ストロボで光を操りたい

私は、様々なものに興味を持っては、しばらくはそのことを集中的にする傾向を持ちます。

私が昨日、突然のように興味を持ったのは、写真を撮影するときに、エレクトロニックフラッシュ(ストロボ)を使って光を操るにはどうするか、といったことです。

デジタル技術で写真を撮るようになって最も変わったことのひとつは、ISO感度が、以前なら考えられないほどの超高感度に変わったことです。

私も趣味として、フィルムの一眼レフを使っていました。私が最も好きで、そればかり使ったコダックのポジフィルム(リバーサルフィルム)のコダクローム64は、商品名にあるように、ISO感度はISO64でした。

コダックのポジフィルム「コダクローム64」

それが、デジタルカメラは、比較にならないほどの高感度になり、私が使うソニーのミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)のα7 IIでも、ISO25600まで使えるようになっています。

これだけの高感度になれば、どんなに暗い環境でも撮れないことはなく、ストロボを日常的に使う人は多くない(?)のではないか、と思わないでもありません。

私の撮影被写体は昔からほとんど変わらず、身の周りのものが私の主要被写体です。庭の風景を撮るときはストロボを使おうと思うことは少ないですが、愛猫は、ときに、ストロボで撮影したくなります。

特に、陽が射す窓辺にいるようなときは、手前の猫が陰になりやすいため、どんなにISO感度を高感度にして使えるカメラであっても、ストロボの出番です。

私が日常的に使うストロボは、何十年も前に買ったストロボです。それは、ナショナル製(パナソニック ライティングデバイス株式会社)の”PE-320S”です。このストロボは、カメラのクイックシューにつけて使うクリップオンタイプです。

ナショナル製ストロボ PE-320S

ほかに、同じメーカーの”PE-381SG”という、グリップがついたやや大型のストロボもほぼ同時期に購入しましたが、320Sに比べて出番が少ないです。

ナショナル製ストロボ PE-381SG

私は写真撮影の勉強をしたことがなく、自分ができることをしているだけです。ですので、ストロボを使いながら、ほとんどがオートでした。

ただ、ストロボ光を被写体に直射すると、影が強く出てしまうため、斜め45度程度方向に発光させるバウンス撮影をしています。被写体の猫にしても、ストロボ光をまともにあてられたら、眼が眩(くら)んでしまう(?)でしょうからね。

ついでまでに、治療を受けたことはありませんが、私は自分が、軽度の「てんかん」症状を起こすことを自覚しています。一年に数度起きる症状ですが、その原因は、光が眼に入ったときである、と自分では考えています。

そんな傾向を持つため、私自身は、ストロボで写真を撮られるようなことがあったら、その場から逃げ出したくなるでしょう。てんかん症状を起こさない猫であっても、まぶしい光を浴びるのは好まないだろうと思います。本人(本猫?)に訊いてみたことはないですが。

そんな風に、私はお手軽なストロボ撮影をしていたわけですが、マニュアルで調光して撮影してみようか、と急に考えました。ネットんの動画共有サイトのYouTubeで、参考になりそうな動画を見ました。

私がすぐに思い当ったのは、ご自身で「光の魔術師」といっていらっしゃる写真家のIlko Allexandroff(イルコ)氏です。以前は、彼のYouTubeチャンネルを登録し、彼が動画で説明してくれることをよく見ていました。

このところは彼の動画を見ることがなくなっていましたが、久しぶりに見ました。そして、また、彼のチャンネルを登録しました。

昨日見た彼の動画は次の動画です。

ストロボ使うときの基本・シャッタースピードはストロボには関係ない!SSは環境光をコントロールする / 絞りと感度はストロボの露出をコントロールする! 【イルコ・スタイル#100】

本動画は非常に参考になりますね。これを見ただけで、自分もすぐに、ストロボを使って光を自由自在に操れるような気になります。実際には、操れるようになるには、長い道のりとなりそうですけれど。

本動画のポイントは、ストロボ撮影においては、「カメラのシャッター速度は関係ない」ということです。この理屈がわかるだけで、ストロボ撮影における最低限の知識に気がつけることができます。

動画を見ていて、あることに気がつきました。それは、マイクで音を録音することと、考え方が近いことです。

イルコ氏は、ストロボをオートで使うことはありません。必ず、マニュアルで光量を調節しています。

私のストロボ、PE-320Sでも、発光量を以下のように調節できます。

FULL1/21/41/81/16

写真撮影を楽しんでいる人であれば、この数字を見てすぐ思い当ることがあるでしょう。露出決定のための段(光量を2倍、あるいは1/2)です。1/2は1段、1/4は2段、1/8は3段、1/16は4段、ストロボの光量で、FULLより発光量を少なくできるということです。

カメラの露出は、レンズのF値シャッター速度、ISO感度で調節をします。

シャッター速度は、1/10sec、1/20sec、1/40sec(1/50sec)、1/80sec(1/100sec)、1/200sec、1/400sec、1/800sec、1/1600sec、1/3200secというように、倍々で段が変化します。

ISO感度も同じように、ISO10、20、40(50)、80(100)、200、400、800、1600、3200と変化します。

レンズのF値だけは、倍々ではなく、f/1.4の次はf/2.8ではなく、f/2.0です。そのあとも、2.8、4.0、5.6、8.0、11、16というように変化します。

どの設定を変えても、レンズから入る光量を1段ずつ変化させるのは同じです。

それと同じように、ストロボの光量をマニュアルで設定することで、カメラで設定することがストロボで出来ることになる理屈です。

私が、ストロボとマイクに共通点を感じたのは、カメラに関係なく、ストロボ単体で、発光量が定まっていることです。

マイクの場合は、ストロボと違い、マイクから音が出るわけではなく、音をマイクが拾う側です。それであっても、マイクと収録する音の関係は、ストロボの発光を受ける被写体との関係が同じです。

