村上春樹(1949~)の長編小説『騎士団長殺し』(2017)については、読み終わったあとに本コーナーで取り上げました。
この作品には主人公の「私」に接近する免色渉(めんしき・わたる)という謎めいた男が登場します。
免色は、「私」が仮住まいする家の、谷を挟んだ向かい側にある大きな家にひとりで住んでいる設定です。
この男の外見で特徴的なのは、髪が、いつ見ても櫛目がとおった真っ白であることです。この髪だけで、その男が謎めいたものを感じさせます。
もっともこれは小説で描かれているからで、現実の世界にも白髪の男性はいます。それらの人が謎めいていることはありません。
小説は、映像作品と違い、読み手が自分の頭の中で、自分だけの映像にすることができます。
私は『騎士団長殺し』に出てくる免色に、あるときから、実在する人物の姿を重ねることをしました。