先月末の本コーナーで、RAW動画に強い関心を持っていることを書きました。
昨日、それを半分実現できました。
私が知る限り、一般の個人が動画をRAWで撮影できるカメラは、Blackmagic Designから発売されているPoket Cinema Cameraシリーズぐらいではなかろうかと思います。
そのシリーズの初代のカメラを実際に使う様子を紹介する動画を、ネットの動画共有サイトYouTubeで見つけました。
これを見て私は驚きました。撮影済みの動画を確認すると、通常の動画ファイルではなく、1ショットごとに、フォルダができていたからです。
しかも、そのフォルダの中には、RAW画像で撮影した静止画と同じRAW画像が、撮影した時間分保存されていることです。
フィルムにしろデジタルにしろ、動画が静止画の集まりであるのが原則です。毎秒24コマで撮影されたシネフィルムは、1秒間に24枚の静止画が定着されており、映写機で連続再生させることで動きが得られます。
動画の原理を頭では理解していますが、上で紹介した動画を見ますと、改めて動画の原理を思い起こさせられます。
しかも、Blackmagic DesignのPoket Cinema CameraシリーズのRAW撮影は、静止画の撮影と同じRAW画像が、ファイルに保存される仕組みであることです。
フォルダの中の1枚のRAW画像は、そのまま、静止画用の現像ソフトで現像でき、1枚のJEPEG画像に変換することもできるものです。
写真をRAW画像で撮影する人であれば、撮影後に、露出や色味を、JPEG画像とは比較にならない自由さで調整できることを知っています。
同じ理屈で、RAW画像そのもので記録する動画は、通常の動画に比べ、圧倒的な自由さで露出や色味を変更できます。
それを自分でも使ってみたいと思いました。が、そのためには、それなりの投資が必要です。Blackmagic DesignのPoket Cinema Camera 6K Proを使おうとすれば、カメラだけで税抜283,800円します。
これにビューファインダーや周辺機材を加えれば、350,000円程度の出費になります。
YouTuberのドリキン氏は、Blackmagic Designの製品がお気に入りになってしまったようで、おそらくは短期間に何台ものPocket Cinema Cameraを手に入れ、動画制作に使っています。
資金が潤沢にあれば、私もドリキン氏のあとに続きたいところです。が、私の場合はそういうわけにもいかず、手持ちの機材でなんとかしよう、と自分で自分をなだめたりしました。
しかし、それではなかなか満足できず、RAW動画に近い(?)Log撮影というものを試そうと考えました。
私は5年ほど、SONYの一眼カメラα7 IIを使っています。
このカメラは、XAVC Sで動画を撮影できますが、私はこれまで、そのフォーマットで動画を撮ることは考えず、試したこともありませんでした。
私の場合は、身の回りのものが撮影対象で、一眼カメラを使って映像作品を作ろうという考えは持っていません。
家の猫たちに毎日カメラを向け、気ままに静止画を撮り、ときどき、同じカメラで動画を撮影する程度です。
こんな私ですから、特別高画質の動画は必要に感じません。
しかし、Blackmagic Designの動画編集ソフトDaVince Resolve Studioを使いだしたことで、動画の色編集に俄然興味を持ち、その延長で、より色編集に適したRAW動画に手を伸ばし始めているというわけです。
そんなわけで、遅ればせながら、私が5年ほど使うSONYの一眼カメラのXAVC Sで動画を撮影してみようか、と少し前から考え始めました。
すでに一度試み、そのために、画像を記録するSDカードを買いました。しかし、よく調べもせずに購入したため、せっかく手に入れたSDカードであったのに、XAVC Sに対応したものではなかったのでした。
そこで今度は、SONYから出ているSDカードであれば、XAVC Sに対応しているだろうと見当をつけ、容量の少なめな64GBのカードを買い、昨日、初めて試しました。
今度はめでたくXAVC S用途に対応したカードで、初めて、SONYのS-Logで撮影してみました。
フレーム数は毎秒60P、30P、24Pから選べられ、私は30Pを選びました。撮影後に撮影してできたファイルを確認すると、1ショットごとに1個の動画ファイルができていますが、ファイルの種類は、一般的なMP4ファイルです。
正確なフレーム数は、29.976フレームです。
ファイルサイズは、それ以前のAVCHDに比べると大きいはずですが、特別大きくは感じません。もっとも、私は数秒程度の撮影しかしませんので、サイズの大小はそれほど支障となりません。
驚いたのは、撮影済みの動画ファイルを、動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioで開いたときです。
Blackmagic DesignのPocket Cinema Cameraシリーズのシネマカメラで撮影したRAW動画は、色の3要素である色相・彩度・輝度(絵画で「明度」にあたるものが、光の三原色である映像の場合は「輝度」になるようです)が圧倒的に弱く、失敗動画のような映像に見えます。
それを、DaVinci Resolve Studioでカラーコレクションすることで、初めて、本来の輝きを取り戻すというわけです。手軽に本来の色合いを得たい場合は、Lookup Table(LUT)を使うそうです。
SONYのS-Logも、撮影しただけの映像はそんな感じなのかと想像していました。しかし、私の想像より、普通に撮影した動画に近い感じです。
しかし、それをDaVince Resolve Studioのカラーページで実際に操作してみると、通常の動画ファイルが比較にならないくらいの柔軟さで、本当に驚きました。
日中に室内で撮影してみました。外光の射すところと射さないところに強い明度差ができ、陰は暗く沈んでいます。ところが、暗部の明度を上げると、どこまでも露出が復活し、色味もしっかり残っているのです。
これは、静止画のRAW画像とJPEGファイルの関係に似ているように感じます。
JPEGファイルでも、多少の色編集はできるでしょうが、編集できる幅は、RAW画像とは比べられないほどです。同じことが、動画にも当てはまることを実感しました。
S-Logが持つ能力を活かしきれば、自分の思い道理の色味にすることができそうです。しかし、それをすぐに自分のものにできるようには思えません。
昨日、早速自分でもカラーコレクションを試してみましたが、一朝一夕でどうにかなるものではありません。これは、試行錯誤の末に、ようやく身につけた能力でなんとかするものです。
私は絵を描くため、色彩感覚はそれなりに持っているつもりです。それが自分の強みとすれば、多少なりとも良い方に結びつくかもしれません。
色を操る作業は、難しくても、楽しく感じられます。自分なりに経験を積むことで、多少なりとも、カラーコレクションもどきのことができるようになりたいものです。
色の演出であるカラーグレーディングは、それが必要になったときに考えます。