今日5月15日は、沖縄が日本に返還されてちょうど30年目の日に当たるそうです。
このニュースに接して、私にはひとりの男の名前が頭に浮かびました。それは、金城哲夫(1938~1976)です。
彼については以前にも本サイト内で書いた記憶があります。彼は円谷プロダクションとTBSが制作した特撮ドラマの『ウルトラマン』(1966~1967)や『ウルトラセブン』(1967~1968)の脚本を書いたことで知られています。記憶が定かではありませんが、『ウルトラQ』(1966)にも関わっていたかもしれません。
彼は本土に返還される以前の沖縄の出身で、東京の高校(玉川学園)に入学するため、15歳で東京にやってきました。その後、どういう縁があってか、ウルトラ・シリーズの脚本制作に加わっていきます。ちなみに、その当時一緒に仕事をした仲間に、現在も活躍する市川森一(1941~ 2011)がいます。
金城は、その脚本の仕事で特異な才能を開花させ、同時にウルトラ・シリーズの成功にも寄与しますが、彼の内面には鬱屈した感情が隠されていました。
それが限界点に達したとき、彼はその場から消えるように、東京をあとにしました。彼が向かった先は、本土復帰を目前に控えた生まれ故郷の沖縄です。彼の中に眠っていた“民族の血”が彼を呼び戻したのでしょうか。
返還を見届けた彼はそのまま沖縄に留まり、地元のラジオ局などでパーソナリティの仕事を続けることになります(この辺りは記憶が不確かなので、あるいは私の事実誤認があるかもしれません)。
彼はその後、沖縄で開催された海洋博覧会の運営にも携わることになりますが、その辺りから彼の人生は暗転していきます。
彼は自身の内面をなだめるかのように酒に浸り始めます。
そしてついに、金城は最期の日を迎えることになります。浴びるようにアルコールを飲み、フラフラの足で、自宅ベランダの階段から転げ落ち、あえなくこの世を去ってしまったのです。
彼の訃報を聞きつけた昔の仕事仲間は、誰もが彼の自殺を想像しました。結果的には事故死の形ですが、アルコールに浸った晩年は、ある意味“消極的な自殺行為”といえるかもしれません。
沖縄は日本に返還され、既に30年の年月が経ちましたが、アメリカ軍の基地が集中するという現実は何一つ変わっていません。
金城哲夫が今も生きていてこの日を迎えたら、どんな感想を持ったでしょうか。
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