本コーナーでこれを取り上げるのは何度目になりましょうか。レコーダーに録音した自分の声についての話です。
前回それについて取り上げたことで、この話はもう終わったと自分でも考えていました。しかし、自分で作成した自分の声を聴くと、低音が強く出過ぎているように感じます。
海外の男性が、コンデンサーマイクについて話す動画を、ネットの動画共有サイトのYouTubeで見ました。たとえば、次のような動画です。
おそらくは米国人男性で、体格も私よりも大きい人でしょう。ですから、この男性の方が私よりも低音の声になっても良さそうですが、動画の音声を聴くと、低音はそれほど強調されず、聞き取りやすい声に聴こえます。
その理由は、マイクから30センチ程度離れたところでしゃべっているからだと思います。
どんな種類のマイクであっても、マイクに近づいてしゃべるほど低音が強調されて録音されます。
前回、自分の声を録音した時は、ZOOMのM3 MicTrakに自分の声を録音しています。M3は、M/Sマイクがついたレコーダーです。レコーダーは、32bit floatで音を録音します。
このレコーダーに付属するショックマウントをつけ、さらに、昔に買って持っていた8ミリビデオ用小型ランプの取り付け部品の一部を外し、レコーダーとショックマウントにそれをつけ、グリップのようにして使っています。
そのグリップを握り、口から10センチ程度まで近づけて、本コーナーの一部を読み上げました。
このときは、録った声の音声ファイルには、Loudness Controlで音量を上げることと、音声編集ソフトのiZotopeのRX 10 Standardの機能のひとつ、Mouth De-clickで、唇や舌が動くことで発するノイズを除去することだけをしています。
その時に作って、本コーナーで紹介したのが次の音声ファイルです。
自分のPCのスピーカーでこの音声ファイルを聴く分には問題なさそうに感じました。しかし、そのあと、タブレットPCの小さなスピーカーで試聴すると、声が小さく聴こえました。ボリュームを一番大きくしてちょうど良く聴こえる声の大きさでした。
また、低音が出過ぎているのか、少し聞きづらく感じました。
そこで、音量を大きくするため、Loudness Controlのプリセットを、Audiobook Deliveryから、Podcast Deliveryに換えてみました。それよりも大きな音にする場合は、Video stream Deliveryがあります。
Podcast Deliveryの設定は次のようになっています。
- True peak[dB]:-1.0
- Integrated[LKFS]:-16.0
- Tolerance[LU]:0.5
Audiobook Deliveryでは設定が次のとおりです。
- True peak[dB]:-3.0
- Integrated[LKFS]:-20.0
- Tolerance[LU]:2.0
前回使った声の音声ファイルに、Podcast DeliveryでLoudness Controlしたものが下に埋め込んだ音声ファイルです。
音量を上げ、タブレットPCのスピーカーでも聴き取りやすくなったように感じます。しかし、低音が出過ぎているのは同じです。
そこで、ある特殊なエフェクトを適用してみました。これはイコライザー(EQ)を使ったエフェクトであると思います。”Vinyl”というプラグインで、昔のレコードの音の雰囲気を出す効果を狙ったものでしょう。
次の六つの年代がプリセットされています。年代が遡るほど、古い時代を感じさせるチープな音色になります。
1930 | 1950 | 1960 | 1970 | 1980 | 2000 |
このVinylを使い、1960年代風にしたのが下に埋め込んだ音声ファイルです。昔の場面を動画で再現するようなとき、このプラグインを使うと、昔風に音が加工できそうです。
ここまでいろいろ試し、結局のところ、声の低音を弱めるためには、録ったあとに修正するのではなく、録音するときに、口とマイクの距離をもっと離せばいいという、当然の考えに落ち着きました。
今回は、前回更新した文章を録音してみました。録音機器は前回と同じM3を使っています。変更したのは、口とマイクの距離を20センチ程度にしたことです。
録音した音声ファイルは、Loudness Controlを、上に書いたように、Podcast Deliveryにし、RX10のRepair Assistantを適用しています。
マイクを10センチから20センチ程度に離したことで、強過ぎる低音の問題が解決されたように感じます。まだ確かめていませんが、この音声であれば、タブレットPCの小さなスピーカーで聴いても、それほど聴きづらくはないだろうと思います。
これまで欠かさず見てきた『名探偵ポワロ』の放送が、この水曜日(18日)で終了しました。シリーズ最終回となる70話は、『カーテン ポワロ最後の事件』(英国での初回放送:2013年11月13日|日本での初回放送:2014年10月6日)です。
本ドラマでも、何人もの人間が、大きな部屋に集まり、会話するシーンがあります。
そのシーンを日本語に吹き替えた音声で聴きました。注意して聴かなくても、その場に合った声に加工されていることがわかります。
部屋の中で話す声に聴こえるよう、声が周りの壁などで反響した声になっています。もしも、反響がまったくなかったら、その場で話す声には聴こえないでしょう。
そんなことも含め、プロの制作現場では、それが吹き替えの音声を収録する現場でも、その場に合わせた音に加工していることを教えてくれます。
私も自分の声にリバーブをかけてみたいのですが、私が使う音声編集ソフトのRX 10にはその機能はありませんね。リバーブを取り除く機能はついていますが。
自分の声にリバーブするには、そのためのプラグインを別途、入れる必要があるのでしょうか。
ともあれ、声の表現についても、興味を持つときりがありません。
一度完成させた音声ファイルに、EQとプラグインのShadow Hills Mastaring Compresserを追加させてみました。