一カ月半ほど前、本コーナーで、自分の中で始まった「Apple祭り」について書きました。
私はスマートフォンを使ったことはないですから、AppleのiPohneというのも、私には無縁なアイテムです。私がAppleとつながりがあることといえば「音楽」です。
そのきっかけは、Appleから出た画期的なデジタル・オーディオ・プレーヤー(DAP)のiPod classicを使うようになったことです。これが私には実に魅力的なアイテムです。
そのiPod classicがある日突然使えなくなりました。このDAPの製造・販売は終了しており、自分が使ってきたそれが使えなくなったら、その次はないと諦めていました。
それが一カ月半ほど前、再び使えることがわかり、狂喜したというわけです。
同じ時期に、Appleが提供する音楽のストリーミング・サービスであるApple Musicを一カ月無料で利用できる権利が転がり込みました。同時期に私に起きたそのふたつのことから、私の「Apple祭り」が始まったと本コーナーで書いたわけです。
Apple Musicは、私が所有する音楽をiPod classicに登録してあることもあって、私の音楽の趣味をよくわかってくれている印象が強いです。
それだから、お勧めの音楽をかけてくれるプレイリストを選んでおけば、あとはAppleに任せきりで、楽しい音楽の時間を過ごすことができました。
その無料サービスの期間が今月の途中で切れました。有料で利用を継続しようとも考えましたが、結局は見送りました。
それでも、自分でiPod classicに登録した音楽を聴くことは自由にできますので、Appleとの縁は切れていません。
そのiPod classicである音楽家の音楽を聴き、すっかり魅了されました。アストル・ピアソラ(1921~1992)という人ですが、ご存知ですか? もしかしたら、名前だけは聞いたことがあるという人もいる(?)でしょう。
私も名前を知っているぐらいの知識しかありませんでした。しかし、ピアソラのアルバムを一枚持っています。“The Rough Dancer And The Cyclical Night”というアルバムです。
これを買い求めたのは、ピアソラが亡くなって2年後の1994年7月13日です。私は購入したものに日付を書いておく習慣があり、ライナーノーツの片隅に残してあります。そのため、本アルバムの購入日もわかるというわけです。
私事になりますが、ピアソラが没した1992年は、日本の年号でいえば平成4年ですね。どうしてすぐにその年数が出てくるのかといえば、その年に私の母が亡くなっているからです。
というわけで、ピアソラが没して今年で31年となります。
ピアソラは南米のアルゼンチンで生まれていますが、アルバムのライナーノーツに書かれていることによれば、ピアソラが3歳の時、家族と共にニューヨークへ移住しています。
アルゼンチンの音楽といえばタンゴですが、ピアソラはニューヨークで過ごした少年時代に、生まれ故郷の音楽であるタンゴを意識するようになった(?)のでしょう。
彼の生涯の友となったバンドネオンに出会い、その演奏者となるとともに、革新的なタンゴの曲を作曲する作曲家となります。彼の興味はタンゴに留まらず、ニューヨークに住んだことなどでジャズにも感化され、ほかに、クラシック音楽へも関心の幅を広げています。
私は、ヒットチャートに登場するような音楽よりも、あまり知られていないような音楽を好みます。NHK-FMのリクエスト番組に「FM夕べのひととき」あるいは「FM夕べの広場」があり、それが「FMサンセットパーク」(1998~2011)に番組名を変える過程も、私はその番組宛にリクエストをしました。
その番組にリクエストした曲も、私の好みを反映したものが多かったです。
私が好む音楽の傾向のひとつに、ワールドミュージック的なものがあります。その意味では、ピアソラのこのアルバムは、その傾向が強いです。
ジャンルを融合したような楽曲が並んでいます。
このピアソラのアルバムをiPod classicで聴き、とてもいい気分になりました。
アルバムのライナーノーツによれば、このアルバムが録音されたのは1987年だそうです。アルバムの制作をしたのは、米国の「アメリカン・クラヴェ」というマイナーなレーベルで、このレーベル自体が、言葉の本質的な意味において、ワールドミュージックのはしりとなったレーベルだそうです。
このレーベルに残っていたピアソラのアルバムが、日本で1993年頃に発売になったというわけらしいです。私がこのアルバムを手に入れたのは、発売からそれほど経っていなかった頃だと記憶しています。
すべてピアソラが作曲した楽曲で、全部で14曲あり、組曲的な編成です。それでも、単体で聴いても、それぞれ楽しめる曲です。
2曲目の”Milonga For Three”がiPod classicのイヤホンから流れてきたとき、何ともいえない気分になりました。いつまでもこの調べに身を任せていたくなります。
演奏形式について、ライナーノーツに書かれていることをもとに書いておきます。
ピアソラが演奏するのはバンドネオンですが、クラシック音楽の勉強をしたため、彼と演奏活動を共にする演奏者によって、五重奏の編成を組んでいます。
この五重奏団を「キンテート」というそうです。
オーディオセットのスピーカーとiPod classicに接続したイヤホンで聴くのとでは、迫力の点で差があります。それでも、イヤホンで聴くことで楽しめることもあります。
アルバムの3曲目の”Street Tango”は、イヤホンでこそ楽しめる(?)かもしれません。ここまでに書いたように、ピアソラが作曲した楽曲をキンテートで演奏していますが、それぞれが受け持つ楽器の調べが、おもちゃ箱をひっくり返したように、次々に現れるのが確認できるからです。
それは、さまざまな街角で、気ままに音楽を流し、タンゴを踊る人々を表現している(?)かのようです。
しばらくは、ピアソラの音楽世界に浸ることをしましょう。