私にとりQは現代の8ミリカメラ

本コーナーの前回の更新で、ペンタックスのミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)、PENTAX Qを再び使い始めたことを書きました。

使わないのはもったいない、ぐらいの軽い気持ちで使い始めたのですが、これが実に優秀なカメラであることを、手に入れて7年目にして実感している次第です。

ミラーレスとはいいながら、撮像素子のサイズは、35ミリフルサイズはおろか、APS-Cサイズでもマイクロフォーサーズでもないことは、前回の更新で書いた通りです。

Qに搭載されている撮像素子は【1/2.3型】と呼ばれるもので、実際のサイズは【6.2×4.6ミリ】です。

私が昔趣味にしていた8ミリ映画のフィルムは8ミリの幅で、1コマのサイズは【5.36×4.01ミリ】と聞きますので、ほぼそれに匹敵するサイズです。

ミレーレスで動画を撮っているような人にしてみれば、そんなに小さな撮像素子でどんな表現ができるのか、と感がる人がいるかもしれません。

私が8ミリ映画を趣味にしていた時代、玄光社から出ていた月刊誌の『小型映画』を毎月購読して、貪(むさぼ)るように読んだものです。この『小型映画』が主査していたのだと思いますが、毎年、コンテストを催し、優秀賞や入賞を審査して決めました。

私も一度、東京の砂防会館で行われた授賞式とグランプリを受賞した作品などを上映する催しに出かけました。

会場の大きなスクリーンで各作品が上映されましたが、商業映画と変わらない映像で鑑賞できました。ちっぽけなサイズと思われている8ミリフィルムで撮影された作品がです。

私が見た年のコンテストでは、その当時、NHKでテレビ番組の美術デザインをしていた人がグランプリを受賞しました。その人は、8ミリ作品を作る大変な才人であり、有名でした。

その後、私はNHKの美術の仕事を半年ばかりしたことがあり、ある特別番組で、その人がデザインの仕事をし、スタジオでお会いしたことがあります。

私が一方的にその人のことを知っていて、あの人だ、と気がついただけで、近づいて話をすることもありませんでしたが。

というわけで、1/2.3型を軽く見る人がいるかもしれません。しかし、今はどうか知りませんが、テレビ局で使われるテレビカメラに搭載されている撮像素子のサイズが、この程度であると聞きます。

テレビスタジオで収録されたり、スタジオや各種催しもの、各種スポーツの生中継映像を見て、画質に物足りなさを感じることはないでしょう。

また、テレビ局で使われてきて、今も多く使われているビデオカムに搭載されている撮像素子のサイズも、同程度であると聞きます。

というわけで、1/2.3型の撮像素子で、何も不自由ない映像が撮れるというわけです。

逆にいえば、ミラーレスの動画として使われる35ミリフルサイズやAPS-C、マイクロフォーサーズは、必要以上にサイズが大きいということもできそうです。

また、Qの有効画素(ピクセル)数は約1240万画素です。これも、ミラーレスの高画素機に比べれば、数字の上では見劣りしますが、すでに引用したテレビ局で通常の番組作りに使われているカメラの画素数が800万画素台であることを知れば、これで十分と感じられるはずです。

私がQを再び使い始めて驚いているのは動画撮影においてです。

このカメラの場合は、ファイル形式がMPEG-4 AVC/H 264で、記録サイズは次の3通りです。

  • 1920×1080 16:9 30fps
  • 1280×720 16:9 30fps
  • 640×480 4:3 30fps

フルハイビジョンハイビジョン、スタンダード画質の3種類で、フレームレートは30fps(29.97pfs)というわけです。今はやりの4K解像度での撮影はできませんが、もともと私は4Kを必要としていませんので、これで十分です。

で、このQで撮影した動画が実にいいのです。私が使っているキヤノンのビデオカメラはiVIS HF M41で、こちらは撮像素子のサイズが若干小さい1/3型ですが、それよりも良い動画が撮れると感じています。

何より、撮ったままで、明度をほとんど調節しないままで、私好みの明度になっています。ちなみに私が好むのは、今流行りの淡い明度と色調ではなく、明るい部分から暗い部分、中間部分がしっかりのっている明度です。

とくに、暗部がしっかり沈んでいるような明度が好みです。

その私好みの明度をこのQは動画で見せてくれるのです。キヤノンのビデオカメラは、とてもこのようにはいきません。

今はリコーに吸収されたペンタックスですが、伝統的に、何か技術的な秘密を持っている(?)のでしょうか。であれば、ペンタックスが、デジタルの8ミリ映画カメラのようなものを作ったら面白いものができそうに考えたりします。

Qで動画を撮る時は、露出をオートとマニュアルから選べます。私はマニュアル露出で動画を撮影します。私の場合は、ISO感度(通常は、ISO125からISO6400)はオートにし、残るシャッター速度は、フレームレートの約2倍の1/60秒にし、レンズのF値はその時に応じて決めます。

使っているレンズについては前回の更新でも書いたように、“01 STANDARD PRIME”という単焦点レンズで、解放F値がF/1.9、焦点距離が8.5ミリです。

仮に35ミリフルサイズに換算すれば、私が35ミリフルサイズで好きな50ミリに極めて近い47ミリに相当することになります。

F値を開放近くにしても、大きくぼけることはありません。それが逆に使いやすく、開放近くのF値を気軽に使えます。

また、手振れ補正の性能もよく、手持ちで撮っても、映像がぶれて撮れるようなことが少なく感じます。

というわけで、このQで撮った動画が実にいいのです。撮って出しのままで、文句なく使え、それが実に私好みの映像です。

唯一、今困っていると考えるのは、私が使うQは中古で手に入れたからか、音声が録音できていません。

ただ、これも考えようです。

昔に使った8ミリ映画のカメラは、終盤に同時録音のできるカメラと、それに対応するフィルムが出るまでは、サイレント映画が大前提でした。

フィルムのカメラでテレビ番組が作られた時代は、映像と音声は別々に収録されました。

私がよく見るNHKのドキュメンタリー紀行番組「新日本紀行」にしても、取材のときに収録された音声を映像に重ねて制作されています。

たとえば、海や川が画面に映る場面では、カメラとは別に録音された現場の音が映像に重ねられています。そのため、映像と音はシンクロしていませんが、見ていて不満に感じることはありません。

8ミリカメラや昔にフィルムで再作された紀行番組のように、ミラーレスで音のない動画を撮ることも、それはそれで面白く感じます。

YouTuberのように、自分の顔を出して、しゃべる声を同時録音する人には、音が録れないカメラは使い物にならないでしょうが、私はその用途で動画を撮ることもないため、音が録れなくても問題にはなりません。

映像詩的な動画を作るのであれば、現場の音は重要ではありません。

カメラは小さくて軽く、本体のみでは約180グラムです。専用電池と記録用のSDカードをつけても、約200グラムに収まります。

私がこのQで使う単焦点レンズは37グラムですので、すべて合計しても237グラム程度です。

PENTAX Qに01 STANDARD PREIME

これであれば、どこかへ行くときもポケットに入れて持っていけます。しかも、このカメラとレンズで撮った映像が、どんなセットで撮るよりも、手軽で綺麗であれば、これ以上のことはないでしょう。

私のことですから、すぐにまた考え方が変わるかもしれませんが、変わるまでは、満足して使うことにします。

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