今朝、ネットの動画共有サイトYouTubeで次の動画を見て、私は驚いてしまいました。
ご存知の方には説明するまでありませんね。ご存知ない方のためには簡単な説明をしておきます。
動画に映り、いろいろとお話をされている方は、桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)です。
各動画に添えられたプロフィールを見ますと、映像制作会社の代表取締をされている方で、映像分野では演出や脚本のほか、さまざまな仕事をされているようです。
私が桜風氏を知ったきっかけは、昨春、32bit float技術を搭載したレコーダーに興味を持ったことです。
当時、桜風氏が、ZOOMのF2-BTという小型のフィールドレコーダーを解説する動画をYouTubeに上げておられ、それを見ることで桜風氏を知りました。
以来、事あるごとに桜風氏のYouTube動画は見させてもらい、時には動画で伝えられたことついて、厳しいことも本コーナーで書いたりしました。
本ページに埋め込んだ動画では、千葉の幕張メッセで本日(15日)から始まる“Inte rBEE 2023”の会場で、桜風氏は会期最終日の17日まで、毎日いろいろなブースでセミナーをするので、見に来てねと話されています。
本動画を見て私が驚いたのは、いつからそうなったのかわかりませんが、映像がいつもよりも綺麗に見えたことです。逆のいい方をすれば、本動画以前の動画の映像が私には綺麗に見えないということになります。
本動画を見ていて、撮影に使っているカメラがいつもと違うのを知りました。使っているのは、今年の5月にキヤノンが発売した“PowerShot V10”というカメラです。
これは、キヤノンがVlogger用に満を持して発売していますが、ネットのカメラ関連を扱うVloggerの評判は芳しくなかった印象です。そのことは、本コーナーでも取り上げました。
しかし、用途を絞って使えば、本動画のように、好ましい映像が撮れることが実証された形です。
音声はカメラの内蔵マイクを使っているのでしょうか。音の専門家の桜風氏ですから、35ミリフルサイズ換算で35ミリの焦点距離のレンズから逆算して、綺麗な音声を拾えるところにカメラを固定して使っているのでしょう。
特別に美しい映像というわけではありませんが、普通に綺麗に見える映像になっています。
私がこのところ、YouTube動画を見る環境は、PCのモニタではなく、テレビ受像機(テレビ)です。あることをきっかけに、テレビで見るようになり、今はほとんどのYouTube動画をテレビで見ています。
PCのモニタに比べて大きなサイズで見るようになり、それ以前であれば許容できた各動画が持つアラが如実になった印象です。
それ以前から、桜風氏の動画をPCのモニタで見て、肌色にマゼンタの色被りが強く出ていることが気になっていました。それが、テレビで見ることで、決定的に感じるようになりました。
テレビでは、NHK BSプレミアムで放送される過去の映画や海外の昔のドラマなどを見ますが、ヘンな色に見えることはありません。ということで、標準的な色再現性を持つことがわかります。
そのテレビで桜風氏のYouTube動画を見ると、今も書いたように、肌の部分の発色に、マゼンタ寄りの色が強くのっているのを感じます。たまに、カメラに近づけた手が写りますが、手もマゼンタや時には紫色に近い色に見えたりします。
桜風氏が前回上げた動画を下に埋め込みます。それを見ることで、私がいっていることがわかってもらえると思います。できれば、テレビで見てもらうと、よりよくわかってもらえます。
桜風氏は、元々は富士フイルムのカメラの発色がお気に入りです。それに対し、ソニーの色は気に入らないことを、過去のYouTube動画で何度となく話されています。
私個人はソニーの発色が好きで、その色をそのまま映像に活かしたいため、カメラにセットされた発色設定を少しも変更せず、スチルと動画の撮影をしています。
撮ったスチルと動画は、編集の段階でもほとんど色味を変更しないようにしています。
桜風氏は過去の動画で、ソニーのカメラで人の肌を撮ると、富士フイルムのカメラで撮ったような綺麗な発色にならないと話されました。たとえれば、肌色がタクアンのような色になる、というようなことでした。
それを解消しようと、桜風氏はご自分で色調整をし、望むような色合いにすることができた、と過去動画で話されています。
このところ、桜風氏が室内で動画を撮るのに使われているのはソニーの“FX30”です。このカメラにソニー純正のマイクをつけ、いつもの動画を撮影していることになります。
問題は、そのカメラの色記録に、桜風氏の手が加わっていることです。そのことで、桜風氏の肌色にマゼンタかぶりが強烈に起きてしまっているのです。
ここ数回、本コーナーで色の表現の基となる「原色」について書きました。デジタル映像に関係するのは「加法混合」です。
改めてそれについて解説されたネットの事典ウィキペディアを見ることで、それぞれの色がどのように作られるのかわかります。
私は自分でも絵を描くので、「色の三原色」は理解しているつもりです。専門的にはそれを「減法混合」といいます。デジタル機器に関る加法混合は「光の三原色」ともいいますが、それは、色の三原色とは似ているようでかなり違います。
加法混合を説明する文章に、図解が添えられています。それを見ると、マゼンタは、赤と青が交わることでできるのがわかります。
このマゼンタかぶりが桜風氏の動画に現れているということは、その二色が通常より強く出るように調整したせいではありませんか?
私は本コーナーの前回の更新で、可変NDフィルターを使うことで生じる色被りを解消する試みをしています。
黄色の色被りを軽減するのに私が採った調整は、ピクチャープロファイル(PP)の設定項目にある[色の深さ]で、ほんの少し自分なりに変更を加えたことです。
黄色の色被りを抑えるのですから、Y(イエロー)をマイナスにすれば良さそうに思います。しかし、私はそれをせず、加法混合でイエローを作るG(グリーン)とR(レッド)をほんの少しだけ弱めてみました。
具体的には、Gを-1、Rを-2にしただけです。ウィキペディアの「原色」の説明に添えられたカラートライアングルの図を見てRがGよりも強い影響を持つように感じたので、Rを-1大目にしただけです。
こんなほんのちょっとの調整でしたが、結果を確認すると、自分が考えた以上でした。可変NDフィルターをつけることで生じる黄色の色被りが見られません。
桜風氏がソニーのカメラが持つ色表現に不満を持っていた頃、どのようにそれを解消したか、具体的に動画で説明していました。それを見ると、イエローとは逆の方向に、色の分析の中心点をずらしていたように記憶します。
しかしそれは、結果的に、RやB(ブルー)を強めてしまったことになりはしませんか? すでに書いたように、マゼンタはRとBの混合で生まれます。
その結果、桜風氏がソニーのFX30で撮る動画では、マゼンタ寄りの色被りが強く出てしまうことになっているのでしょう。
それが、本日公開されたばかりの動画は、キヤノンのV10というカメラを使ったため、綺麗な色表現に私は感じたというわけです。おそらく、V10の色表現には桜風氏は手を加えていないのでしょう。
今後もFX30をVlog撮影のメインに使われるのであれば、ご自分で施された設定を解除し、カメラ製造時の設定で撮れば、色表現では問題の映像が撮れるでしょう。