池江選手の被害者報道に違和感

かつては死の病といわれた白血病から奇跡の復帰を果たし、東京五輪・競泳の日本代表を決めた池江璃花子選手(2000~)が7日、自身のツイッターで苦しい胸の内を述べたことを、今日の朝日新聞が取り上げています。

記事によりますと、池江選手のツイッターのアカウントに、「(東京五輪代表を)辞退してほしい」「(東京五輪開催に対して)反対の声をあげてほしい」といったメッセージが複数寄せられているとあります。

単なる一般人の声ではないかもしれない声に対して池江選手は、新コロ騒動もあり、そのような声があることを認める投稿をしたうえで、次のような思いを書いたそうです。

私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。(中略)それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。(中略)暖かく見守ってほしいなと思います。

何かおかしいと考えることがあっても、「おかしい」と一緒に声を上げてほしい、と誰かほかの人に頼むのは違うように、私は記事を読んで感じました。

そのように考えた半面、違う感想も持ちました。

同じことを産経新聞も伝えていますが、産経の記事には、朝日の記事にはなかった、次のような池江選手の思いが紹介されています。

私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。

「非常に心を痛めた」池江選手に五輪辞退を求める声(2021年5月8日)

池江選手とは直接関係ありませんが、池江選手の反応を知り、今年2月に起きた森喜朗氏(1937~)へのバッシング騒動を思い出しました。

森氏が会長を務めていた東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の会合で、女性役員の話は長くて困ると知り合いもこぼしている、といった話をしたと『週刊文春』が報じたことで、森氏への一斉攻撃が始まり、批判を静めることができなかった森氏に代わり、橋本聖子氏(1964~)が会長職を担うことになりました。

本コーナーでもその騒動を取り上げていますが、私が問題にしたのは、森氏の発言そのものではなく、大勢に逆らうことの困難さです。

誰ひとり森氏の側についてくれる人がいないほど、森氏は一方的に批判されました。そんな森氏の”問題発言”であったはずですが、それが飛び出した会合の様子を知りますと、森氏の発言に異議を唱える声は上がらなかったと聞きます。極めつけは、やり玉にあげられた当の女性もその会合に参加していながら、苦笑いしだだけだったということです。

このように、そのときはなんのお咎めもなく、和気あいあいに終始しています。森氏の”問題発言”が出たときも、「またいつもの悪い冗談が飛び出した」程度の受け止め方だったのでしょう。

それが、『週刊文春』の問題提起によって、”森許さず”の空気に入れ替わると、我も我もと森氏への非難が殺到しました。野党の女性国会議員らは、森氏への抗議を込め、申し合わせて、白いスーツを着て議場に入ることまでしています。

地方の議会でも同じ光景がありました。

私はそうしたパフォーマンスを、白けた気分で見ていました。誰かが「問題だ!」と声をあげたことで、安心して尻馬に乗っているだけだろう、と。

本当に抗議する気があるのであれば、たったひとりでも声をあげるべきです。みんなと一緒でなければできないなんて、国会議員にもなって、情けないにもほどがあります。

森氏の騒動を総括するとすれば、森氏の発言そのものより、おかしいと思うことにおかしいと声をあげにくい日本社会にこそ問題の本質がある、ということです。

今回の池江氏の反応を伝える記事を読んだときも、それに通じることが感じ取れました。

朝日の記事にはなく、産経の記事にあった池江氏のいい方を聴いていますと、長いものに巻かれる池江選手の姿が見えてきます。いい方を変えれば、次のようになるでしょう。

私は選手として、お上に従って頑張るだけです。

お上というのは、池江選手が属する競泳の連盟であり、日本のスポーツ界のお偉方です。

個人競技の選手であっても、そうしたものを無視して選手生活を続けられないであろうことは想像できます。しかし、全面的に従うだけというのでは、一個の人間として独立していませんね。

五輪の日本代表選手であるのと同時に、個人として、五輪にもっと自由な考えを持ってもいいように感じます。もっとも、五輪を批判的にばかり考えたなら、はじめからそれを目標にして努力はしないかもしれませんけれど。

