「ペッパーミル」というのが流行っているそうですね。なんでも、ラーズ・ヌートバーという野球選手(1997~)がいて、彼がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でその「ペッパーミル」というパフォーマンス(?)をすることで、流行になっているらしいです。
私はWBCにはまったく関心がなく、試合は見ていません。ですから、ヌートバーという選手がいることも知らず、動く映像でその人を見たことがありません。
そんなわけですから、「ペッパーミル」というパフォーマンスもどんな風な仕草なのかわからず、わかろうとも思っていません。
このパフォーマンスを、選抜高校野球の開幕試合でひとりの選手がすると、それを一塁塁審が注意したなどで、様々な方面に波紋を広げているようです。
遅ればせながらそんなことがあったことを知りました。それが起きたのは試合が始まった直後ですね。
一回の東北高校の攻撃で、先頭バッターの選手がショートゴロの当たりを打つと、守備についていた山梨学院の遊撃手がゴロを捕球できず、脚の間を抜けていく、いわゆる「トンネル」となりました。
アウトと思っていた東北高校の選手が、一塁走者となり、その喜びを、自軍のベンチに「ペッパーミル」のパフォーマンスで表したということになるのでしょう。
元祖の「ペッパーミル」を見たことがないため、この動画にあるパフォーマンスがどの程度それに似ているかはわかりません。
まず、両手の親指と人差し指を立ててチョキのようなポーズを作り、次に二度手の平を打ったあと、最後に、バットを握るようなポーズをして、その手をグリグリとさせています。
そのパフォーマンスをする東北高校の選手を、一塁塁審が間近で見ているのが印象的です。
選手のパフォーマンスを見たあと、一塁塁審が「パフォーマンスは駄目」と注意したのだそうですが、それはパフォーマンスをした選手個人に注意したのでしょうか。そのあたりのことは、この試合を見ていないので私はわかりません。
また、大会本部も、「不要なパフォーマンスやジェスチャーは慎む」ことを求めています。
この出来事に、マスメディアは早速飛びつき、高野連の対応は時代遅れだと批判的に報じることをしています。
マスメディアの記者は、自分の考えをそのまま記事にすることができません。そのため、自分の考えをそれでも記事にしようとするなら、自分の代弁をしてくれそうな識者に取材し、その人が話したことにして、自分の考えに近いことを記事にします。
今回の騒動では、青山学院大学(青学)で駅伝監督をする原晋氏(1967~)が担ぎ出された印象です。原氏の考えをどのように引き出したのかわかりませんが、記者がこの出来事を原氏に話し、感想を述べてもらった(?)のかもしれません。
原氏は、青学の駅伝監督として広く知られています。そのことで、原氏が話したことは、本人が考える以上に影響力があることをマスメディアとしても承知しているのでしょう。
原氏は、個人の個性を尊重したい考えをお持ちのようで、今回の出来事も、それを尊重する考えを持つうえで、それを押さえつけるような高野連のあり方を批判しています。
原氏を利用して記事にした記者は、おそらくは、原氏に訊く前に、そのような自分の考えを持っていたのでしょう。
結果的にマスメディアに利用された原氏でしたが、世間の反応は、原氏やマスメディアが考えたのとは反対となりました。
Yahoo!の記事に添えられたコメントを見ても、原氏に同調する者は多くありません。多くの人がコメントで残しているように、このパフォーマンスを、相手の失策で出塁したあとにしていることに不快感を示しています。
これがもしも、クリーンヒットで出塁したあとに、嬉しさがあまって思わずしたパフォーマンスであれば、原氏の考えに同調する人がいたでしょう。
そのあたりの「計算」を、原氏と、原氏を利用したマスメディアは見誤ったというよりほかありません。
今回のパフォーマンスは、それほど大げさなものではないように個人的には感じました。しかし、それでも、選手がエラーしたことを喜び、それを自軍のベンチに伝えているようにも見え、相手への敬意を欠いていると指摘されても仕方がありません。
私は高校野球が好きで、地方大会が始まると球場へ観戦に行くことを昔から続けています。スタンドに座って観戦していると、自分が応援するチームが、相手のエラーで出塁できたりすると、拍手や歓声が沸き起こったりします。
どちらのチームも応援しているわけではない私は、そんな拍手や歓声を聞くと、あまりいい気分にはなりません。拍手や歓声は、どちらのチームであっても、好プレーをした選手に送るのが、見ていて気持ちがいいです。
これを書きながら、昨秋に行われた明治神宮野球大会で起きたことを思い出しました。この大会は、今甲子園で行われている選抜大会出場をかけた全国の秋季地方大会で優勝したチームで争われる大会です。
この大会で、大阪桐蔭と対戦したクラーク国際の佐々木啓司監督(1956~)が、相手チームのベンチは、こちらの投手が投球フォームに入ってからも「ワーワーいっているのは野球じゃない」と激怒する場面がありました。その訴えに対し、大阪桐蔭の西谷浩一監督(1969~)は、自分たちの認識不足を認めるコメントをしています。
選手の感情の発散を必要以上に取り締まるのも考え物ですが、それでも、最低限の節度は必要なことです。今回の騒動に見られたパフォーマンスがどちらに当たるのかは難しいところですが、相手の失策で出塁したあとにしたことは、反省すべきでしょう。
このパフォーマンスに関するほかの動画のサムネールで知りましたが、パフォーマンスをしたのは一塁に出塁した選手だけでなく、味方のベンチにいる複数の選手が、同じように、バットをグルグルやるようなポーズをしていたのですね。
これでは、相手ベンチへの挑発行為と思われても仕方がなさそうで、褒められることではないですね。