今はほとんど使っていないものが、あるとき、それが持つ魅力や能力を見直し、また使い始めることがあります。
私は昨日から、あるものを再び使い始め、それが持つ可能性を感じています。それは、キヤノンのデジタル一眼カメラです。
レンズ交換式の一眼カメラは、今はメーカーもミラーレスが中心で、それ以前の一眼レフカメラは開発や販売が停止しつつあります。
私が昔に購入して今も手元にあるカメラにキヤノンのEOS 30Dがあります。このカメラが発売されたのは16年前の2006年です。
今はソニーのミレーレス一眼カメラのα7 IIを使っていますが、ソニーのα7に乗り換える2014年3月までは、キヤノンのEOS 5Dを使っていました。
α7に乗り換えたあとも、EOS 5Dのために手に入れたレンズが2本ほど残っていました。そこで、それを使うため、2014年11月に、EOS 30Dを購入しています。
そのときに更新した本コーナーで確認すると、12,300円(10万円台ではないですよ。1万円台です)の中古として購入しています。
2006年に発売された一眼レフカメラですから、今のミラーレスと比較すると、見劣りします。ISO感度にしても、通常はISO1600までで、感度拡張でISO3200になるだけです。
有効画素(ピクセル)数は約820万画素です。
キヤノンの一眼レフカメラを使ったことがある人であれば、型番を見ただけで、そのカメラに搭載されている撮像素子のサイズがわかります。
キヤノンの場合は、一桁が35ミリフルサイズで、二桁はAPS-Cサイズです。ということで、私が8年前に中古で手に入れがEOS 30DはAPS-Cサイズの撮像素子が搭載されたカメラです。
私が初めて手に入れたデジタルの一眼レフカメラはキヤノンのEOS Kiss X2でしたが、そのカメラの撮像素子がAPS-Cサイズでした。
フィルムの一眼レフカメラを長年使っていた私は、APS-Cサイズに馴染めず、一年後にフルサイズのEOS 5Dに交換していますので、APS-Cサイズのカメラはそれ以来になります。
ここまで長々と、私がEOS 30Dを手に入れた話を書きました。その後は、私もミレーレスに移り、EOS 30Dを使う機会はめったにありませんでした。
そのEOS 30Dを急に使う気になりました。きっかけは、次の動画をネットの動画共有サイトYouTubeで見たことです。
カメラ好きの人であれば、目から鱗が落ちるような内容です。私も鱗が落ちまくりとなりました。
タイトルにある「感度分の16」というのは、どんなISO感度であっても、シャッター速度をISO感度を同じにし、レンズのF値をf/16まで絞って撮影すると、晴れた日の空を最適な露出で撮影できる、という解説です。
この動画を配信するのは、カメラマンで写真家の渡部さとる氏(1961~)のYouTubeチャンネルである”2B Channel”です。
渡部氏は日大芸術学部を卒業したあと、日刊スポーツでカメラマンとして働いた経歴を持つようです。今は写真家として活動し、渡部氏が2003年から続けている写真ワークショップの名称”2B”をそのままYouTubeチャンネルでも使っているそうです。
今のデジタルカメラは、露出をオート任せでもある程度望ましい写真が撮影できます。しかし、露出をマニュアルで扱えるようになると、写真撮影が断然楽しくなります。
上で紹介した動画の話に驚き、渡部氏が露出について話す次の動画にもとても教えられることが語られています。
本動画は2年前に配信されたもののようですが、本ページではじめに紹介した動画のあとに、本動画の配信をされたようです。
フィルムカメラで仕事を始められたため、渡部氏の場合は、ISO400を基準にして露出を決めることが多いようです。それを基に、渡部氏は窓辺に光が差し込むシチュエーションのとき、次のような設定で写真を撮るそうです。
渡部氏の基本ISO感度はISO400ですので、以下はそれを省いて書きます。
- シャッター速度:1/60sec
- F値:f/5.6
この設定で撮影すると、失敗がないばかりでなく、魅力的な写真に仕上がるそうです。窓辺から射し込む光のラインを、渡部氏は17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメール(1632~1675)になぞらえ、「フェルメールライン」と名づけています。
本動画の最後の方で、渡部氏が露出を決める時に実際に使っている四つのパターンがあると話しています。そのパターンについて語るのが次の動画です。
本動画は非常にためになる内容です。これを見て、私は、8年前に手に入れ、今は使う機会がなかったキヤノンの一眼レフカメラのEOS 30Dを再び使いたい気になり、実際に使い始め、写真の面白さに目覚めたのです。
昔、露出について考えていた渡部氏は、新聞社でいわれていた「晴れたらセンパチ」を思い出します。「センパチ」というのはシャッター速度とF値のことです。
「セン」は1/1000秒で、「パチ」はf/8.0で、ISO感度400のフィルムのとき、この露出で晴れた日に撮れば間違いない写真が撮れる、という意味です。
