ネットで「送り狼」について確認しようとすると、「送り犬」がはじめにあって、そこから「送り狼」といういい方が生まれたことを知りました。
ネットの事典ウィキペディアにある「送り犬」を確認すると、これは妖怪の一種で、東北から九州にかけて、さまざまに形を変えて語られたようです。
基本形としては、夜中にひとりで山道を歩く者のうしろを犬がぴたりとついて来ることです。
そのあとが、地方によって分かれています。
先を歩く人間が転ぶと、犬が人間に襲いかかり、食い殺すというのが最も凶暴な犬です。その一方で、無事に山道を抜けることができ、犬に「お見送りありがとう」と声をかけると、あとをついてこなくなる、といった犬もあるようです。
関東から近畿、高知県の一部は犬が狼に変わり、「送り狼」というのが一般的になるようです。
伊豆半島や埼玉の戸田(とだ)市では、鼬(いたち)になり、「送り鼬」の伝承になるそうです。
私が「送り狼」についてネットで調べようと思ったのは、4日の朝日新聞の記事を読んだからです。その記事の見出しは「『セクハラ相談の弁護士から性被害』提訴」です。
演劇や映画の世界には、昔から、主に女性の出演者やスタッフが性被害を受けるケースが少なくなさそうです。これまでは、被害を受ける女性が我慢をし、表に出ることが多くありませんでした。それが、昨今は、あえてそれを世に出し、被害を訴えることが増えています。
朝日の記事が伝えるケースでは、性被害を受けた舞台女優の知乃(ちの)さん(25)が、その示談金を基に「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」を作り、その会の顧問をしていた馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)弁護士(47)から性被害を受けたことを公表したことを伝えています。
顧問をしていた馬奈木弁護士は、「送り狼」にも良い狼がいるかどうかわかりませんが、悪いほうの狼そのもののように感じ、その正確な意味を知ろう、と考えた結果、「送り犬」の存在を知ったのでした。
朝日の記事によれば、2021年9月に、知乃さんが代表をする会がセクハラ被害を公表したところ、代表の知乃さんが逆に名誉棄損で訴えられたそうです。
そのため、会の顧問をする馬奈木弁護士に相談し、対策のための打ち合わせを重ねることになったのでしょう。
記事にはありませんが、加害者側の馬奈木弁護士についてネットで調べると、何度も知乃さんに会ううち、彼女に好意を持ってしまったようです。
あげくには、頻繁に知乃さんを呼び出すようになり、深夜の食事に誘っては、太腿を触るような行為に出てきたようです。その後、性的な関係を求められ、一度は意に反して関係を持ったそうです。
その後、知乃さんは馬奈木弁護士からの誘いを拒否したところ、「裁判はお任せと思っているのか」とメッセージを送ってきたこともあったそうです。
馬奈木弁護士の迷惑行為に困るのと同時に、不安を覚えたりしたのでしょう。知乃さんは3日にそれを公表し、記者会見をした、という経緯になるようです。
馬奈木弁護士は、これまで、芸能界のハラスメント問題に取り組んできたそうです。他方、原発事故被害者の集団訴訟の弁護士団事務局長も務めたそうです。
立場の弱い被害者に寄り添う活動をしてきたはずの馬奈木弁護士が、ここでは自分の強い立場を利用し、嫌がる女性を自由に扱おうとしたことになりそうで、許されない行為です。
映画界は、そうしたことが起こりやすい世界といっていいでしょう。その一端は、ネットの動画共有サイトのYouTubeからも窺うことができます。
あるYouTuberは、その方面の仕事を長く続けている人らしいですが、その人が配信したある動画で、若い女性のスタッフと画面越しに会話をする様子が紹介されました。
その途中、男性側が調子に乗ってしまい、セクハラっぽいことを話し、戸惑う女性の様子を見て喜んでいる、ように私には見えました。
見ていて酷いと思ったのは、その男性が、自分の男性器のサイズらしい数字を口走った場面です。
不快だったので、その動画を途中で止め、バッドボタンを押しました。その上で、チャンネル登録を一度解除しました。その後また登録しましたが、今は様子見をしています。
男性と女性がいて、それぞれがそれぞにいろいろな想いを持つでしょう。それはそれでいいと思いますが、一方が一方的な想いを募らせ、それが相手に迷惑な場合は、すぐさま引く程度の節度は持ちたいものです。
もっとも、こんなことを書く私ですが、それを思い出すと、今でも赤面するような過去があります。
たとえば、今も利用する歯科医院で受付と歯科助手をする女性に片想いし、記憶で描いた彼女の肖像画を、彼女の家へ贈ってしまったことがあります。
そのときは、彼女の知り合いから電話をもらい、小一時間電話で説教されました。
私は、絵を送った以外の行動には出ませんでしたが、それ以上彼女に近づいたら警察に届けるといわれました。
今も、彼女は同じ医院で働いています。私は相変わらずその医院を利用しており、会えば普通に会話をしています。
いくらそれが純粋な想いであっても、一線を越えた場合は、裁判沙汰になりかねませんので、考えた行動に出たいものです。
ともあれ、怖い狼の一面を持つことが社会に知られた弁護士は、今後、どのように、弱者の弁護活動をしていくのでしょうか。