2002/12/20 世田谷一家殺害事件のその後

昨年も今ぐらいの時期にこの事件については書きました。年末になり、今年も少しばかり書いておくことにします。「世田谷一家殺害事件」についてです。

この事件について書きたくなったきっかけは、12月17日から3日連続で産経新聞に書かれた記事を読んだからです。事件の発生から丸2年経とうとしている今も未解決のままで、しかも、事件そのものに不可解な点が多いこともさまざまな憶測を呼ぶ要因となっています。

産経の記事には、「本事件の捜査に当たっている捜査本部がどうしても裏付け・事件との関係の有無を判断できずにいる“不審者”が4人から11人いる」と書かれている点が注目されます。そこで、そこに載っている不審者4人を順に見ていきます。

  1. 日光駅の男
  2. ビデオの男
  3. 帽子の男
  4. 走り去った男

1:日光駅の男

事件が発覚した2000年12月31日、東武線日光駅着の東武電車に手を怪我した男が乗っていたとされています。犯人は犯行によって手を怪我し、出血した両手親指の指紋が現場に残されています。

この男は、日光駅で下車した20人の乗客の1人で、「右手に骨が見えるほどの深い傷を負っていた」ということです。そこで、それを見かねた駅員が事務室で傷口を消毒し、包帯を巻いたということです。

手当てをした駅員が男に怪我の理由を尋ねると、「電車内で包丁を落として手を切った」と説明したようです。しかし、車内でそれらしい血痕は確認されておらず、不自然な説明に思われます。

男は年齢が30歳ぐらいで、身長は約170センチのやせ形。黒いダウンジャケットにジーンズで、白っぽいスニーカーを履き、紺色のリュックサックを背負っていたそうです。捜査本部ではこの情報を早い段階で得ていたそうですが、その当時は他にも優先させなければならない情報があったため、後回しにしたようです。早い段階で捜査をしていれば、「日光駅の男」の身元は割れたでしょう。

2:ビデオの男

事件2日前の12月29日午後零時半頃、殺害現場となった宮澤さん宅から約8キロ離れたJR吉祥寺駅前のスーパーで、現場に残された凶器と同じ包丁「関孫六」を購入する若い男の姿が防犯ビデオに映っていた、とされることです。男は、身長が175センチぐらいだそうです。

凶器の「関孫六」ですが、事件があった12月に世田谷とその周辺の新宿、杉並区など都内の五区二市のスーパーなどで「ビデオの男」も含め7人が購入したことまではがわかっているそうですが、人物の特定はできていないということです。

3:帽子の男

犯行現場に残されたグレー地に黒いラインの入った「クラッシャーハット」と良く似た帽子を被った男が目撃されていた、という情報です。

男は中年で、それに似た帽子を被り、事件当日の午後7時と午後10時の2回、宮澤さん宅の脇を流れる仙川沿いの遊歩道を歩いているのを、近所の住民が目撃しています。それが同一人物かは確認できていないようですが、10時に目撃された男は40歳前後で、身長は約170センチだそうです。

4:走り去った男

これは、宮澤さん宅に通じる真っ暗な路地から通りに飛び出して来た男です。

目撃者は、二人の娘を乗せて車を走行中の主婦です。犯行が行われたと思われる30日午後11時35分から40分頃、宮澤さん宅付近を走行中、宮澤さん宅へ通じる路地から飛び出てきたのだそうです。

突然のことに驚いた主婦は、ヘッドライトをハイビームにしたそうですが、男は驚くこともせず、「飛ぶように」(←主婦の証言)大通り方面に走り去ったということです。

男は25歳から35歳ぐらいで、身長は175から180センチぐらい。体格はやせ形で髪が長く、黒いジャンパーに黒いズボンです。

この男が目撃された時刻が犯行直後であったことで、捜査本部は「犯人である可能性が高い」として捜査をしています。

ただし、問題があります。犯人が翌31日午前1時38分と、午前10時頃に宮澤さん所有のPCを起動させた形跡が残されているからです。

見方を変えれば、「走り去った男」がもう一度現場に戻り、PCを操作したという可能性もないではありませんが。

以上が、産経で紹介された4人の不審者についてです。

この4人とは別に、真犯人の不可解な行動が3つあると書いています。それも続けて見ていくことにします。

冷蔵庫に入っていたものを食い漁った

犯人は冷蔵庫に入っていた数個のアイスクリームを全て食べ、ペットボトルのお茶を飲んでいます。アイスクリームはスプーンを使わず、かぶりつくように食べ、食べ終わった容器は無造作に床に投げ捨てています。犯人の粗雑な性格が感じられなくもありません。

