松本清張(1909~ 1992)の『渡された場面』を読み終えたので書いておきます。
本作は、『週刊新潮』に1976年1月1日号から7月15日号まで連載されています。年号でいえば昭和51年の作品になります。当時を知る人であれば、その頃の社会情勢を重ねて読むといいでしょう。
1976年といえば、長谷川和彦(1946~)の初監督作品『青春の殺人者』と『タクシードライバー』が劇場公開されています。ある意味、個人的には思い出深い年です。
舞台は、佐賀県の唐津に近い坊城(ぼうじょう)という架空の町です。今は唐津の一部となる呼子町がモデルとされたようです。
玄界灘に面した町で、漁業が盛んです。この町にある千鳥旅館にひとりの泊り客が宿をとります。男は小寺康司といい、東京に住む中堅の小説家です。