東京五輪といえば、新コロ騒動の今、聖火リレーが行われています。

マスメディアは、騒ぐ必要がないと私は考える新コロとやらのウイルスの感染爆発が起こり、大変だと連日大騒ぎしています。その論理でいけば、東京五輪開催どころではなかろうと考えますが、大手新聞社が揃ってスポンサーである五輪だけは別のようです。

ついでまでに、米国では、新聞社が五輪のスポンサーになることなど、考えられないことだそうです。

それはそうでしょう。新聞社が五輪と一蓮托生になってしまったら、五輪を批判的に報じることはできないでしょうから。

そんな背景もあって、五輪の開催が中止に持ち込まれないよう懸命になっています。もしもスポンサーでなければ、早い段階で、中止になってもおかしくない報道に切り替えれたはずですが。

この聖火リレーには、有名人が多く参加しています。その聖火ランナーに選ばれた有名人は、それを名誉に感じたりしているのでしょうか。

私がもしも聖火リレーに選ばれそうになったら、断固拒否します。自分が国家事業の駒にされたくないからです。

先の大戦でも、英米と戦うようマスメディアに誘導され、有名人はその知名度で、日本人を鼓舞する活動に駆り出されたでしょう。その挙句に多くの日本人が命を落としています。当時の有名人は、結果的に、多くの日本人を死へ向かわせる一翼を担ったということです。

東京五輪の聖火リレーのランナーに選ばれて、喜んで参加している人たちが、戦争のときの有名人と私には重なって見えます。

朝日で池江選手の投稿を紹介した隣に、東京五輪の女子1万メートル代表の新谷仁美選手(1988~)について書いた記事が載っています。

その記事を読み、新谷選手には気骨のようなものを感じました。

五輪会場である国立競技場で行われる陸上のテスト大会を翌日に控えた8日、出場選手によるオンラインの記者会見があったそうです。

その中で、五輪に出場する選手に、新コロワクチンが無償で提供される方針について訊かれ、新谷選手は次のように答えたと伝えています。

アスリートが特別というような形で聞こえてしまっているのが非常に残念。命の大きい、小さいはないので、五輪選手だけが優先されるのはおかしな話だと思う。

同じ質問を池江選手が受けたなら、彼女はどんな風に答えるのでしょうか。「上の人が接種を受けろというのなら、それに従って受けるだけです」とでも答えそうな気がしないでもありません。

新谷選手は正直な人らしく、次のようなことも話したと記事にあります。

自分が(新コロワクチンの接種を)受けないことで他人に危険が及ぶのであれば受けます。ただ、副反応がどう出るか分からないので恐怖もあります。

正直な人ですね。個人的には好ましく感じました。

自分の上の人間の顔色を見て発言するのでは、森氏が”問題発言”したときに、抗議をせずに苦笑いでその場を済ませる態度と同じではありませんか。

それでいて、他の人が講義の声をあげれば、その群れに加わり、野党の女性議員らは、申し合わせて講義の白いスーツで議場入りすることまでしています。

他人の尻馬に乗って講義をするのはみっともないです。おかしいと思ったら、たったひとりであっても「おかしい!」を声を発するべきです。

森氏の騒動のあと、朝日新聞も、これをきっかけに、誰もが声をあげられるような社会へ変えていこうといった記事を連発していますが、池江選手の腰の引けた態度を、逆に擁護するような報じ方をしています。

本日の豆邪推
池江選手本人には関係ない話ですが、池江選手の兄は、五輪誘致と開催に大きな影響力を持つ大手広告会社・電通の社員だそうですね。電通はどんな汚い手も使います。今回も、スポンサーのマスメディアとグルになり、彼女の知名度いを利用し、反対意見を抑え込む活動の一環かもしれません。彼女がツイッターに書いたという文章も、スタッフが書いたものかもしれませんし。ネット上の書き込みにもスタッフを雇い、世論誘導するのは彼らの常とう手段です。以上、無責任な想像でした。

「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」と池江選手が投稿したことを知ったなら、そんなことをいっていてどうする。ひとりでも変えるぐらいの強い気持ちを持ってほしい、と叱咤激励してほしいです。

それをしないで、SNSで要望された池江氏を、「かわいそう、かわいそう」と擁護しているようでは、おかしいことにおかしいと誰もがいえる社会にするのは難しいですね。

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