村上の南ヨーロッパ見て歩き

また、村上春樹1949~)の作品について書きます。これほど村上との付き合いが長くなるとは考えてもいませんでした。Amazonの電子書籍を利用するようになったことで、出版された年代に関係なく、読みたいものが読みたいときに読めるようになり、これまでは縁の薄かった村上作品に接することが多くなったというわけです。

今回は、村上の物語世界から離れ、3年間のヨーロッパ滞在記録のようなものをまとめた『遠い太鼓』1990)という作品に接しました。

「はじめに」に、本のタイトルについて簡単に書いています。40歳が近づいていた村上は、ある朝、どこか遠くから太鼓の音が聞こえてきたように感じます。それは、自分で自分を急き立てる音だったのかもしれませんが、太鼓の音を辿ってどこか遠くへ行ってみたくなり、ヨーロッパで暮らしてみることを決め、陽子夫人と二人で南ヨーロッパ暮らしを始めます。

どこかで読みましたが、村上本人は、決して旅は好きではないといいます。行かなくていいなら、旅には行きたくない、というようなことも書いていました。それでも好奇心は旺盛なのでしょう。本書を読む限り、訪れた土地でエンジョイしているように感じます。