富士フイルムのカメラ界隈で「そんなこと」が起きていたことを私はまったく知りませんでした。どんなことが起きていたかは、ネットの動画共有サイトYouTubeに、それについて取り上げた動画がいくつも上がっています。
たとえば、下に埋め込んだ動画がそのひとつです。
私はフィルムカメラの時代からカメラに接しています。昔から、カメラを趣味にするとお金がかかることが知られています。
フィルムの一眼レフカメラであれば、交換レンズを別に揃えなければなりません。それらを最低限揃えても、撮影するたびにフィルムが必要になります。また、撮影が終わったらフィルムの現像代がかかります。
その点、デジタルカメラが主流の今は、どれだけの枚数を撮影しても、フィルムを使わないので、現像代はほぼゼロです。
こんな風に、デジタルの時代に変わり、カメラ好きの人間はずいぶん助かっていると考えるかもしれません。写真を楽しむ人の懐が助かる分、カメラやレンズを製造販売する企業の利益を上げるのが難しくなりました。
それでは企業としてもやっていけないでしょうから、対抗策を講じます。
今から十年以上前になりましょうか。当時の日本がデフレ経済(デフレーション)にあったこともあり、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)の価格が低迷した時期があったように記憶します。
そのことに業を煮やしたカメラメーカーは、格安のコンデジに見切りをつけ、それに代わって、付加価値をつけた高級コンデジを販売の主流にしました。
同じことがレンズ交換式のデジタルカメラでも起きています。このところ、どのメーカーから発売されるカメラでも、ボディだけで二十万を超えるのがひとつの相場になりつつあります。
こうなりますと、資金が潤沢にある人は別にして、そうでない人は、簡単に購入するのが難しくなります。
そんな中にあり、富士フイルムのカメラが、ここ一年ほどですか、品切れで、欲しくてもなかなか買うことができない状態が続いていると聞きます。
製品を製造版倍する企業の製品が店頭で品切れの状態にあるというのは、その企業が製品管理をできていないことになるので、恥ずべきことです。
富士フイルムのカメラが欲しくても変えない人は、販売店や富士フイルムに直接、そのあたりの苦情をいったりするでしょう。そうした店舗や人からの声は富士フイルムに届かないはずがありません。
その品薄状態が、部品が揃わないなどの理由によって予期せずに起きたのではなく、富士フイルム本社の考えによって、意図的に起こされているらしいことが明らかになり、そのことへの不満が渦巻いているようです。
それを裏付けるように、富士フイルムが投資家向けに出すIR情報で、社長自らがそれを目指しているらしいことを述べています。
物の値段を上げる最も手っ取り早い方法は希少性を高めることです。ゴールドやダイアモンドの価格が高いのは、そのものの絶対量が極めて少ないからです。
同じ理屈で、富士フイルムは工場の生産ラインを抑えて製造されるカメラの絶対量を少なくし、市場に流通するカメラの台数を制限しているのでしょう。
市場に出回るカメラの台数が減り、それでもそのカメラを欲しい人は、値段が高くても購入しようとします。それが連鎖することで、同じ製品の価格は上昇します。
富士フイルムの社長は、ドイツのカメラメーカーのライカを目指し、カメラやレンズの価格を高く維持したいとIR情報で述べています。
ライカといえば、ここ最近、YouTubeでカメラ系の動画を上げる人の主だった人が、ライカのカメラに群がる傾向があります。彼らの一部はグループを組んで、ライカのカメラを自分たちの動画で接触的に取り上げ、自慢話を恥ずかしげもなくしています。
上に埋め込んだ動画に登場するKAZUYA(1988~)という人は、カルト右翼界隈の人間ではありませんか。節操がない人ですね。
彼はきっと、カメラを取り上げれば再生回数が稼げそうな臭いを嗅ぎつけ、近寄って来たのでしょう。これまでカメラ、しかも、ライカには興味がなかったはずなのに。
彼を仲間に引き入れるほかのYouTuberもどうかしています。どんな政治スタンスでも彼らには関係ないんでしょうね。
ライカのカメラやレンズは確かに写りはいいでしょうが、ほかのメーカーのカメラやレンズと、値段ほどの違いがあるのかといえば、それほどの違いはないように個人的には想像してしまいます。
私はライカのカメラやレンズを使ったことがないので、それは想像でしかいえません。
ライカのコンデジにLEICA Q3があります。ネットの価格.comでこのデジカメを検索すると、最も安いネット店舗でも、現時点で、91万9600円の値がついています。
このデジカメを実際に手にしたYouTuberが動画でその写り具合を語ったりしていますが、それらの人の多くは、その写りを絶賛しているでしょう。
パナソニックはライカと提携しており、パナソニックのミラーレス一眼カメラ用の交換レンズとしてライカの名を冠したレンズもラインナップに加えています。
しかし、パナソニック製のライカは、他のレンズと同等の、特別高くはない価格です。
ともあれ、このように、ライカがパナソニックと提携している関係で、ライカ本家のコンデジ、LEICA Q3はパナソニックが製造を受け持ったOEMだといわれています。
同等の性能のカメラをパナソニックが製造して販売したら、とても90万円の価格設定はできません。
それとほぼ同じカメラがライカで製造されたことにされただけで、その非常に高価な価格でも欲しい人は買います。そして、手に取ったライカのコンデジの写りの良さに惚れ惚れとするということが起きます。
これは、ある種の「魔法」にかかっているようなものでしょう。
裏事情のことはわかりませんが、100万程度の価格で販売されるライカのレンズも、製造しているのは日本国内で、実質的には、価格の十分の一とか数分の一だったりするかもしれません。
同じようなことは、オーディオの世界でもありました。
この世界でも価格はあってないようなもので、高価であればあるほど、きっといい音が出るに違いないと、高価であるほどそれを有り難がって購入する層がいました。
その「からくり」に気がついたなら、高価を有り難がっていた人は、「詐欺」に遭ったと思ったりするでしょう。
富士フイルムがライカのブランド力を目指すということは、いかに購入者に「魔法」をかけ、カメラやレンズをより高価で買わせるのを目指すといっているのと変わりがありません。
高級オーディオで騙された人が出たように、上げ底式に釣り上げた高価な富士フイルム製カメラやレンズを有り難がる人も出てくるでしょう。
品切れ状態が続き、一日も早く希望のカメラやレンズを欲しい人が、品切れによって吊り上げられた価格に飛びついて購入するのが目に見えるようです。
そして、写りは安いカメラやレンズとそれほど違わないのに、これだけの高価なのだから写りは絶対いいはずと簡単に勘違いしてくれます。
しかし、富士フイルムのそんな姑息な戦略に騙される人ばかりではありません。それに気がついた人は、富士フイルムのカメラやレンズを敬遠し、より安く手に入るメーカーのカメラやレンズに移っていくでしょう。
私は昔に8ミリ映画を趣味にしていました。8ミリフィルムには、コダックが開発したスーパー8と、富士フイルムが孤軍奮闘したシングル8の2種類がありました。

私は、孤軍奮闘する富士フイルムを応援するというのではなく、ただ単に、その方式の方がいいだろうと考えて、富士フイルムのシングル8の愛好者となりました。
このように、富士フイルムにはそれなりの思い入れがあります。
そんな富士フイルムが、品薄状態を意図的に作ってまで製品の価格を上げるというのには失望します。
その意図が多くの人に見透かされたとき、富士フイルムのカメラやレンズを使う人は大きく減るのではありませんか? そうした危惧が富士フイルムの上層部にまったくないのでしょうか。