紙類を浴槽に投げ込んだ

宮澤さんの仕事関係の書類や、自宅で塾を開いていた妻・泰子さんの塾関係の書類、広告チラシなどを、ハサミや手で引きちぎり、二階にある浴槽内に投げ込んでありました。動機が判明していません。

PCでお気に入りのページ閲覧

これはすでに書いたことです。犯行ののち、犯行現場に留まり、宮澤さんが所有するCで、宮澤さんが登録してあったサイトを閲覧していたことです。

警察の調べでは、犯人は最初のページを開いて閉じたそうです。もしもそれが事実であれば、犯行現場に10時間以上もいたことになります。

犯行を犯す人間の心理を想像すれば、極めて危険なことに思えます。しかも、犯行が行われたのは年の暮れで、東京でも最低気温が5℃前後になります。

以上が犯人の不可解な行動の一端ですが、警察が今もって解明できていないのが、「犯人はどこから宮澤さん宅へ侵入し、どこから逃げたのか?」という根源的な謎です。

当初は「二階の浴室の窓から出入りした」という見方が有力だったとのことですが、そのあたりに指紋や足跡は残されていないそうです。

そこで浮上するのが、ある捜査幹部の次のような推理です。

犯人は玄関から入り、一度靴を脱いでから犯行に及んだ可能性がある。床が血だらけになったので、途中で靴を履いたんだ。そうでなければ階段の足跡の説明がつかない。

階段の足跡

宮澤さん宅の1階と2階には血の付いた足跡が多数るものの、不思議なことに、階段を上る向きの足跡しか残されていないそうです。

もしも犯人が玄関から入ったと仮定できるとすれば、犯人が宮澤さん夫妻の知人という可能性が出てきます。

以上新聞の記事から見てきましたが、私が個人的に不思議に思うのは犯人が現場に残した遺留品の多さです。おさらいの意味も込め、犯人が残した遺留品をリストアップしておきます。

  • 凶器の柳刃包丁「関孫六 銀寿」
  • グレーに黒い線の入った「クラッシャーハット」と呼ばれる帽子
  • 黒いジャンパー(Lサイズ、ユニクロ製)
  • 黒い手袋
  • 薄いグレー地に袖が紺色のトレーナー(Lサイズ)
  • 緑地に赤とオレンジの格子入りマフラー
  • 深緑の韓国製ヒップバッグ

なお、ヒップバッグからは、1600粒の微物が発見されているそうです。その内訳は以下の通りです。

これは私が読み違えていました。犯人が履いてきた韓国製のスニーカー「スラセンジャー」は現場に残されていません。そのシューズと思われる足跡が残されていた、ということのようです。

私も犯人が靴も履かずに外へ逃げ出したとは考えにくかったので、その点は不思議に思っていました。それはそうです。犯人がいくら慌てても、靴を履かずに逃走することは考えられません。

それにしても、犯人は寒い時期に、上着のジャンパーを脱いで犯行に及んだのでしょうか。現場には犯人が着てきたジャンパーが残されています。返り血を浴びたためでしょうか。犯人のトレーナーが脱ぎ捨てられ、宮澤さんのトレーナーを着て逃走したようです。

こうしてみますと、目撃された不審者4人の内では、4番目の「走り去った男」の服装の特徴が近いように思われます。

ただその時点では、犯行現場からその服装で逃げてきてしまっているわけで、その人物が真犯人であれば、再び現場に戻ったことになります(犯人は上着など多数の遺留品を現場に残しているため)。

そしてなぜかその場に留まり、翌日、隣に住む泰子さんの母の突然の訪問を受け、慌てて逃げ去ったという推理が成り立ちそうな気がしないでもありません。

いずれにしましても、一日も早く事件が解決されることを望みます。

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