動画におけるシャッター速度について考えています。きっかけは、ネットの動画共有サイトのYouTubeである動画を見たことです。
配信者は米国人ですから、日本語では話していません。しかし、YouTubeには字幕機能があり、それを日本語翻訳にすると、話している内容がわかります。
その配信者は動画制作をしており、ソニーから出たシネマカメラのFX30について話しています。
このカメラを内外のYouTuberが早速取り上げて動画を作っていますが、多くは、FX30を盛んに褒めたたえています。私が同じ立場でも、自分でせっかく買ったカメラですから、多少のデメリットには目をつぶり、良い面を強調したくなるでしょう。
その点、今回紹介する配信者は、冷静に不満点を上げ、話しています。
その中に、シャッター速度について語る部分があり、興味深く見ました。では、その部分から再生が始まるように設定して下に埋め込みます。
本動画の配信者は、デジタルのシネマカメラに共通する不満として、回転シャッターが搭載されていないことを上げています。
フィルムのムービーカメラを知らない人には、何をいっているのかわからない(?)かもしれません。
こんなことを書く私自身、昔に8ミリ映画のカメラで趣味の撮影をした経験を持ちながら、シャッター周りの仕組みは理解していませんでした。
私がそのあたりについて興味を持ったのは11年前の2011年9月末で、本コーナーで取り上げています。
フィルムのムービーカメラと現代のデジタルシネマカメラは、シャッター周りの構造が違います。私が知らないだけで、デジタルのシネマカメラであっても、フィルムのムービーカメラと同じ回転シャッター構造を持つものもある(?)のかもしれません。
フィルムのムービーカメラは、レンズから入った光がフィルムに当たる直前に、回転式のシャッターがついており、それが1コマごとに回転しています。
多くの商業映画の撮影に使われた35ミリフィルムのムービーカメラは、多くが、毎秒24コマで撮影されました。
ということで、1秒間に24コマが撮影され、回転シャッターも1秒間に24回作動します。
回転するシャッターの円盤は半円形になっており、円盤がない半分の部分だけ、レンズから入った光がフィルムに届く構造です。
ちなみに、私が趣味で愉しんだ8ミリ映画のカメラの場合は、通常は毎秒18コマの速度で撮影し、映写時も毎秒18コマで映写します。
1コマにつき、回転する円盤が切れた半円分だけ光が入るということは、光が遮られる時間が半円分あるということです。これが動画におけるシャッター速度になり、切れた部分の180度が「シャッター開角度」になります。
毎秒24コマの速度で撮影する場合は、1/2の時間(速度としては2倍)の1/48秒がシャッター速度になります。8ミリ映画のカメラの場合は、1/40秒程度と聞きます。
今のデジタルシネマカメラや、私も使うミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)でも、動画を本格的に撮る人はシャッター速度にも注意し、撮影フレームレートの2倍速い速度を目安にしています。
私は24フレームレートで撮影しますから、1/48秒が望ましいのですが、ミラーレスにはその速度がなく、1/50秒を選ぶことになります。
本ページに埋め込んだ動画の配信者は、デジタルシネマカメラにも回転式の円盤型のシャッターを希望しています。その利点にはどのようなことがあるでしょう。
同じフレームレートだけで撮影するのであれば、今のカメラでも問題なさそうに感じます。ところが、フレームレートを変えて撮影する機会が多い人は、それを変えるたびに、自分でシャッター速度を変えなければなりません。
たとえば、スローモーションの撮影をしたければ、120フレームで撮影したりするでしょう。
通常は30フレームで撮影し、ここぞというところを120フレームで撮影し、それを編集で活かせば、120は30の4倍のフレームレートになり、動きが4倍のスローモーション効果が得られます。
この場合は、フレームレートの2倍ですから、1/250秒のシャッター速度にしたりするのでしょう。
