望遠レンズだけが持つ表現

写真撮影を楽しむ人には、レンズの好きな焦点距離があるでしょう。

もっとも、今は、ズームレンズが主流(?)ですので、焦点距離にこだわる人は少数派になってしまうでしょうか?

デジタルカメラで写真を始めた人で、ズームレンズがキットレンズとしてボディについてくれば、それで撮影をすることになります。それであれば、はじめからこの焦点距離で撮影しようとは考えず、ファインダーを覗いて、ちょうど良い範囲が写る焦点距離選び、焦点距離云々の考えは頭にないかもしれません。

スマートフォンから写真に興味を持ったような人であれば、液晶画面で被写体を確認する癖がついているでしょうから、カメラにファインダーがついていても、それは使わず、液晶モニタを見て写真を撮ることになりそうです。

そうなれば、特別焦点距離に興味を持つ人でなければ、それには無関心になりそうです。

焦点距離に興味を持たないからといって、それが悪いといいたいわけではありません。焦点距離に興味を持つことで、見えて来るものがあるということです。

昨日と今日は、日本の正月の風物詩ともいえる、大学生の箱根(はこね)駅伝が行われています。

これを見始めると、二日間の半日程度の時間がとられてしまうため、私としてもなるべく見ないようにしたいのですが、どうしても気になって、ちらちら見てしまいます。

昨日の往路は、駒沢大学が一位でゴールテープを切っています。駒大というと駅伝では常勝集団のイメージがあります。ところが、駒大が往路優勝したのは19年ぶりだというのは意外でした。

そういえば、私は2003年の大会二日目を沿道で見て、ビデオに撮影したことを思い出します。ゴールに近い皇居のお堀端で見ましたが、その日は、珍しく、東京は雪でした。

その年に優勝したのが駒澤大学でした。その頃も、駒大は常に優勝候補だったように記憶します。今も監督をする大八木弘明氏(1958~)は、その当時はコーチの立場だった(?)でしょうか?

本日の豆知識
ネットの事典ウィキペディアで確認すると、大八木氏は同校のOBで、1995年にコーチになったそうです。その後、2002年に助監督になっていますね。そして、2004年からは監督になられています。
私も見た!箱根駅伝2003

あれから今年で20年。当時の選手たちも、今は40代です。

駅伝の話に逸れてしまいました。この駅伝のテレビ中継を見ていても、レンズの焦点距離の違いを知ることができます。

中継に使われるテレビカメラは、焦点距離が固定された単焦点レンズが使われることはないでしょう。ほとんどすべてがズームレンズです。

そうであっても、撮影状況によって、焦点距離に違いが現れてきます。

放送車やリポートバイクが走っている選手の近くに迫れれば、より広角のレンズで撮影できます。その広角のレンズで撮影された映像を見ると、後続の選手がどのように見えると想像しますか?

レンズの焦点距離は、35ミリフルサイズが基準とされています。このフルサイズで焦点距離50ミリが標準レンズとされ、人間の眼で見える像に近いです。

カール・ツァイスのプラナー50ミリF1.4

これよりも小さな数字が広角になりますが、広角になればなるほど、後続の選手の姿は、実際の距離より離れて見えます。

望遠はその逆になります。

ですから、それまで望遠で撮影された画面を見ていて、後続の選手が近づいて来たと思っていたのに、画面が広角レンズで撮影された画面に切り替わると、「あれ? 思ったほど迫っていない」と感じたりすることが起きがちです。

映画監督の黒澤明19101998)は望遠レンズを好んで使った、と聞きます。

黒澤監督が『影武者』1980)を撮っていたとき、NHKが撮影現場に入り、撮影の様子をドキュメンタリー番組にまとめました。

そのときも、野外の合戦シーンは、望遠レンズで撮影していたと思います。演技をする役者たちが馬にまたがっていますが、撮影するカメラから遠くに離れているため、メガホンを使って大きな声で支持を出していたように記憶します。

広い合戦シーンを撮影するのだから、ともしも広角レンズを使っていたら、あの作品のような迫力あるシーンは撮影できなかった(?)かもしれません。

『乱』馬に乗っての演技が出来ない生駒と小倉に黒澤明監督も怒り心頭。練習不足を指摘して、遂にこの日の撮影は途中で中止となる。

望遠レンズは、遠くのものを大きく撮れることばかりが特徴ではありません。

レンズの焦点距離は、望遠になればなるほど、背景が手前に迫って来る効果があります。

同じモデルを撮影する場合、望遠レンズで撮影すると、実物より太めに写ってしまいます。逆に、同じサイズになるようにして、広角レンズで撮影すると、実物より細めに写るでしょう。

望遠レンズには圧縮効果があるからです。

人間の体も肉の塊で、それが望遠レンズによって圧縮効果が強まれば、体がギュッと圧縮され、より太めの体に写ってしまうということになります。

それを黒澤監督が知っていたかどうかはわかりません。おそらくは感覚的に知っていたのでしょう。それだから、望遠レンズを好んで使ったのかもしれません。

広大な合戦シーンでこれを使えば、役者も群衆も圧縮されてフィルムに定着し、現実よりも迫力のある画になります。

表現スタイル

黒澤はカメラの動きを観客に意識させないようにした[128]。カメラを勝手に動かすことはなく、俳優が動くときのみカメラを移動させ、俳優が止まればカメラも停止させた[122][128]。カメラが対象物に寄るのも不自然だと考え、ズームレンズは基本的に使わず、その代わりに望遠レンズを多用した[122]。黒澤は『野良犬』のワンシーンで初めて望遠レンズを使い、『七人の侍』から複数カメラの1つに採用した[129]。望遠レンズだと画角が狭くなり、被写体の遠近感が失われて縦に迫るように見えるため、迫力ある画面を生んだ[122][130]。また、望遠レンズを使うとカメラ位置が遠ざかり、その分俳優がカメラを意識しなくなり、自然な表情が撮れるため、黒澤はクローズアップも望遠レンズで撮影した[130]

ウィキペディア:黒澤明 作風
Akira Kurosawa – Composing Movement
(AIで翻訳された字幕を読みながらご覧ください)

あるモデルを威風堂々と描きたければ、私だったら、太陽を背にした高い台の上に仁王立ちしてもらい、下から見上げるように、望遠レンズで逆光気味に撮影するでしょう。

駅伝の中継映像を見ながら、どんな焦点距離で撮影しているか考えてみるのも面白いです。こんなことを考えて見ているのは、私ぐらい(?)かもしれませんが。

今大会は、駒澤大学が総合優勝するのでしょうか。

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