本コーナーでつい先日「私は日頃アニメは見ない」というようなことを書きましたが、その舌の根も乾かない昨日、早速アニメーション作品を一つ見てきましたf(^_^;)
現在、ラピュタ阿佐ヶ谷と東京都写真美術館を会場に開催中の、「第3回 ラピュタ・アニメーション・フェスティバル 2002」(11月9日~29日)で上映されたアニメ作品です。

私が向かったのはラピュタ阿佐ヶ谷の方で、お目当ての作品は『外套』というロシアのアニメ作家、ユーリ・ノルシュテインの作品です。
方向音痴な私は、阿佐ヶ谷駅で下車したあと、ラピュタに辿り着くまでに一度迷子になりました(^_^;
昨日は小春日和の良い天気で、散歩をするのには絶好でしたが、こちらは散歩が目的ではなく、会場に辿り着けずにいるわけで、暢気に散歩気分は味わえませんでした。
途中で、郵便配達員に出会い、これ幸いとラピュタの場所を尋ねると、意外なことに「う~ん、聞いたことないなぁ、、、」といわれてしまいました。そんなはずはないと思うのですが、仕方がありません。もう一度来た道を駅方向へ戻り、北口付近にあったより詳細な地図で確認することにしました。
あらかじめラピュタのサイトにあった地図で大体の道順はインプットしておきましたが、その地図を見るとソレとはかなりイメージが違います。
そこで、今度は逆の方角に向かい歩いていると、入り組んだ路地の一角に建つ奇妙な建物が突如目の端に飛び込んで来ました。

明らかに周りの建物とは趣が異なり、てっぺんには風車(プロペラ?)まで回っています。おまけに、建物の壁にLaputaと書かれていますから、「ここ以外であるはずがない」と確信でき、ホッとしました。
そのシアターは入り口も建物同様に変わっていまして、植え込みに囲まれた木の階段を上るようになっており、一瞬、「ここから入っていいのかな」といった感じがしてしまいます。

館内はお揃いのTシャツを着た若い女性スタッフだけで運営されているようで、また、そのスタッフの応対がとても感じ良く、好感が持てます。
目的の作品は、前の回の上映が少々長引いたため、予定よりも少し遅れて始まりました。館内の座席数は百席あまりですが、昨日は満席で、あとから来た人は次回に回されるほどでした。
ノルシュテインというアニメ作家は、かなり前、NHK教育の「ETV特集」で取り上げられたと記憶していますが、その独特な制作方法もあって、強い興味を持ちました。
一般的なアニメは、「セル」と呼ばれる透明なシートに絵を描き (セル画) 、それをコマ撮りします。それが、ノルシュテインは、セルを切り抜いたようなもので登場人物や背景の部品を作ります。それを奥行きのある撮影大にセットし、部品を交換しながら一コマずつ撮影する、という気の遠くなるほどの手間をかけて作っています。
そんな製作方法であることを番組で見て知っていたため、いずれ機会があれば、作品を見てみたいと思っていました。その彼の代表作『外套』が一日限りで上映されることを知り、足を運んだ次第です。
昨日は、作品のほとんどをビデオプロジェクターを使って上映し、新たに製作された最後の5分間ほどが通常のフィルム映写機を使って上映されました。
上に書いたことでもわかっていただけると思いますが、この作品は非常に手間のかかる制作方法のため、長い年月をかけながらも未だに完成していない“未完成作品”なのです。
モノクロームの映像で、音も入っていません。完全なサイレントで、ノルシュテインによって作り出された映像が静かに流れました。
未完成作品ですから、唐突に終わります。映画には起承転結があるものという固定見念を持つ一般見客には、その終わり方さえも新鮮に感じられます。
途中でも書きましたようにノルシュテインの『外套』は昨日一日限りの上映でしたが、今回のフェスティバル期間中、彼の他の短編や他作家の作品のプログラムが組まれていますので、興味を持たれたなら会場に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。何かしらの刺激を受けること請け合いです。