カメラでも車でも、それに習熟した人とそうでない人では、同じカメラや車であっても、それによって得られる結果は異なるでしょう。
私は車の運転ができませんので、カメラの話に限ってすることにします。
昨年末に近い頃、使わずにあったキヤノンの一眼レフカメラのEOS 30Dを再び使い出し、それが実に使えるカメラであると再認識したことを本コーナーで何度か書きました。
そのあと、ソニーのミレーレス一眼カメラのα7 IIを使うことをし、やっぱり、カメラはあとに出たものほど高性能で良いのかも、と考えたりもしました
人の考えは短時間のうちにくるくる変わったりするものです。
今日、再び考えが変わりました。
今朝の早い時間、ソニーのα7 IIで、動画を3種類のモードで撮影し、その写り具合を確認したりしました。
そのあと、今度はキヤノンのEOS 30Dで、我が家の愛猫のスナップ写真を撮りました。
EOS 30DのISO感度はISO1600までのため(感度拡張でISO3200)、エレクトロニックフラッシュ(ストロボ)を使いました。そうした場合、ストロボが内蔵されているため、手軽にストロボ撮影ができて便利です。
その写り具合を確認すると、私がα7 IIに外部ストロボをつけ、しかも、マニュアル露出で撮影した写真より、綺麗に撮れていると感じました。
カメラ機種名 | キヤノン EOS 30D |
撮影モード | マニュアル露出 |
シャッター速度 | 1/250秒 |
F値 | f/5.6 |
ISO感度 | ISO400 |
レンズ焦点距離 | 85ミリ |
画質(圧縮率) | ファイン |
ストロボ | 発光 |
ストロボの種類 | 内蔵 |
シンクロタイミング | 先幕シンクロ |
AFモード | AI フォーカス AF |
ピクチャースタイル | スタンダード |
ここは、潔く、自分の腕のなさを認めるべきところです。
EOS 30Dに内蔵されているストロボは、もちろんカメラの内部と連携されており、手軽に撮影しても、間違いなく写るようにできています。
そんなことを考えるうち、普通の人がスナップ写真を撮る目的でカメラを選ぶなら、特別高価で高性能の機種を選ぶ必要がないように感じました。
写真の撮影を仕事にしている人なら、最新機能が搭載された、重装備のカメラが必要でしょう。しかし、多くの人がそうであるように、趣味で記録写真を撮る程度であれば、むしろ、そんな人向けに発売されているカメラで撮影した方が、結果的に失敗のない写真が撮れるようにできています。
今、EOS 30Dで使っているレンズは、このカメラを中古で手に入れたあとにこちらも中古で購入したのだと思いますが、キヤノン純正のズームレンズです。
カバーする焦点距離は、APS-Cサイズ用の18ミリから135ミリです。手振れ補正機能も搭載されており、レンズのF値は、f/3.5からf/5.6です。
暗いと思えば内蔵ストロボをポップアップさせて撮影すればいいだけですので、レンズが特別明るくなくても不自由しません。
キヤノンの一眼レフカメラであっても、上級者向けのカメラにはストロボが内蔵されていません。そのような人は、ストロボが内蔵されている利点を感じないかもしれません。
しかし、実際にそれを使ってみると、思っている以上に便利だったりします。ストロボ発光による写りは、想像しているよりいいです。
実は、今朝行ったミラーレスでの動画撮影の「実験」を通し、動画の撮影を、作品作りのために行わないのであれば、ミレーレスで苦労して動画を撮る必要がないのでは、という結論めいたものを得ました。
もっとも、冒頭部分でも書いたように、人の考えはくるくる変わるもので、私の考えも始終変わるわけですけれど。
私は昔から映像が好きで、初期には8ミリ映画の撮影を趣味にしました。そんな風に、昔から今の動画のようなものを撮ってはきましたが、ほとんどすべては自己満足の記録映像で、作品らしいものは撮ったことがありません。
そんな私のような人間であれば、わざわざ苦労して、重いミラーレスに重くて大きいレンズをつけて、動画を撮るまでもありません。
もっとも、動画をLogで撮り、それを素人なりにカラーコレクションやカラーグレーディングの真似ごとをするのは、それはそれで、趣味としては悪いものではありません。
