前回に続いて、今回も、トークをせずにいきなり文章にする“書き下ろし更新”になります。
そして、更新理由も前回とほとんど同じです。つまり、本サイト内で私が作成した動画を中心に紹介している「私の動画アーカイブス」コーナー(※現在本コーナーはありません)で紹介している動画の作り替えを紹介する内容になるからです。
私の行動の基本が気まぐれであることは、何度となく述べていますが、今、私の気まぐれが向かっていますのは、これまで紹介してきました動画を、ネットの動画投稿サイトYouTubeのサービスを利用した紹介に切り替えることです。
今回切り替え作業が終了しましたのは、2007年8月19日に、東京・池袋にあります「新文芸坐」で行われた映画監督・原一男さんのトークショーの一部を動画にしてあったものの作り替えです。
同館では、毎年夏の旧盆の頃、社会派映画の特集が組まれるのが恒例となっています。その年の夏の特集で、熊井啓監督の『海と毒薬』が上映され、私も見ています。
これは自分でも妙だと思うのですが、私はなぜか、熊井啓監督と浦山桐郎監督というまったく別の監督が、頭の中でひとりの監督像に重なってしまいます。ほかにはこういうケースはありません。熊井監督と浦山監督に限った話です。なぜでしょうか。
このおふたりの監督作品で助監督をした経験を持つのが原一男監督です。おふたりともお酒が好きで、アルコールが回るといろいろと騒動を起こしたりしたところが共通していたようです。
それはともかく、動画にしたトークでは、熊井監督の『海と毒薬』の裏話が披露されています。「YouTube」は動画の長さに制限が設けられていまして、通常は【15分】以内とされています(※その後、この制約はなくなっています)。そうした関係上、前・後編2本に分割しています。
『海と毒薬』という作品は、遠藤周作の同名小説が原作です。
不勉強なため、私は映画を見るまで知りませんでしたが、先の大戦の末期、日本軍の捕虜になった米兵が、九州の大学で生きたまま解剖されるというようなことが現実にあったそうです(「九州大学生体解剖事件」)。それが遠藤周作の筆で小説になり、それを知って衝撃を受けた熊井監督が、事が事だけになかなか実現できず、長い年月の末にようやく映画化した作品です。
この作品のチーフ助監督(作品では「監督補」とクレジットされています)となった原一男監督は、本作で重要な位置を占める解剖シーンの撮影を担当します。
映画を見ていて、私は解剖シーンがあまりにもリアルであったため、どうやって撮影したのか非常に気になりました。腹部が鋭利なメスで切り裂かれ、生きている内蔵が実にリアルに鼓動する様子が克明に写っていたからです。
映画というのは、編集によって作り物を本物のように見せる芸術です。
米兵の捕虜を生きたまま解剖する医師を演じるのは俳優です。しかし、メスで実際に解剖をするのは手術の専門家です。その腕から先の撮影を原監督が担当したわけです。
腹部を切り開くのですから、当然、血液が噴き出ます。それを脱脂綿で拭い、手術室の床に落とします。タイルの床には、血液がこびりつかないようにするためか、水が流れています。
噴き出た血を拭き取った脱脂綿がその床に落ちると、生きた血が水の中を動きます。その映像のために原監督が用意したのは何でしょう? トークの【前半】で種明かしをしています。
そして、どうしても気になるのが解剖の場面。どう見ても内臓は作り物には見えません。しかし、映画のためにわざわざスタッフを手術してそのシーンを撮影するわけにもいかないでしょう。何を使って、どのように撮影したのでしょう。【後編】でその話をしてくれています。
というわけで、前日に続いて、本サイト内「私の動画アーカイブス」で紹介する動画のひとつを「YouTube版」に作り替えたことの報告をしました。もしよかったら見てやってください。