私はスローモーションの撮影はしませんので、この設定で撮影したことはありません。1秒間に120フレーム消費し、それが、撮影時間に反映されるのですから、ファイルの容量が多くなることが予想されます。
それでなくても、私は最も容量を食わない設定で動画を撮影していますので、意味もなく容量が多くなる撮影は好みません。どうしてもそれで撮影しなければならなくなれば、躊躇なく使うでしょうけれど。
人間の眼は、一瞬の休みもなく、眼から入る情報を見ています。それがムービーになると、たとえばフィルムのムービーカメラで、それが毎秒24コマであれば、1秒間に24枚の静止画で撮影された映像を見ていることになります。
それでも、その映像を見て、不自然に感じることはありません。そのからくりは、1枚の静止画が適度な被写体ブレ(モーションブラー)を持っていることにあります。
もしも静止画にモーションブラーがなければ、1枚1枚の静止画のつながりが悪くなり、いわゆる「パラパラ漫画」のように見えてしまうことになります。
この現象は、速いシャッター速度で撮影した動画に見られます。
以前、本ページで紹介した動画があります。それを下に埋め込んでみます。
この動画では、フレームレートを変え、たとえば24フレームで動きの速いものを撮影すると、パラパラした感じなる、と話しています。
私はこの動画を見て、映画の中に電車の走行シーンが写っていても、それがパラパラした動きには見えないだろうと考え、パラパラの原因はフレームレートではなく、シャッター速度にあるのでは、と書きました。
ここまで書いてきた中で、フィルムのムービーカメラではできないような撮影が、今のデジタルシネマカメラではでき、その設定で実際に撮影したら、どんな風に見えるか気になり、試してみました。
上に埋め込んだのが、私が試した動画です。何の変哲もなく見えるでしょう。炎が揺らめいているだけです。
実は本動画は、次の設定で撮影しました。
- フレームレート:23.976fps
- シャッター速度:1/25秒
すでに書いたように、毎秒24フレームで撮影するのであれば、シャッター速度は2倍速い1/50秒にすべきです。それをあえて、フレームレートに近い1/25秒で撮影してみたのです。
これがフィルムのムービーカメラであれば、こんな撮影はできないでしょう。回転シャッターの開角度を360度に全開して撮影するようなものだからです。
それがフィルムのムービーカメラでも出来たら、どんな映像になるでしょう。フィルムの場合は、1コマの撮影が終わったら次のコマに送らなければなりません。その間もシャッターが開いたままです。次のコマに切り替わるところもフィルムに記録されてしまう(?)のでしょうか?
デジタルの動画撮影でそれを試してみましたが、私の眼で見る限り、特別ヘンな動きには見えません。動きがわかるよう、揺らめく炎を撮影してみたのですが。
気になったので、炎の動画を1フレームずつ送る再生をして、動きを確かめてみました。
この動画を見ても、ヘンな動きには見えません。その理由は、一枚ごとの静止画にモーションブラーがかかっているからでしょう。これがもし、逆に速いシャッター速度で撮影されたものであれば、炎が1フレームずつ静止した状態で定着し、フレームとフレームが滑らかにつながらず、ぎくしゃくした炎の動きに見えるはずです。
それにしても、フィルムのムービーカメラでは、おそらくは撮影不可能(?)な、回転シャッターの開角度を360度にする方法で、ミラーレスで撮影してみても、私にはヘンな動きを見つけることができませんでした。
人が動く様子を撮影したら、変な動きを見つけることができるのでしょうか。
本ページで紹介したYouTube動画の配信者は、デジタルのシネマカメラにも円盤型の回転シャッターがついていれば、フレームレートを換えても、そのたびにシャッター速度のことを気にしなくても、自然に2倍速のシャッター速度が自動的に得られ、どんなフレームレートでも、滑らかな動きが記録できる、と述べています。
その代わり、たとえば120フレームで撮影したら、シャッターが毎秒120回転することになり、音が発生しそうではありますね。また、その撮影で長く撮影したら、モーターが熱を持ち、熱暴走の原因になりかねない(?)かもしれない、などと考えてみたりしないでもありません。