私は昔から映像が好きです。しかし、作品を作るために撮影したことはないです。
撮影する被写体は昔から変わらず、身の周りにあるものばかりです。これでは、なかなか、「作品」にはならないです。
その一方で、映像が一般的になった今は、映像作品を作ることを仕事にする人がいます。それらの人が、動画共有サイトのYouTubeで、どのように撮り、編集したら恰好が良いシネマティックな動画にできるかを説明してくれる動画が数多くあります。
それを見ては、自分でできることをしてみたりしますが、すぐにまた、自分のスタイルに戻ってしまいます。
写真がそうですが、動画でも、自分が生まれ持つ何かが、自分では意図しなくても、動画作りにも自然に表れ、それは、一朝一夕には変えられないものなのでしょう。
動画における自分の持ち味のようなものがあるとすれば、それは何かと考えてみると、「長回し」ではないかと思います。
私は、YouTubeがない時代から、ビデオカメラで撮影した動画を、自分のサイトのために使っているサーバに上げて紹介するようなことをしていました。
作った動画はいつも同じようなもので、ビデオカメラを三脚に固定し、そのカメラが写る範囲で、絵を描いたり、自分の持ち物を紹介するような内容がほとんどです。
東京の地下鉄・木場駅から、東京都現代美術館までの道中を歩きながら撮影しただけの動画も、YouTubeにアップロードしたことがあります。
これなども、長回しの動画です。
ネットで、格好の良い動画の作り方を教えてくれる人は、ほとんどが、短いカットにするよう話しています。また、カメラを固定せず、常に動いている映像を求めています。
それを真似たりしましたが、真似は真似で、自分のものにはなりません。そこで、開き直り、自分の中から自然に出てくる感覚で撮ればいい、と考えることにしました。
短いカットの積み重ねは、その人のセンスが求められます。そのセンスが自分にはなさそうです。であれば、長いカットで見せる自分のスタイル、といえるかどうかわかりませんが、長回しの動画が自分には合っているのでは、と考えることにします。
長いカットの先駆者にアンディ・ウォーホル(1928~1987)がいることはご存知でしょうか。
ウォーホルの映像作品で最も有名な作品に『エンパイア』(1964)があります。この作品は、タイトルにあるように、米国のニューヨークにそびえる超高層ビルディングのエンパイア・ステート・ビルディングを、カメラを固定したまま、6時間36分連続で撮影した作品です。
撮影には16ミリカメラを使い、毎秒24コマで撮影しています。その作品を、映写するときは毎秒16コマに落とすため、上映時間は8時間5分になるそうです。
モノクロの無声映画で、ストーリーはありません。ただひたすら、ビルディングを撮影しただけの作品です。
ビルの外壁を照らす照明が消えると、真っ暗な画面が続くそうです。
この話に関連するかしないかわかりませんが、昨日の夕方、庭に出て動画を撮りました。対象は、いつもように、なんでもないものです。
その時間、関東南部の当地は風が吹き出し、木々が風で揺れていました。それを下から見上げるように10秒程度撮影しただけです。カメラには、SAIREN製の”VM-Q1″という外部マイクをつけています。
マイクに風があたるとボコボコとした音の雑音になりますが、撮ったあとに確認すると、マイクに毛足の長い風防をつけてあったからか、ボコボコという雑音は感じられません。
カメラで自撮りする動画を上げるYouTuberは、自分の声以外は雑音と考え、動画編集のときに、雑音を減らし、自分の声が明瞭に聴こえるようにします。
私はYouTuberではありませんので、自分をカメラで撮影することはありません。また、カメラで撮影する私が何かしゃべるわけでもなく、風で煽られた木々の音は、私にとっては雑音ではなく、必要な自然音です。
私の考えは、YouTuberとは違うものでしょう。
自分が撮った10秒程度の何でもない動画を見て、同じような動画を、ウォーホルほどではないものの、ある程度長い時間連続して撮っても面白いのでは、と考えました。
それを撮るなら、昨日の夕方のように、風が強く吹いている時が望ましいです。カメラを固定してあっても、そこに写る木々が風で揺れる動きを作ってくれます。
風で揺れる木々の音が、映像を引き立ててくれるでしょう。
ネットに上げるつもりはありません。自分だけで見て、聴いて、楽しめればそれでいいです。
そうした映像をしばらく見て、しばらく聴いていたら、家族がいた昔を懐かしく思い出したりするかもしれません。
一年前の今頃、我が家の愛猫・”お兄ちゃん”こと白足袋(しろたび)ちゃん(=^ω^=)が亡くなりました。
音は撮影した時のままで、手を入れていません。
マリア・ベターニアが動画で歌う曲は、昔(1990年代)、NHK FMのリクエスト番組「サンセットパーク」にリクエストしています。次のような歌詞が出てくるのを思い出し、紹介しました。
アンディ・ウォーホルの笑いだって、理解できなかったくせに
一度更新を終えたあと、長回しの効果を狙った作品に、アルフレッド・ヒッチコック(1899~1980)監督の『ロープ』(1948)があったのを思い出しましたので、付け加えて書いておきます。
本作品は、事件をリアルタイムに表現するため、ワンカットに見えるように作られています。