そのほかに、誰かがいっていた、「感度分の16」も思い出します。これについてはすでに書きました。ISO400を選んだら、シャッター速度を1/400にし、F値を16にするということです。
これは、晴れた日の空を綺麗に撮る時の露出です。その条件で、生徒さん(?)の女性と渡部氏が実際に写真を撮っている様子の動画で、渡部氏の露出の話に興味を持ちました。
この露出で撮られた晴れた空は、カラーで撮影すれば、深みが感じられる色合いになります。これは、世界中のどこへ行っても、応用できます。
これをアレンジして、渡部氏は晴れて陽が当たっている被写体は、1/250secとf/16の組み合わせで撮るそうです。これが4つのパターンのひとつ目です。
私がしばらくぶりに使い出したEOS 30Dは、まだフィルムの一眼レフカメラを引きずるところがあります。メーカーでデジタル一眼を設計する技術者は、最後までISO感度をオートにすることには抵抗した、という話を聞いたことがあります。
その流れがEOS 30Dに残り、ISOは自分で設定するようになっており、ISO感度オートではありません。しかも、感度は通常の使い方であればISO1600までです。
渡部氏の話を聞き、私も30Dで撮るときはISO400に固定しようと考えました。
4パターンのふたつ目は「日陰の露出」です。陽が当たらないところは、F値を3段下げる(明るくする)ということです。露出における「段」については、少し前にエレクトロニックフラッシュ(ストロボ)について書いたときに書きました。
露出で「3段下げる」ということは、1段が1/2(1段明るくするなら2倍)ですから、レンズから入る光の量を1/2(1段)→1/4(2段)→1/8(3段)とレンズに入る光量を3段分多くするということです。
これは、ISO感度とシャッター速度でもできますが、ここではISO感度はISO400、シャッター速度は1/250にしたままですから、F値で3段分下げます。
晴れた状態のF値がf/16ですので、f/11→ f/8.0→ f/5.6ですから、3段下のF値はf/5.6です。というわけで、日陰は1/250とf/5.6で撮影する、というのがふたつ目のパターンとなります。
渡部氏いわく、面白いことに、晴れた日だけでなく、曇った日の日陰もこの設定で撮影できるそうです。すぐにでも試してみたくなりますね。
これに関連して、動画でも紹介した、陽が射しこむ窓辺は、1/60とf/5.6が非常に使える露出の組み合わせになります。これがパターンの三つ目となります。
この1/60とf/5.6は、渡部氏にとっては「マジックナンバー」といっていいものだそうで、この組み合わせで撮って上手くいったことは数えきれないそうです。
写真撮影を楽しむ人は知っていると思いますが、「マジックアワー」といわれる時間帯があります。これは、太陽が昇る瞬間と沈む瞬間に現れる光のマジックです。
その時間帯に使うのが四つ目の露出パターンです。それが次の設定です。
- シャッター速度:1/30sec
- F値:f/2.8
面白いことに、この設定は、家庭の食卓を撮る時にもそのまま応用できるそうです。渡辺氏の作例を見ますと、食卓だけでなく、裸電球で照らされたような環境であれば、この設定で撮って間違いなさそうです。
四つのパターンにおまけで、次の設定も披露してくれています。これは、晴天のときの設定の応用版といえましょう。
- シャッター速度:1/250sec
- F値:f/11
晴天のときよりF値を1段した、つまり、光量を1/2にしているわけですが、これは、晴れた空に雲がかかったようなときに有効の露出だそうです。
この設定は、雪の風景を撮影するときも使えるそうです。これから雪の多い地方に行かれる人や、雪の多い地方にお住いの人は、ぜひこの設定で雪景色を撮影してみてください。
とっても綺麗に撮影できるそうですから。
雪景色を露出オートで撮影すると、うまく撮影できないことは昔からいわれることです。雪の白さにカメラ内蔵の反射式露出計が引っ張られ、白い雪を反射率18%グレーにしようとするからです。
こんな条件こそ、マニュアル露出の出番です。しかも、上のような設定で綺麗に撮影できるのですから、使わない手はありませんね。
私はデジタル一眼レフカメラを使い始めたときから、必ずRAW画像で撮るようにしてきました。撮ったあとの「現像」作業で、露出を多少変更する(多くの場合は露出アンダーに)ことがあるからです。
また、私はほとんどの写真をカラーで撮影してきました。
そんな私ではありますが、今後、EOS 30Dでは、RAWではなくJPEGで撮影することにします。撮った写真が仕上がりの写真で、ポジフィルム(リバーサルフィルム)で撮影するような感覚です。
そしてもうひとつ、モノクロームで撮影しようということです。
心変わりの心変わりで、この手法では、やっぱりモノクロームがいいように感じました。
この更新をしたあとの夕暮れ近い時間、その時はカラーで撮影しました。それを撮影後、RAW画像だったため、「現像」し、アンダー気味の画像が多かったため、露出を少し明るくしたりしました。
その過程で、カラーで撮ったものをモノクロームにしてみると、アンダー露出だと思った写真が、モノクロームでは修正しなくても見られるように感じました。
たとえば、下の画像です。これが、元のカラー画像です。