しかし、それよりも手軽に、デジタルビデオカメラで撮影し、それで悪くない映像になるのであれば、わざわざミラーレスを持ち出さなくても済む話です。
ネットの動画共有サイトのYouTube界隈を見渡しますと、私がしたような、あるいは、今もしているような苦労を買って出る人があとを断たない印象です。それらは、それぞれの人が自分の望みや趣味のためにしていることでしょうから、他人の私が口を出すことではありません。
結局のところ、私も含め、カメラメーカーの戦略に踊らされていることになるでしょう。
映像作品作りを仕事にする人は、撮影を担当する人以外、機材には口をはさまないでしょう。映画監督の山田洋次(1931~)にしても、自分の作品世界とその周辺の話はしますが、山田から、撮影カメラの機材的な話は聞いたことがありません。
昨年12月10日の朝日新聞・土曜版には、山田が3週間おきに担当する連載コラムが載っています。
その回の見出しは「『おきかみさん』だった高羽さん」で、山田監督と数々の作品を生み出した映画の撮影カメラマンの高羽哲夫(1926~1995)との思い出話が語られています。
山田の作品で高羽がカメラを担当するようになったのは、『馬鹿まるだし』(1964)からだそうです。
以来、高羽が世を去る年に公開された『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995)まで、シリーズ48作品の撮影を担当しています。
山田は高羽について、次のように語っています。
この人(高羽)がいてくれたから僕は監督の仕事を続けてこられた。この人がいなければ『男はつらいよ』シリーズも生まれてなかっただろう。
朝日新聞・土曜版 山田洋次 夢をつくる(11)「おかみさん」だった高羽さん
48作目の撮影は、高羽のほかに長沼六男(1945~)の名がありますので、長沼が体調のすぐれない高羽に代わって撮影を担当し、高羽が撮影の仕方の助言をするようなことをした(?)のでしょうか。
知る人がいないようなシリーズのチーフカメラマンを30数年務めた高羽でしたが、山田は、高羽は松竹大船撮影所に近い神奈川の藤沢にある公営団地に愛妻とふたりで暮らしていた、と思い出話の最後に話しています。
山田監督が相棒の高羽について語る思い出話にも、撮影機材の話はまったくでてきませんね。
当たり前といえば当たり前のことでしょうね。映画の監督は、自分の作品を撮りきることに懸命になっているものであり、撮影に関しては、高羽を絶対的に信頼し、機材のことなど監督の頭にはなかったでしょうから。
山田の次の表現が、高羽という人間をよく表しています。
(高羽という男は)まじめで頭がよくてよく勉強していて、文学や音楽については独特の意見を持つ教養人であり、コンピューターについても強い関心を持っていて、何もわからない僕にその恐るべき時代の幕開けについて語ってくれたものでした。
朝日新聞・土曜版 山田洋次 夢をつくる(11)「おかみさん」だった高羽さん
今の映画制作の現場がどうなっているのかはわかりませんが、大きな制作会社であれば、当然、大掛かりの撮影機材が揃っているから、それを使えばよく、撮影の担当者が、個人でカメラを用意したりはしないでしょうね。
高羽にしても、自分が住む団地に、カメラを持ち帰り、次はどんなレンズを買おうか、などとは考えもしなかっただろうと思います。
YouTubeで動画を毎日のように配信するYouTuberならカメラやレンズ、機材に関心を持つでしょうが、YouTubeに上がる動画は、作品ではなく、日常記録の延長線上のようなものが大半(?)でしょう。
であるなら、大げさな機材でなく、手軽なもので済ませても、見る人にはなんの影響ないと思います。要は、自己満足の結果(?)を見せられていることになりましょうか。
こんなことを書いている私自身も、自己満足を追い求め、必要以上に物欲を膨らませることが多いです。
ときにはそれを自戒し、今手元にある機材を見直し、それで満足できる自分にしておこう、と考えたりするわけです。
スチルはキヤノンのEOS 30D、ビデオはキヤノンのビデオカメラ、iVIS HF M41で事足りるといえば事足ります。
これを更新したあとは、すぐに、考えが変わっているかもしれませんが。