私は昔から将棋という“頭脳の格闘技”が好きということにつきましては、本コーナーでも何度か書いています。が、そのたびに、「将棋のルールがまったくわからない」と書き添えました。
しかし、ここ1カ月ぐらいの間に、ようやくルールを憶えました。
私の“将棋の先生”は、5月の終わりにインストールした無料の将棋ソフトです。
以来、CPUという“頭脳”を持つソフトと対局することを繰り返しました。が、どこに駒を動かしたらいいのかもわからない状態だったため、始まってすぐに相手に自分の駒を取られたり、相手の駒が私の陣地まで攻めてきて成駒(なりごま)になられてしまうなど、まったく歯が立たず、為す術なく負けてしまうことばかりが続きました。
それでも、将棋ソフトに挑むことを毎日続けました。しかし、一向に勝てそうな気がしてきません。そこで、自己流ではこのまま続けていても勝てないだろう、と初心者に将棋の指し方を指南してくれる入門書を買い求めました。
私が選んだのは、現在、日本の棋界のトップにいる羽生善治さんが監修された本です。
将棋はとても良くできた対戦ゲームですが、チェスなどと違うのは、相手から奪った駒を自分の戦力にできることです。ですから、不用意に相手に駒を取られてしまったらこちらが不利になるだけです。
ルールを憶えたての私は、駒に「ヒモ」もつけずにフラフラと前を進めてしまったため、相手には、カモが背中にネギを背負うように映ったことでしょう。
羽生さんが監修をされた本で、それなりに戦い方の基本のキを学び、易々と自分の駒を奪われないよう、「ヒモ」をつけることを始めました。この場合の「ヒモ」というのは、他の駒と連携し、相手に攻めにくくするような形で駒を進めていくことをいいます。
初手には【30通り】あるのだそうですが、どの駒から指しても自由。とはいえ、有利・不利な初手というものがあり、たとえば「8六歩」といった初手は、1、2を争うような悪手だそうです。その一方、「7六歩」は好手で、多くの対局ではこの「7六歩」で始まることが多くなるわけです。
こんな風にして、基本のキの智恵は得たものの、その後も連戦連敗が続きました。
そこで、絶望的に弱い私でも勝機がありそうな将棋ソフトはないかと探し、「きのあ将棋」という無料のソフトを新たに使い出しました。こちらのソフトは、それ以前から使っている「K-Shogi」よりも途中までは有利に対戦を進められることがあったりします。が、終盤で一気に形勢が不利になり、こちらのうっかりで「頓死(とんし)」することがたびたびありました。
それが、昨日、初めて相手を投了(とうりょう)させることに成功しました。
しかし、私の初勝利は酷いもので、それが実現したときの手数は【283手】。相手の駒を奪いまくり、ようやく投了に追い込んだのです。
そのあと、昨日に一局、そして、本コーナーの更新をする前に一局と、続けて3局同じような勝ち方をしました。いずれも【200手】を超えるような手数です。終盤へ向けての「寄せ」がまったくできないからだろうと思います。
羽生さんが監修をされた入門書には、「玉(ぎょく)は狭いほうへ追い込む」「終盤は駒の損得よりスピード」「守備駒(金や銀、桂馬、香車など)を狙う」とあり、最終的な寄せ方も「俗手」といわれるような寄せでも、それが確実にできるようになるのが上達への早道とあります。
この説明に相撲の決まり手が例えに使われています。豪快な「上手(うわて)投げ」などで勝てれば爽快でしょうが、強い力士は得てして地味な「押し出し」や「寄り切り」で勝負がつくことが多いそうです。とにかく、相手が嫌になるくらい攻めるのが肝要のようです。
攻めることばかりに夢中になり、自分の玉の護りが手薄になっては勝つ見込みがなくなります。そこで玉を囲う必要がありますが、いくつかある囲い方から、私は「矢倉囲(やぐらがこ)い」というのを憶え、今はこればかり使っています。
主な囲いには、他に「美濃囲(みのがこ)い」と「穴熊囲(あなぐまがこ)い」というのがあるそうです。
自分の玉を囲い終えたら相手を攻めることになりますが、攻めの戦法がまだ全然身についていないため、行き当たりばったりで、取れそうな相手の駒を取ったりすることをしています。
もっと戦略をもって対局に臨めればスピード感のある戦いにもっていけるのでしょうが、こればかりはCPUで計算してくれる将棋ソフトに相手をしてもらい、少しずつ勝負勘を養っていくよりほかないのでしょう。
今では、毎週日曜日の午前中にNHKEテレで放送される将棋講座「将棋フォーカス」を見て勉強し、そのあと、「NHK杯将棋トーナメント」を見るのが習慣になりました。
羽生さんが監修された『羽生の一手詰め』で、【81】の「一手詰め」(1手指すことで相手の玉が詰みの状態になること)に挑戦しているところですが、その本の「羽生名人に聞く」のコーナー(全部で5つ)の最後。「脳を活性化するのに必要不可欠なことは?」と尋ねられた羽生さんは、次のように答えています。