明らかなアンダーです。このときは、ISO400、シャッター速度が1/250秒、F値がf/16です。
全体的にはアンダー露出ですが、光の当たっている部分は適正露出です。見た目を適正露出にしたいのであれば、光の当たっている部分に近づいて大きく写せばいいだけです。
このあたりの感覚は、ストロボで撮影するときに通じます。
カラーの画像を「現像」でモノクロームにすると、同じ写真が次のように見えます。

私の自己判断ですが、これはこれで悪くないように感じます。他にカラーで撮った画像をモノクロームにしてみると、露出を修正しなくても、そのまま見られるように感じます。
ということで、EOS 30Dで撮る時は、モノクロームで撮ることをしばらく続けて見ることにします。
早速、窓辺にいた愛猫の撮影してみました。我が家の愛猫・にゃんこおチビちゃんファミリーの”お母ちゃん”こと元祖おチビちゃん(=^ω^=)です。

このときは、ISO400固定で、シャッター速度は1/30sec、F値はf/2.8で撮影しています。
画素数が少ないため、PCへのファイルの転送はあっという間に終わってしまいます。
久しぶりに使ってみて、EOS 30Dに惚れ直しました。露出決定の難しさから解放されれば、一眼レフカメラは良い点がいくつもあります。
まず、電池の保(も)ちがミラーレスとは比較にならないほどです。久しぶりに使ったEOS 30Dで、いつ充電したのかも忘れてしましたが、充電池は減っておれず、100%に近いです。
もうひとつ、EOS 30Dには、ストロボのためのシンクロ接点がついています。今のミラーレスでこの設定を持つカメラはほとんどないと思います。

ここに外部ストロボを専用のケーブルで接続することができます。
シンクロ接点があると、大型のストロボを使うことができます。もっとも、今は、ワイヤレスで発光させることができるので、必要ないのかもしれませんが。
露出のパターンを持って撮影すれば、スチルの撮影はEOS 30Dだけで十分な気になります。動画を撮影するために、α7 IIは手放せませんが。
目下のところは、EOS 30Dに、EOS 5Dのために中古で手に入れたレンズ、シグマの50ミリF2.5マクロを使っています。このレンズは、解放F値がf/2.8と明るいレンズだからです。

APS-Cサイズのカメラに35ミリフルサイズのレンズを使うことになりますが、その分は、被写体から後ろに下がることで、画角の狭さを補おうと思います。
何より、このレンズはマクロレンズですので、どこまでも被写体に近づいて撮影することができて表現の幅が広がります。
というわけで、思いがけず、写真撮影における露出の奥義(おうぎ)を手に入れることができたようで、写真撮影の愉しみが大きく広がった気分です。
そのきっかけを提供してくれた渡部さとる氏には感謝の気持ちしかありません。