二度目の大阪万博の危うい行方

「柳の下にいつも泥鰌はいない」という表現があります。

ここに出てくる「泥鰌」は「どじょう」と読む淡水魚の一種ですが、若い人はどんな生き物か、見たことがなく、知らない人もいるでしょう。

どじょっこふなっこ(♬春になればすがこもとけて~)byひまわり🌻歌詞付き|童謡|Dojokko funakko|Loose and Funa

ともあれ、その泥鰌が柳の下にいたからといって、いつでもそこへ行けば泥鰌がいる保証はない、という意味になります。それが翻って、一度成功したからといって、次も同じように成功を収められるとは限らない、というような戒めです。

現実世界では、これが当てはまることが多いです。どんなことでも、二度目は一度目ほどには成功しないことが多いです。

そのことは、「東京五輪」で実感した人が多いでしょう。1964年の大会は、アジアで初の大会ということや、日本が敗戦から奇跡的に立ち直ったことの象徴にもなり、未だに語り継がれる大会となりました。

三波春夫「東京五輪音頭」 1963

その一度目の東京五輪にあやかった二度目の東京五輪がどのような結果に終わったかは、説明するまでもありませんね。惨憺(さんたん)たるものとなり、今も不正の捜査が続いているありさまです。

同じような顛末になりかねないのが「大阪万博」(日本万国博覧会)です。

一度目は1970年に開かれ、子細に見れば反省すべき点もあるのかもしれませんが、大局的には大成功といっていいでしょう。

実は、この万博には私も行っています。私には8歳上の姉がいて(2000年10月に死去)、姉弟のふたりで行きました。宿がとれず、京都駅から歩いて行ける場所に住む家に厄介になり、一週間ほど、そこから大阪の吹田まで電車で通いました。

万博会場は、どこも人、人、人で、人気のパビリオンに入場するため、長い行列に並んだのを記憶しています。アメリカ館では、目玉の「月の石」(今になってみれば本物だった保証はありません〔?〕が)を見ました。

万博会場周辺を結ぶモノレールに乗り、動く歩道を利用したのも憶えています。夏に行きましたので暑かったはずですが、暑さの記憶はありません。それ以上に、万博の思い出が強いといえましょう。

「世界の国からこんにちは」
8ミリ記録映画”EXPO ’70 in JAPAN”の外箱

万博ではほかに、日本がバブル景気だった1989年横浜みなとみらい21地区で開かれた「横浜博覧会」へも行きました。

行くつもりはなかったのですが、博覧会へ行き、イラストを描いて欲しいという依頼があり、行くことになったのです。

横浜美術館で行われていた企画展を見た記憶があります。

二度目になる大阪・関西万博が二年後の2025年に開催されますが、本当に開催に漕ぎつけることができるか、不安視され始めています

昨日の朝日新聞には、「『自費建設、固執しない』万博パビリオンで大阪知事」の見出しで、日本以外の国や地域のパビリオンの建設を巡る問題を報じています。

現時点で、この万博に参加が見込まれている国や地域が建てるパビリオンの建設申請が一件もないというのですから、このままでは開催が危ぶまれます。万博へ行ってみたら、日本舘や日本の企業のパビリオンばかりで、外国のパビリオンはひとつもなかった、では「万国博覧会」と銘打つわけにはいきません。

記事を読んで初めて知りましたが、パビリオンの出展は次の三つのタイプがあるそうです。

タイプAが万博の目玉になる施設ですが、それに出展することが見込まれる国・地域が56ありながら、今月26日になっても、大阪市への建設許可申請がゼロだそうです。

1970年の大阪万博の際、世界各国や地域のパビリオンをどのように建設したのかは知りません。当然のことながら、出展する国・地域が自費で建設したように考えています。

この事態に対し、万博協会副会長も務める吉村洋文大阪府知事(1975~)が、会見の述べたことが次のように紹介されています。

理想論とか根性論だけじゃなくて、あるべき工期のスタイルを分析すべきだ。(中略)タイプAで絶対しなければならないとなると、間に合わないところが出てくる。

タイプBでもいいということになったら、出展する国・地域の代わりに、日本の万博協会が建て、それをそれぞれの国・地域に引き渡すことになります。

タイプAは、建設会社も自国や自分たちの地域から大阪へ連れてきて、用意した建材で建設する(?)ということでしょうか。

それがタイプBは、日本の建設会社が、施工を請け負うことになりましょうか。まさか、建設にかかる建材費や工事の費用を全額、日本の万博協会が持つなんて馬鹿げたことはないでしょうが、もしそうなのであれば、そんなことまでして、万博を開く意味がありません。

パビリオンの建設を請け負う日本の建設会社を代表する日本建設業連合会宮本洋一会長(1947~)が、26日、朝日新聞のインタビューに応じ、述べたことが記事にあります。

タイプAをしっかりできないような万博は、海外からお客さんも来なくなってしまうし、意味がない。そうならないようにしなければいけない。

さらに、建設の先行きを危ぶんだため、昨年9月に、建設がスムーズに進むよう、万博協会が外国との間に入って調整してくれるよう要望していたそうです。

しかし、不安が現実になり、次のように心境を吐露しています

みんなが心配だ心配だということが現実になってきて、盛り上がりに欠ける。ものすごい残念なところだ。(工事が短期間に集中するなど)開会前にはしっちゃかめっちゃかになる気がする。

これに関連して、本日の朝日新聞には、「万博工事『残業規制外に』 建設遅れ、協会側要望」の見出しで報じる機器が載っています。

パビリオン建設が遅れることを意識し始めた万博協会が、2019年から始まった時間外労働の上限規制を、27日、万博のパビリオン建設には適用しないよう、政府に要望したことを報じる内容です。

時間外労働は、労使で協定を結んだ場合は、年360時間、特別条項をつけた場合は年720時間以内に制限するとしているようです。

平たくいえば、万博の開催に間に合わせるよう、パビリオンの建設においては労働時間の上限を適用させず、長時間働かせろ、といっているのと同じです。

工事に当たることになる建設会社を代表して日本建設業連合会の宮本会長は、万博協会の要望を次のように批判しています。

残業時間はきちっと定められた法律の決まりの中でおさまるようにしていたきたい。(万博を適用除外する)そういう安易な考え方になってほしくない。

吉村大阪府知知事が大阪・関西万博の開催を打ち上げた真意はわかりません。確かな理念や見通しがないまま、何とかなる。ならなければ「根性論」で何とかしてみせるといった感じで見切り発車してしまったのであれば、その強烈なしっぺ返しを受けている、と受け止めるべきでしょう。

吉村知事は「根性論」を否定しつつ、パビリオン建設は根性論で乗り切ってくれ、と要望しているわけですよね。開催前を待たずして、すでに、「しっちゃかめっちゃか」の状況になっているように部外者の眼には映ります。

吉村知事は日本維新の会の共同代表でもあります。ということは、一連の動きは日本維新の会の考え方を反映したものです。

この政党に日本の舵取りを任せたら、同じように、しっちゃかめっちゃかになりそうで怖いです。

最後には、敵には竹槍で立ち向かえ、と根性論を国民に押し付けたりして。

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