等身大の大人を感じさせる清張作品

海外で、日本のように、純文学とそれ以外の大衆小説とに分けられているか知りません。

日本ではそれが分けられ、それぞれを書く小説家自身も、自分は純文学の作家だ、自分は大衆に向けた小説を書く作家だと考えているふしがあります。

また、それぞれを読む読者も、そのような気持ちで作品に接しているのではないでしょうか。

このように分けられた場合、大衆小説よりも純文学のほうが「高尚」に考えられています。しかし、個々の作品を比較すれば、必ずしもそうでないことが少なくないのではありませんか?

私は電子書籍版でだけ本を読むようになりました。私が使う電子書籍端末にある本は読んでしまったので、新たな一冊を入手しました。読みたい本が決まっていないときは、読み慣れた松本清張19091992)の作品で、まだ読んでいない本を探し、それを読むことが多いです。

表題作を含む短編集『共犯者』を見つけ、それに決めて読み始めたところです。全部で十の短編小説が収録されており、その中には、別の短編集で読んだ作品もあります。

その三番目の『愛と空白の共謀』を読み終えたあとに本コーナーの更新を始めました。

2番線がない鉄道の駅

私は今からちょうど20年前の2004年、生まれて初めて病院に入院しました。

そのときの入院のことは本コーナーで過去に書いたことがあります。私の入院理由は病気ではなく、怪我でした。

その年の8月末、最寄駅から自宅へ自転車で走りました。途中に急坂があり、それを下っている途中で転倒し、頭部を強打したことで急性硬膜下血腫を起こし、病院へ緊急搬送されたようです。

私はその事故で意識を失い、頭部を開いて手術を受けたことを、意識が戻った一週間か十日ほどあとに知りました。

こんな風に、私も病院に入院したことがありますが、そのとき、自分が入院した病院に「4階」があるのかどうか意識をせず、それだから、改めて確認することをしませんでした。

村上作品の免色に個人的にだぶる人

村上春樹1949~)の長編小説『騎士団長殺し』2017)については、読み終わったあとに本コーナーで取り上げました。

この作品には主人公の「私」に接近する免色渉(めんしき・わたる)という謎めいた男が登場します。

免色は、「私」が仮住まいする家の、谷を挟んだ向かい側にある大きな家にひとりで住んでいる設定です。

この男の外見で特徴的なのは、髪が、いつ見ても櫛目がとおった真っ白であることです。この髪だけで、その男が謎めいたものを感じさせます。

もっともこれは小説で描かれているからで、現実の世界にも白髪の男性はいます。それらの人が謎めいていることはありません。

小説は、映像作品と違い、読み手が自分の頭の中で、自分だけの映像にすることができます。

私は『騎士団長殺し』に出てくる免色に、あるときから、実在する人物の姿を重ねることをしました。

作品盗用が命取りとなる男を描いた清張作品

松本清張1909~ 1992)の『渡された場面』を読み終えたので書いておきます。

本作は、『週刊新潮』1976年1月1日号から7月15日号まで連載されています。年号でいえば昭和51年の作品になります。当時を知る人であれば、その頃の社会情勢を重ねて読むといいでしょう。

1976年といえば、長谷川和彦1946~)の初監督作品『青春の殺人者』『タクシードライバー』が劇場公開されています。ある意味、個人的には思い出深い年です。

Taxi Driver (2/8) Movie CLIP – I Gotta Get Organized (1976) HD

舞台は、佐賀県の唐津に近い坊城(ぼうじょう)という架空の町です。今は唐津の一部となる呼子町がモデルとされたようです。

佐賀県 呼子 赤線遊郭跡 裏通りが昭和過ぎた!

玄界灘に面した町で、漁業が盛んです。この町にある千鳥旅館にひとりの泊り客が宿をとります。男は小寺康司といい、東京に住む中堅の小説家です。