マイクで拾える音の大きさは、音を発するものに近づくほど大きくなり、逆に、離れるほど小さくなります。

ストロボも同じです。被写体の近くで発光させれば明るくなり、離れれば暗くなります。

マニュアルでストロボを発光させる場合は、カメラの設定とは連携せず、ストロボ単体で設定された光量を発光します。

この理屈がわかれば、被写体から最適な位置にストロボをセットすれば、常に適切な光量が被写体に当たるということです。

その上で、シャッター速度を変えることで、ストロボ光が当たった被写体の背景の明るさを、明るくしたり、暗くしたり、コントロールできるということです。

その場合は、カメラとストロボを離して使う必要があります。私の環境のように、カメラのクイックシューにストロボをつけている場合は、カメラのクイックシューにマイクをつけて動画を撮影するようなものです。

撮影する位置がマイクの位置になり、ストロボの位置にならざるを得ないということです。

こんな使い方であっても、ストロボの原理がわかれば、オートで使うよりも、光が操れる理屈になるわけですが、自由に操れるようになるには、何度もテストが必要となるでしょう。

幸いなことに、デジタルで撮影できるのですから、フィルムの消費に気を遣うようなことからは解放され、気の済むまで何度もテスト撮影ができます。

ストロボの撮影で気をつけることは、ハイスピードシンクロに対応したストロボでなく、通常のストロボの場合は、シャッター速度を1/250sec以上では使えないことです。

編集なしで、昼間を真っ暗にする ストロボの使い方 / HSSを使った ドラマチックなポートレート撮影 / 【イルコ・スタイル#030】/ Make the day look like night

スチルカメラのシャッター速度については、本コーナーで少し前に取り上げました。シャッター速度がどんなに高速度になっても、1/250sec以上の速さでシャッターが作動することはないことです。

1/250sec以上は、先幕シャッターにスリットを作り、シャッター幕を速く作動させるのと同じ効果を得ています。スリットの幅が狭くなるほど、一回のシャッターでレンズから入る光量が少なくなり、高速度で撮影したのと同等の光量にコントロールできるというわけです。

この仕組みが、ストロボ撮影では影響してしまいます。実際に、1/250secよりも速い速度で撮影してみれば、撮影した画像の一部が黒くなっているのが確認できます。

ストロボは、暗い被写体を明るくするばかりに使うものではありません。

晴れた日中に外でポートレイト撮影するときも、ストロボがよく使われます。

基本的に、人物を撮影するとき、顔に太陽光が正面からあたる順光では撮影しません。どんなに美しい人であっても、美しく撮影できないからです。

眼に太陽の強い光が入れば、眼を細めざるを得ません。また、顔の表面には凹凸があるものであり、眼の下や鼻のに汚い影が生じるなどしてしまいます。

そのため、被写体の後ろに太陽が来る、逆光や反逆光が好まれます。ただ、顔がどうしても陰になるため、それを補うために、ストロボ光を弱くあてるか、レフ版を使うかをします。

それがポートレイトであれば、レンズのF値はなるべく小さくし、背景をぼかして撮影したくなります。

ストロボを使わなければ、シャッター速度を速くすることで、F値を小さく保てます。しかし、上の方で書いたように、ハイスピードシンクロに対応したストロボでなければ、1/250sec以上には速くできません。

そこで必要となるのが、動画撮影でもよくつかわれるNDフィルターです。

このNDフィルターは、可変式のほかに、減光量に準じた単体のNDフィルターがあります。今回動画を紹介させていただいた写真家のイルコ氏は、ND8とND16をよく利用されているようです。

ストロボのマニュアル調光のところでも書きましたが、ND8は3段分、ND16は4段分の減光ができるフィルターです。

そのフィルターを使うことで、被写体以外の外光の量を減らし、レンズのF値をより小さい状態に保てるというわけです。

光の魔術師のイルコ氏の動画を見ていて感心したのは、YouTuberとしての動画を撮るときも、背景と自分の光の量を計算し、自分の狙い通りの光の魔術を作りだしていることです。

カメラの露出のステップ / 絞り・シャッタースピード・感度・ストロボのパワーなど、1段露出が変わるとどうなるか / 一眼レフ初心者にでもすぐ使えるカメラの入門知識【イルコ・スタイル#084】

それを見ながら、動画におけるシャッター速度は、低速だけにこだわらなくてもいいのでは? と自分の考えが変わりました。

私は、動画の撮影のときは、1秒間に24フレーム撮影する24fpsで撮影しますが、その際のシャッター速度は、約2倍の速さの1/50secにするようにしてます。

ただ、Log撮影の場合は、どんなに晴れて明るい光の状態でも、ISO感度が、私のα7 IIの場合は、ISO1600始まりになってしまいます。その感度で1/50sec縛りというのは「罰ゲーム」のようなもの(?)です。

しかし、シャッター速度をある程度自由に使えば、撮影が一挙に楽になります。その上で、光の強い状態のときは、ND16のフィルターを使えば、フィルターだけで、露出がマイナス4段スタートとなります。

ISO感度だけでいえば、ISO1600がマイナス4段であればISO100から始められるのと同じです。それに加えて、シャッター速度でも露出の調節ができたら、レンズのF値決定がかなり自由になります。

私の場合は、スチルも動画も、身の周りのものばかりが被写体ですから、自己満足でストロボ写真もLog撮影もするだけですが、それでも、表現の幅が広がれば、愉しみも広がるだろうと思います。

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