人には「助け」が必要

初めて会った人に、私は「こけし70体と一緒に暮らしています」と自己紹介したら、相手はどんな反応をするでしょうか?

理由を説明したら、はじめは驚いた相手も納得するでしょう。

朝日新聞・土曜版に「私の The Best!」というコーナーがあります。有名人が大切に思っている物や、大好きな物などを毎週一人ずつ紹介しています。

昨日(20日)は、お笑い芸人の川村エミコさん(1979~)の「The Best!」の紹介でした。その書き出しが、「こけし70体と一緒に暮らしています」です。

川村さんが、その、こけしと出会ったのは、27歳になる頃だったそうです。

当時はまだ、お笑いだけで食べていくことができず、深夜に、焼き鳥屋でアルバイトをしていたそうです。

バイトに出る前か、それとも、バイトの帰りか、雑貨店で一体のこけしに惚れ込みます。高さは10センチぐらいで、周りがどんなに変化しても、我知らずといった感じに「すん」と立つ「素直」さに惚れ込み、買って、家へ連れ帰ったそうです。

以来、このこけしを持ち歩くようになり、ちょっとした空き時間に、ポケットからこけしを出し、それを立てて眺めては、「私にはこけしちゃんがついている。頑張ろう」と元気づけられたそうです。

私にも同じような感覚があります。

私の場合は、2021年クリスマスあとぐらいに亡くなった愛猫です。亡くなるまで10年以上一緒に過ごしていたため、亡くなった時は、心に穴が開いたような気分になりました。

その愛猫を思い出し、一枚、絵を描いたりしました。

私は、描いた愛猫の絵はいつも部屋に置いています。それを外へ持ち出すことはしません。

その代わり、たとえば、良く晴れた日に自転車で走っているとき、心の中で愛猫に呼びかけます。「お兄ちゃん、今日はいい天気だよ。晴れた日に自転車で走るのは気持ちがいいね」といった具合に。

結局のところ、自分で自分に話しかけているだけですが、何とはなしに、「お兄ちゃん」と「会話」している気分になり、元気をもらえるような気分になります。

それに通じる感覚を、「川村さんのこけし」の話から感じました。

なんだろう? こんなことを書いていたら、感情が高ぶって来て、涙が流れてきました。

記事の中に、次のような記述があります。

こけしちゃんはいつも変わらずにそこにいてくれる。自己肯定感が抜群です。

川村さんはご自分のことを、「心配性」で「ネガティブ」のため、緊張して、うまくいかずに落ち込むことがある、と語っています。

その一方で、こけしは、脇目も振らず、真っすぐ前を向いて立っています。揺るぎもしません。

そんなコケシを眺め、「人のことを気にせず、好きなことを好きと言って生活できたらハッピー」と思うようになった、と語っています。

この記事は次のように結ばれています。

変わらない自分でいたいです。不安定にならない。人によって態度を変えないこともそう。こけしちゃんを見ると、いつも自分でいようってすごく思います。

人間は弱いので、何かしらの「助け」が必要です。河村さんの場合は「こけし」がその「助け」となってくれているようです。

私は、愛猫のほかに、既に世を去った父や母、姉のことを、何かのときに思い出します。その「助け」を借りて、辛うじて生きている状態です。

あなたは、どんな「助け」を持っていますか?

ファイト!

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