうかは別にして、最も効率的に回転する速度というものがあるのではないでしょうか。

仮に、定速が60キロで高速が120キロとだとしましょう。それが推奨されるからといって、その速度だけで車を走行ことはできません。

同じ意味で、デュアルネイティブISOが設定されているからといって、その二種類のISOだけで動画を撮れというのは、無理があるのではありませんか?

ソニーのピクチャープロファイル(PP)には、それぞれのデュアルネイティブISOが設定されていることも知りました。

私がα7 IIでスチルを撮る時、PPはオフにしています。このオフの状態でもデュアルネイティブISOというものがあり、それは、ISO80とISO1600だそうです。

これは、α7 IIで唯一使えるS-Log2と同じですね。もっとも、低いベースISOのISO80は使えませんけれど。これがS-LogのデュアルネイティブISOであれば、種々の問題は発生しなかったでしょう。

ともあれ、ISO640とISO12800のISO感度だけでスチル撮影をしろというのは無理がありすぎます。

実際問題、さまざまないISO感度を自由に選んでスチルの撮影をしますが、これまで、ノイズが目立って困ったというようなことは起きていません。

Log動画でも同じことがいえるでしょう。

BlackMagic DesignのシネマカメラのISO400とISO3200ならまだわかりますが、S-Log3はISO640とISO12800でしょう? それぞれの中間のISOは使わないのですか?

今回の更新をすることで、Logの設定は、BlackMagic RAW(BRAW)とは違い、それぞれの数値が、それぞれのベースISOの始まりの数値となることを知りました。

BRAWは、ISO400の場合は、ISO100からISO1000まで、ISO3200はISO1250からISO25600までと、ベースよりも前のISO感度も使えます。

それが、Logの場合は、いきなりそのISO感度からのスタートになります。

YouTubeでLog撮影について解説する人の少なくない人が、撮影時の露出は、一段から二段ほど露出オーバーで撮ることを勧めています。そのように撮影しておけば、カレーコレクションやカラーグレーディングで暗部を持ち上げたとき、暗部にノイズが発生しにくいといったような理由で。

考えてみると、デュアルネイティブISOだけを使ったり、わざと露出オーバーで撮るのは、すべてが、ノイズ対策です。

動画の編集にBlackMagic Designの動画編集ソフトDaVinci Resolve Studioの有償版を使う人であれば、カラコレやカラグレの段階で、ノイズが気になるのであれば、ノイズ除去を使うことでノイズはほぼ気にならなくできます。

どうしてそれを使うことを優先しないのでしょう。

それをせずに、撮影の段階で無理をするのは、撮影が窮屈であったり、不自由なだけではありませんか?

私は趣味でやっているからですが、ノイズを気にしたことがありません。

私以外でも、デジタルの動画は綺麗に写りすぎるからといった理由で、よりフィルムの映像に近づけようと、フィルムの粒子を感じさせるようなエフェクトを加える人もいます。

ノイズも、綺麗すぎる映像を緩和する要素のひとつと考えれば、ノイズを目の敵(かたき)のように考える必要がないように感じますが、いかがでしょう?

BRAWで撮影した動画は、DaVinci Resolveで編集する際、あとで、ISO感度を変更できるそうです。

こんな風に考えると、ディアルネイティブISOの設定がユーザーを考えたものであることや、BRAWで撮っておけば、あとでISO感度が変更できるなど、自由度の幅が、BRAWにあることがわかります。

こんなことを書いていたら、BlackMagic Designのシネマカメラを使って、BRAW撮影がしたくなりました。

私の場合は趣味で撮るだけですから、そこまでして動画を撮る必然性はないわけですけれど。

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