ジャニーズ事務所の創業者で、日本の芸能界で大きな力を持ったジャニー喜多川(1931~201)が生前、空気を吸うように犯した性犯罪にまつわる話は一向に収まる気配がありません。
つい最近は、シンガーソングライターの大御所、山下達郎(1953~)が、ジャニー喜多川を擁護する発言を自分のFM番組でし、物議を醸したばかりです。
ジャニー喜多川という人間は、男前の若い男性にしか性的興味を持てないのだろうということが世間で認知されていますが、どうやら、彼は小さな男の子にも同じように性的興味を持っていたことが明らかになりました。
このたび、勇気ある告発をしてくれたのは、俳優の服部吉次(本名は「良次」)です。
私はこの俳優を知りませんでしたが、昭和歌謡の大ヒットメーカーとして知られる作曲家、服部良一(1907~1993)の次男だそうです。ちなみに、吉次の兄は、作曲家の服部克久(1936~)です。
その吉次が、今月15日、子供の頃に喜多川から性的被害を受けていたことを語る記者会見を開き、それを朝日新聞が報じています。
喜多川の性犯罪を日本のマスメディアがようやく報じ始めたあとの今年5月16日の朝日新聞は、その特集を組み、ジャニーズ事務所の歴史のようなものを短くまとめています。
それを参考にすれば、喜多川は米国のロサンゼルス生まれだそうです。彼は、往年の大歌手で女優でもあった美空ひばり(1937~1989)の通訳をすることなどを通じて、ショービジネスの世界に入っていったそうです。
その彼は、日本で少年野球チームを作り、そこでコーチをしていますが、そのチームの名前が「ジャニーズ」で、同じ名前の芸能事務所を、東京オリンピックの2年前になる1962年に創業しています。
15日に記者会見を開いた服部氏が話すことは、それよりも前の話になります。今年78歳の服部氏が、小学校2年(8歳)のときのことですから、ちょうど70年前の1953年になり、当時、喜多川は22歳だったことになります。
日本を代表する作曲家だった服部良一は、笠置シヅ子(1914~1985)を連れて米国公演をしていますが、その際、喜多川に手伝ってもらったことで、服部家と縁ができたそうです。
そのことが、結果的には、吉次氏を生涯苦しめたであろう災いを招く結果となりました。
吉次氏が8歳のとき、喜多川が服部家に泊まることになります。そんなことは疑いもしなかったであろう両親は、吉次氏の部屋で一緒に眠るよう設定します。
両親から離れ、喜多川とふたりで眠ることになった吉次氏に、喜多川の魔の手が伸びる悲劇が始まりました。
喜多川は吉次氏の肩をマッサージし始め、その手が、下半身へ移動して性器を弄(まさぐ)り始めます。その後、喜多川が口で咥(くわ)え、「肛門性交されそうになった」ことまで朝日の記事に書かれています。
考えてもいなかったことをされ、吉次氏はどれほど恐ろしかったでしょう。
おそらく、両親にそれを話すことが憚(はばから)れたのでしょう。彼は歳の近い姉に相談しようとします。しかし、事を打ち明けた姉には、「やめて、そんな気持ち悪い話」と突き返されてしまいます。
以来、誰にも話すことができず、70年の年を重ねることになってしまいます。
喜多川の性行為は2年半ほど続き、100回ぐらいの被害を受けたそうです。ただ、当時は子供だったこともあり、「暴力を受けたという感じはしなかった」と記者会見では述べているようです。
喜多川の事件に絡めて、精神科医の和田秀樹氏(1960~)がネットの動画共有サイトで話す動画を本サイトで紹介しています。
その動画の中で和田氏は、男性が被害を受けるレイプ事件は女性の事件に比べて見過ごされがちですが、これが考えられている以上に深刻な心の傷となって長く残るそうです。
服部吉次氏が喜多川から被害を受けたのは8歳から10歳ぐらいにかけてで、まだ子供だったこともあり、当時は、「暴力を受けた」とは感じなかったのかもしれません。
しかし、自分にされた性行為は消えずに残り、歳を重ねるごとに、それは自分の中で黒い大きな影となり、吉次氏の精神を常に苦しめ続けるのかもしれません。
しかも、誰にも相談できないとなれば、それを解決する術がないのと一緒です。
本ページに埋め込んだ動画で、和田氏はジャニー喜多川に限らず、日本の芸能界には、似たような性的被害がいたるところで起きていると述べています。
たとえば、大手航空会社のキャンペーンガールに選ばれそうなモデルには、スポンサーの航空会社の宣伝部長のところへ行くようにいい、いわゆる「枕営業」をさせる、といったようなことです。
業界のことを知る和田氏は、そのような話を数限りなく知っているというような話です。
そんなことを日常的にしていながら、日本のマスメディアは、表向きは聖人君子のように振る舞い、性犯罪者には厳しい態度を見せたりします。
ジャニーズ事務所問題が起き、もうこれ以上は、今までのような野放し状態ではいられなくなります。
ジャニー喜多川の性犯罪は、はるか昔から噂され、ネットでは長いこと問題視していました。それがここへ来て、マスメディアも無視できなくなり、単なる噂として問題から逃げていた人も関心を持つようになっています。
本問題および、芸能界を巡る性犯罪に対するマスメディアの対応に、国民の鋭い眼が光っています。この監視の目が消えることはありません。
政界も他人ごとではありません。自分の立場を利用して、盆暮れに、若い女性タレントやモデルを要求する国会議員や地方議員も数限りなくいるはずです。
そのくせ、日頃はそうした性犯罪には毅然とした態度を見せたりするんですよね。
そんな猿芝居も今後は通用しなくなるでしょう。