隣の動画が青く見える

気の弱そうな若い男が、ある家のインターホンを押します。ドアを開けて中から顔を覗かせたのは初老の男です。

昼の時間ですから、家にいるのは年配の人ばかりとはわかっています。男は、女性の方が仕事がやりやすかったと思いつつ、顔を出してくれた初老の男に要件を話し始めます。

男はセールスマンをしています。セールスの途中で断られることが続き、成績が低迷しています。

初老の男は、セールスマンの男を不憫に感じたか、家の中に招き入れてくれました。そして、向かい合って座ったセールスマンの男にこんなことをいい出します。

君はセールスマンか。大変だな。成績が芳(かんば)しくなさそうな顔をしているじゃないか。俺もセールスの経験があるから、苦労はよくわかる。よし、俺でよかったら、君の力になってあげてもいいぞ。営業成績がすぐ上がる抜群の方法を知っている。聴いてみたいか?

セールスマンの男が、ぜひ教えてくださいというと、初老の男は奥の部屋に引っ込み、ノートPCを持って戻ってきました。それをつけ、ネットの動画共有サイトのYouTubeにアクセスし、下に埋め込んだ動画の再生を始めました。

【動画を面白くする法則を語ります】動画を公開しているけど、面白くならない、そんな悩みに映像のプロが解説します。

架空の場面を想定し、本日見たばかりの動画につなげてみました。本動画に登場して、ご自分のテクニックを披露しているのは、映像制作の仕事を30年(だったかな?)されている桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)です。

本動画を見ていると、なるほどと思います。が、テレビの通販番組やバラエティ番組の作り方を指南されているような気分になります。

話されていることは理解できます。そして、そのやり方が視聴者の心を掴むのには有効な方法でありそうな気がします。

ただ、私には、使い古された手法のように感じられました。

それが見る人の心を掴む方法としては優れているように感じます。しかし、これをすべてのYouTuberが取り入れて、同じような効果が上げられるかどうかはわかりません。

具体的にいえば、桜風氏と同じようなキャラクターを持つ人であれば、あざといアクションをして見せることは何でもないことでしょう。しかし、たとえば同じことを、私が取り入れられるかといえば、難しいです。

ほかの人でも、ノリの良い人であれば応用できますが、私のように日頃からテンションの低い人は、やってみろといわれても、できないものはできないです。

YouTubeで多くの登録者数を持つ人や、再生回数の多い人は、桜風氏に教わらなくても、生まれ持ったノリの良さで、ノリの良い動画を作り、そんな動画を好む人を自分のチャンネルに獲得し、再生回数を増やすことができるでしょう。

しかし、世の中の人の好みはひとつではありません。テレビのバラエティ番組が好きな人もいれば、私のように嫌いな人がいます。

テレビのバラエディ番組が好きでない人は、YouTubeでも、それに類する動画は好んで見ません。

私は、音声録音に関することを調べて、たまたま桜風氏のチャンネルに出会いました。

そのきっかけがなかったら、バラエティ色の強い彼の動画に縁ができることもなかったでしょう。

桜風氏が本動画で話されていることを否定しているわけではありません。大いに参考になる点もあります。それを断った上で、彼にも見られる「あざとさ」を嫌う人もいるだろうということです。

以前の本コーナーで、アンディ・ウォーホル19281987)が作った映像作品について書いたことがあります。

その作品は、桜風氏や、桜風氏の本動画に強く同意する人には、退屈極まりない作品でしょう。

ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングの先端部分を固定したカメラで延々と映し続けるだけの映像だからです。

Andy Warhol – Empire

この作品が、見る人を飽きさせない作りになっていたら、どのような評価になったでしょうか。

私は昔から映像が好きで、自分でも長回しの動画をいくつか作りました。それを作る時、見ている人のリアクションを考えてカメラを回したことは一度もありません。

あるがまま、自分が気のすむようにカメラを回し、しゃべっただけです。それだから、私の動画は、長くても短くても、見る人は面白く感じないでしょう。

私は、自分が楽しむために動画を作るようなものです。自分がそれで楽しければ、それだけで満足できてしまいます。こんな作り方をしていたのでは、桜風氏には0点の評価をされてしまいそうです。

だからといって、次に撮る動画から、私が様々な声色(こわいろ)を使い、見る人をあきさせないような撮り方ができるかといえば、できません。相も変わらず、テンションの低い、ぼそぼそとしたしゃべりを交えた動画にならざるを得ません。

テレビのバラエティ番組に出演するタレントになりたかったら、自分の性格を変えてでも、テレビ向きになる必要があります。しかし、普通の人が、趣味で動画を作るのですから、無理なことはしないほうがいいです。

それでも、少しでも自分の動画を見てもらいたい人は、「いいことを教えてもらった」と実践に移したりするのでしょうか。

私も自分のYouTubeチャンネルは持っていますが、今は休止状態で、YouTube向け動画は作る予定がありません。また、再開することがあったとしても、自分のキャラクターを変えてまで、受けの良い動画にするのは難しいです。

前々回の更新で、風景写真家が、こじんまりとしたチャンネルに戻す意向であることを好意的に取り上げました。

結局のところ、人それぞれというよりほかありません。

『男はつらいよ』シリーズで知られる山田洋次監督(1931~)は、今に続く「松竹スタイル」に落ち着く前の若い頃は、日本映画でいえば、黒澤明1910~ 1998)が撮るようなダイナミックな作風に憧れた時期があったそうです。

そんな山田監督でしたが、気がつけば、自分も松竹伝統の小市民的な作風になったそうです。結局のところ、理想とは別に、人は自分に合った「土俵」でしか「相撲」は取れないということだろうと思います。

これには面白い話の続きがあります。

山田監督がのちに、黒澤の家に招かれたときでしたか、黒澤が家のビデオで小津安二郎19031963)の作品を山田と一緒に見て、「本当はこういうのを撮りたい」というようなことをいったそうです。

黒澤は黒澤で、自分の土俵で相撲を取りつつ、別の表現を理想とする気持ちがあった(?)のかもしれません。

「隣の芝生は青く見える」の感覚は、誰もが持つ普遍的なものです。

テレビのバラエティ番組で必要以上に大げさなリアクションをするタレントが、実は、動きの少ない、面白みのない表現に実は憧れのようなものを持っていたりする(?)ように。

「C調男」を地で行くような植木等19272007)です。

懐かしの昭和 植木等「そうだそうですその通り」・・こんな歌が許されていた♪

が、後年、性格俳優に転じています。植木の実像は生真面目だったと聞きます。ということは、若い頃のC調は、無理に作ったキャラクターだったといえましょう。

同じことは、寅さんの渥美清19281996)にも通じます。

桜風氏の素顔は知りません。動画に写るままが彼の素顔だとすれば、地のままやっていることになり、他に換えようがなさそうですね。

桜風氏の動画に注文をつけさせてもらえば、一本あたりの動画が長すぎるので、もっと短くして欲しいです。長くても15分、できたら、5分から10分ぐらいがいいです。

長くするのには理由があるでしょう。再生時間が長いほど、収益が増えるからではありませんか? そうであれば、視聴者目線で動画を作ってはいないことになります。

損得を抜きにして、手軽にためになる動画を作ってもらえたら嬉しいです。

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