私の興味の対象は、そのときどきで変わり、ある対象に興味を持つと、しばらくそれに集中する傾向があることを本コーナーで書いています。
私が今興味を持っているのは音周辺に関することです。
きっかけとなったのは、今月の13日、以前から欲しかったマイク付きレコーダーをようやく手に入れることができたことです。
ZOOMの”M3 MicTrak”です。
M3 MicTrakには画期的な機能がいくつも搭載されています。それらについては、購入した時、本コーナーで書きましたので、それを参照してください。
繰り返して書いておけば、大きく分けて、次のふたつの機能になります。
- M/S方式で収録でき、しかも、録った音のステレオ幅を調節できる
- 32bit floatで記録できる
M3についているマイクは、中央部の音を拾うショットガンタイプのMidマイクと、左右の音を拾うSideマイクが合体した構造になっています。
録音時は、モノラルのほか、90度と120度のステレオ幅を選んでセットでき、その設定で録音した音は、通常のステレオ・ファイルとして保存されます。
M3 MicTrakで特徴的なのは、それとは別に、録ったあとに劣化なしに調整できるM/S RAWファイルが同時に作成されることです。
このRAWファイルを読み込むための専用の編集ソフトである”M3 Edit & Play”を使うことで、録音時に設定したよりも広い、150度のステレオ幅に変更することができます。
もうひとつの大きな特徴が、32bit floatによる録音です。私は同じZOOMのフィールドレコーダーで、32bit float技術が搭載された”F2”を一年以上使っていますので、根本的な原理を完全に理解しているとはいえませんが、それなりに使いこなすことができています。
32bit floatを大ざっぱにわかりやすくいえば、録音時に録音レベルを一切気にせずに録音でき、録音した音のレベルは、あとで自分が望むように自由に調節できる技術です。
たとえば、小さな音に録音されていても、audio editorでゲインを上げることで、すぐに使える音素材になります。
ただ、この技術を扱いなれていない人は、とっつきにくく感じることもある(?)かもしれません。
私もいろいろ試してみて、M3 MicTrakで録音した音は、ステレオ幅を調節必要があるときはM3 Edit & Playを使いますが、ゲインの調節などは、iZotopeのRX 10 Standardを使います。
このaudio editorにはさまざまな機能が搭載されていますが、ゲインの調節などを簡単に、しかも的確に行える”Loudness Control”が搭載されています。
これには、あらかじめ23のプリセットが用意されており、その中から自分に合ったものをを選び、そのセッティングでレンダリングするだけで、ほぼ望むようなゲイン調整が行えてしまいます。
M3 MicTrakを入手した直後、本コーナーで、私が庭で収録したウグイスの鳴き声を紹介しました。このときは、Loudness Controlはまだ使わず、M3 Edit & Playで、メーターを目で見ながらゲインの調節をしました。
それを今回、RX 10 StandardのLoudness Controlで音声レベルの調節をし直してみました。なお、私が選んだプリセットは、”Podcast Delibery”です。
なお、このプリセットは次のような設定になっています。
- True peak[dB]: -1.0
- Integrated[LKFS]: -16.0
- Tolerance[LU]: 0.5
本プリセットには、世界の国や地域の放送業界で使用するラウドネスの基準が多くあります。ちなみに、日本として[ARIB TR-B32 A/85]が割り当てられており、設定は次のようになっています。
- True peak[dB]: -1.0
- Integrated[LKFS]: -24
- Tolerance[LU]: 2
これで音声レベルを整えたウグイスの声を下に載せておきます。できたら、ヘッドホンでお聴きになってください。その方が、音の広がりがわかってもらえると思います。
ステレオ幅は、録音時が120度で、編集時に150度にしています。
Loudness Controlを使わない録音ファイルも下に載せておきますので、違いを聴き分けてみてください。
RX 10 StandardのLoudness Controlを使うことで、はじめて、32bit floatが本来持つダイナミックレンジの広さが表現できるといえましょうか。
音の録音と、録ったあとの編集にこだわると、これはこれで奥が広く、興味が尽きません。
今度は、蝉が鳴き出したらそれを収録し、ステレオ幅150度で聴いてもらおうと考えています。