つっけんどんな演技の魅力

毎週水曜日の夜にNHK BSプレミアムで放送されている英国のテレビドラマ『名探偵ポワロ』を私が見ることは本コーナーでたびたび書いています。

今週の放送も録画し、昨日見ました。放送されたのは『ホロー荘の殺人』1946)です。本シリーズは全部で70話あり、その53話目になり、シリーズも終盤に差し掛かって来ました。

本作は、話としてはそれほど面白いものではありません。

登場人物は、例によって、上流階級の人間です。

舞台は、ロンドンからそう遠くない、自然豊かな田舎にあるホロー荘という屋敷です。ポワロはその近くに自分の別荘を手に入れ、週末になると、ロンドンからそこへ行き、過ごすような設定になっています。

ポワロが別荘を訪れると、ホロー荘の主の妻から招待状が届いており、ポワロは約束を果たし、夕食を共にします。それがきっかけとなり、その家に集まる人々との交流が生まれます。

その家の離れにある、プールに面した東屋(あずまや)の前で男が拳銃で撃たれて死ぬ事件が起き、ポワロが解決するという筋立てです。

見ていて、私はひとりの女性に興味を持ちました。その女性は脇役です。本作について書かれたネットの事典ウィキペディアで確認しても、その女性は登場人物の中に含まれておらず、それだから、役名もわかりません。

録画した番組に字幕を表示させて再生すると、彼女の台詞の前に「コリー」とあり、彼女の役名が「コリー」であることがわかりました。

拳銃で殺される男はロンドンで医師をしています。この医師は自分の医院を持っており、そこで働く女性のコリーに興味を持ったのです。

コリーの職業は、ドラマを見る限りハッキリしませんが、医師の秘書のような立場になりましょうか。

ロンドンの自宅から、妻の運転する車で、医師がホロー荘を目指して出発します。それをコリーが見送る場面がはじめの方に少しだけあります。

そして、作品の中ほどでもう一度登場します。あとは登場しなかった(?)と思います。

二度目に登場する場面は、医師が殺されたあとで、医師が経営する医院を、ホロー荘がある区域の警察署で警部をするグレンジが、関係者の話を訊くために訪れます。そのグレンジ警部にポワロもお供をします。

短い場面ですが、グレンジ警部とポワロの問いかけに、コリーは終始冷たい表情で、つっけんどんに演じるのですが、それがとてもいい感じで、私は印象深く見ました。

「取り付く島もない」というのは、ああいう態度をいうのでしょう。コリーは訊かれたことに最小限の言葉で返し、あとはふたりを冷たい目で睨むだけです。

Agatha Christie’s Poirot S09E04 – The Hollow [FULL EPISODE]

同じような演技をできる女優が、今の日本にいるようには思えません。

この女優の演技の話とは別に、本作には私が知っている俳優が出ています。ところが、見ている時には気がつきませんでした。何となく、そうかなとは思って見て、見て終わったあとに確認して、やっぱりそうだったことがわかりました。

その俳優はエドワード・ハードウィック19322011)です。

Agatha Christie’s Poirot S09E04 – The Hollow [FULL EPISODE]

ハードウィックは、今、毎週土曜日の夕方に放送される『シャーロック・ホームズの冒険』で、ホームズの相棒の医師、ワトスンを演じています。

『シャーロック・ホームズの冒険』シリーズの第1部と第2部は、デビッド・バーク1934~)がワトスンを演じ、ハードウィックはバーグのあとを継いで、第3部から最後の第6部までのワトスン役をしています。

私はこれまで『シャーロック・ホームズの冒険』を、食わず嫌いで見たことがなく、今回の放送で初めて見ることを始めました。ですので、シリーズの最後の方でワトスンを演じるハードウィックのことはまだ知りません。

直近の放送はシリーズの第20話の『六つのナポレオン』1904)で、これが製作されたのは1986年です。

Jeremy Brett as Sherlock Holmes – The Six Napoleons [HD]

ポワロのドラマは2004年製作ですから、18年あとになります。それもあって、見ているときに彼がハードウィックであることに確信を持てなかった(?)のかもしれません。

映画やテレビドラマを見ていると、同じ俳優に出会うことがよく起こります。これも、映画やドラマを見る愉しみのひとつといえましょう。

気になる投稿はありますか?

  • 28ミリブーム到来前夜28ミリブーム到来前夜 私はフィルムの一眼レフカメラの時代から写真を趣味にしています。被写体は身の周りのものがほとんどなので、表現の幅は、昔から一貫して狭いです。 本コーナーで何度も書くように、フィルムの一眼レフカメラを使った時代、私が好んで使ったのは焦点距離が50ミリのレンズです。 その時代、ズームレンズは一般的でなく、焦点距離が単一の単焦点レンズが使われました。 その中で私が […]
  • 被写界深度を意識していますか?被写界深度を意識していますか? メインカメラとしてキヤノンのミラーレス一眼カメラ、EOS RPを使い始めて二週間です。 ただ、最初の一週間は、RFマウントのレンズがなく、マウントアダプタを介して、フィルム一眼レフカメラ時代のレンズを使ったため、RPが持つ機能の数分の一程度しか実感できない使い方でした。 ですので、RFマウント用レンズとして購入したRF28mm F2.8 […]
  • EOS RPで動画を手軽で軽量にEOS RPで動画を手軽で軽量に 私が使うメインカメラをソニーのミラーレス一眼カメラのα7 IIから、キヤノンのEOS RPへ変更して二週間目の途中です。 Canon EOS RPにRF28mm F2.8 […]
  • 青空をどこまでも青く青空をどこまでも青く 関東甲信は昨日(18日)梅雨明けした模様と発表がありました。平年より1日、昨年より4日早い梅雨明けです。 今年の関東甲信の梅雨の期間は、もしかしたら、歴史的に見ても短かったのではないでしょうか。梅雨入りしたのは6月21日ですが、これは平年より14日、昨年より13日遅い梅雨入りです。 なんでも、過去三番目に遅い梅雨入りになるようです。 加えて、梅雨の期間中の […]
  • 趣味でミラーレス動画を撮るなら趣味でミラーレス動画を撮るなら 私がメインで使うカメラとしてキヤノンのミラーレス一眼カメラ、EOS RPに乗り換えて十日が過ぎました。 前回までの更新で書いたように、小型で軽量のRPに、RFマウント用レンズとしては最も小型で軽量のRF28mm F2.8 STMをつけたコンビが気に入っています。 Canon EOS RPにRF28mm F2.8 […]