Log動画撮影の工夫 NDフィルターと露出オーバー

前々回の本コーナーでは、「32bit float(単精度浮動小数点数)」による録音への興味が再燃したことを書きました。

私の場合、あることに興味を持つと、しばらくはそれを続ける傾向があります。

というわけで、今朝も庭からウグイスの鳴き声がしたため、ZOOMのフィールドレコーダーF2audio-technicaの超小型マイク“AT9912”をつけて、32bit floatで録音することをしました。

ZOOM F2にaudio-technicaのマイクAT9112

32bit floatで録音したオーディオファイルは、録ったままでは音が小さすぎるため、ほとんど何も聴こえません。そのため、私はiZotopeのRX 9 Standardを使っていますが、何らかのオーディオ編集ソフトで、ゲインを適度に上げるなどの編集が必要になります。

この編集作業も今は楽しみのひとつとなっています。

この、音への興味と並行して、一度は遠ざかったソニーのS-Log2ガンマでの撮影と色編集への興味も再燃しています。

私が使うミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)のα7 IIは、ピクチャープロファイル(PP)が7種類あります。その中から手っ取り早く動画を撮るのであれば、PP1のMovieガンマを使えばいいです。

しかし、その場合も、最低ISO感度はISO200始まりになってしまいます。ですから、晴れた日の日中に、明るい被写体を適正露出で撮ろうとすれば、レンズから入る光量を落とすためのNDフィルターがどうしても必要になります。

本日の豆追記
日中ではなく、早朝の時間であっても、レンズを空に向けると、NDフィルターなしではS-Log2ガンマでの撮影が難しくなります。ISO感度をISO1600、シャッター速度を1/50に設定すると、F値をf/22まで最高に絞っても、露出を1と2/3段開けた露出オーバーでの撮影であっても、これ以上の露出オーバーの状態になってしまいます。

昨日の午後に、Movieガンマを使い、可変式のNDフィルターをつけて、動画のテスト撮影をしました。

動画の撮影の場合、シャッター速度の設定が重要であることは本コーナーで何度も書いています。

Movieガンマの最低ISO感度がISO200であっても、シャッター速度を遅くしなければならない動画撮影においては、F値を大きくする(絞りを絞る)だけでは強すぎる光量を抑えきれなくなります。

私はフィルムのシネマカメラと同じ24フレームレートで撮影するのが好きです。

このことについても本コーナーで何度か書いていますが、スチルの撮影を基本とするミラーレスでは、本格的なシネマカメラには搭載されている「シャッターアングル(シャッター開角度)」の調節ができないようになっています。

シャッターアングルを変更できるようになっていれば、動画の撮影はいたってシンプルなものになります。通常は、シャッター開角度を180度にしておくだけで、あとはF値を設定するだけで、問題のない動画が撮影できるからです。

シャッター開角度を調節できないミラーレスは、その代用として、フレームレートの約2倍の速さになるシャッター速度を設定する必要があります。

24fpsで撮影するのであれば、2倍は1/48秒ですが、このシャッター速度はないため、代わりとして、1/50秒か1/60秒で撮影します。

Movieガンマで撮影する場合の最低ISO感度はISO200ですが、私のα7 IIでLog撮影しようとすると、最低ISO感度はISO1600になってしまいます。

そのISO感度で、シャッター速度を1/50秒にして晴れた日の日中に、光が当たった被写体を撮影するのは非常に無理があります。そのためには、どうしても、レンズから入る光量を下げる強めの効果を持つNDフィルターが必要になるのです。

その煩わしさもあって、試みては、結局は面倒になって遠ざかる、といったことを繰り返しています。

私は昔、8ミリ映画のカメラで映像を撮ることを楽しみましたが、フォーカスを合わせてシャッターボタンを押すだけで、何の苦労もなく映像を撮影できました。

その手軽さが、ミラーレスを使ったLog撮影にはありません。

NDフィルターを使う撮影にも問題があります。メーカーは、フィルターを使っても色に悪影響が出にくいことを謳っていますが、強度を上げれば上げるほど、どうしても影響は出てしまいます。

試しに、昨日の午後、色編集の必要がないMovieガンマで、NDフィルターをつけて撮ってみました。その撮影をしながら、「これは駄目だ」と感じました。

NDフィルターをつけたレンズを晴れた空の方向へ向け、電子ビューファインダー(EVF)を覗くと、青く見えなければならない空が、グレーに見えるからです。

晴れた日中に可変式NDフィルターで撮影した動画

これが、NDフィルターによる変色です。

一晩寝て、あることを思いつきました。それは、ホワイトバランスを、いつも使っているオートホワイトバランス(AWB)ではなく、マニュアルにして、屋外で動画を撮る時は、【太陽光】に設定して撮ってみたらどうか、という考えです。

私は早朝にそれを早速試してみましたが、関東南部の当地は、晴れ間はあるものの、快晴というわけではなく、確実な「検証」は先送りの状態にあります。

すぐ上で書いているように、私はそれ以前、AWBでのみ撮影していました。もしかしたらそのことで、NDフィルターによる変色が起こったのか、と考えたりしています。

あいにくなことに、今日は全国的に天気が下り坂です。当地は晴れていますが、午後は雲に覆われてしまうかもしれません。しかし、晴れた日にテストをすればいいだけですから、慌てる必要はありません。

色かぶりであれば、動画編集ソフトで修正することは簡単といえば簡単です。私が使うDaVinci Resolve Studioであれば、カラーページにある色温度をブルー方向へ確認しながら動かすだけで済みます。

可変式NDフィルターによる青空の色かぶりを修正

今朝のテスト撮影ではもうひとつ収穫がありました。

このことは、Log撮影を数多くする人が前から指摘されていたことです。それは、適正露出よりオーバー目の露出で撮影する必要性です。

ソニー以外のLogガンマでも同じなのかどうかわかりませんが、ソニーのS-Logガンマの場合は、訂正露出よりアンダーで撮影してしまうと、ノイズが目立つ結果になるとされています。

それを防ぐため、露出メーターに気をつけながら、露出オーバーにして撮影するといい、という話です。

【SONYカメラ設定】Log撮影は「標準露出」と『露出オーバー』どっち?検証でハッキリさせる。

このことを私も知ってはいましたが、これまでは、露出メーターがプラスマイナスゼロ辺りに来るようにして撮影していました。

今朝は、露出オーバーにした方が結果がいいという話を思い出し、念のためにといった具合に、1と2/3段露出オーバーにして撮影してみました。

それを動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioで読み込み、カラーページで色編集をすると、なるほど、明らかに、露出オーバー気味に撮影した方が、動画が綺麗に見えることを今になってやっと気がつくことができました。

撮影時に1と2/3段露出オーバーにしてもいい(したほうがいい)ということは、その分だけ、撮影条件が楽になります。NDフィルターも、1と2/3段分は開けることができますしね。

ただ、露出オーバーで撮影した場合の注意点が、α7 IIの説明書に次のように書かれています。

明るく撮影した場合にはその分だけダイナミックレンジは狭くなります。

ソニー α7 II説明書 180ページ

私の動画撮影は、自己満足でしかありませんが、それでも、S-Log2ガンマをコントロールして動画の撮影をしてみたいです。

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