2002/05/16 流奈君・奇跡の詩人

移り変わりの激しい現代においては既に古い話題の部類に入るのかもしれませんが、本日は、先月末に放送され、今なお人々の議論の的となっているテレビ番組について書きます。

4月28日にNHK総合で放送された「NHKスペシャル 奇跡の詩人・11歳 脳障害児のメッセージ」という番組です。

番組をご覧になっていない方のために簡単に内容を説明しますと、生まれつき脳に重い障害を持った少年・日木流奈(ひき・るな)君は、五十音の文字盤を通じて母親と会話し、その会話の中から驚くべき詩を次々と生み出し、それが書物となって世の多くの人たちを励まし続けている、というものです。

私はその番組を紹介した新聞のテレビ欄を目にし、放送も見ました。

番組を見る以前、私が勝手に想像していたのは、少年はゆっくりと一文字ずつ指さしたり、あるいは、ワープロのようなもので一文字ずつ入力して自分の意志を伝えている、のかと思っていたのですが、映像で紹介された場面は、私の想像を覆すものでした。

母親の手によって支えられた流奈君の右手は、文字盤の上を目にも止まらぬ速さで移動し続けたのです。

それを母親は、常人では理解しがたい“読解力”によって、彼の言葉を読み上げ、それを傍らに待機している父親がPCで入力していきます。

その彼の脳から飛び出す言葉自体も、12歳の少年が考えたとは信じがたいような高度な内容です。

牛乳ビンの底のように度の強いメガネをかけた流奈君は、時に、疲れてなのか、身体を斜めに横たえていますが、それでも母親の手でつかまれ、自分の意思とは関係なしに、文字を指し示す中指は文字盤の上を移動し続けます。

それを見ていた私は、番組途中から「本当に流君自身が発している言葉なのだろうか?」と疑問が沸きました。

同じような疑問は、番組を見た視聴者からNHKに数多く寄せられたようで、その疑問を無視できなくなったNHKは、5月11日の「土曜スタジオパーク」(13:50~14:30)の中で、当番組を制作した山元修治チーフプロデューサーがその疑問に答えるコーナーを急遽設けなければならないほどの注目度となりました。

そのコーナーでは、スローモーション再生により、確かに流奈君の中指がそれぞれの文字を指し示していることを伝えています。

ただ、それはほとんど流奈君の母親の手の動作といえなくもなく、スローモーションの画面で流奈君の指が文字を指し示していることがいくら確認されても、それが本当に流奈君自身の意思によるものなのかの説明にはなりません。今日発売になった週間文春でも、同様の疑問を呈しています。

私が実際に番組を見ていて気になった点がもう一つあります。

それは、流奈君を育てる両親の育て方を必要以上に肯定していることです。それは、流奈君の“言葉”によって表現されます。

その言葉の一つひとつをしっかりと記憶しているわけではありませんが、断片的に憶えていることでは、「自分の両親に“正しく”育てられたことを感謝している」とか「障害を持って生まれながら、それを両親はちゃんと受け止めてくれて嬉しい」といった内容です。

これは私の勝手な想像で、あるいは事実は全く違うかもしれないことを初めに断っておきますが、流奈君が障害を持って生まれた時、両親、特に母親は大変なショックを受けたことと思います。

もしかしたら、母親はそんな子供に生んだことを彼に申し訳なく思ったかもしれません。

その母親を許し、肯定する“言葉”が、流奈君という“媒体”を通して表に現れている、といえなくもありません。

そして、これはもしかしてということですが、母親の想いが流奈君の手を動かす“原動力”になっているとしたらどうでしょうか?

非常に回りくどい書き方をしていますが、私の大きな疑問はそこにあります。

“彼の詩”を読んだ多くの人は心を癒されたといいますが、最も癒される必要を感じているのは流奈君の母親自身で、その癒されたい気持ちが“流奈君の指”を借りることでグルッと自分に返り、あたかも流奈君自身から発せられたように感じられた時、母親は初めて心底安心できる、のだとしたら_。

流奈君自身によって詩が作られているということを証明するのは難しいかもしれませんが、その辺りの説明をさらにしてくれるよう、NHKの制作サイドには求めたいと思います。

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