2001/01/23 あるボードビリアンの死

今朝の新聞各紙は、あるボードビリアン(ヴォードヴィル)の死を報じています。

マルセ太郎です。

彼は本名を金原正周といい、在日韓国・朝鮮人二世として大阪市に生まれたそうです。

私がマルセをハッキリと認識したのは何年前のことになるのでしょうか? 以前、テレビの深夜番組に『EXエックステレビ』(日本テレビ系列)というのがありました。これは、その昔、“名物番組”『11PM』を放送していた時間枠の番組です。で、その放送形態もその『11PM』の時代そのままに、東京(日本テレビ/月、水、金)と大阪(読売テレビ/火、木)交互の放送でした。

私は個人的に大阪担当の曜日のノリが好きで、火曜日と木曜日を中心に見ていました。今思い返せば、司会は上岡龍太郎島田紳助です。ほとんど第1回の放送から見ていたような記憶がありますが、二人の掛け合い漫才のような絶妙なアドリブを交えた司会ぶりに半ば感心しながら見ていましたね。

で、その番組で初めてマルセ太郎を知ったのだと思います。

朝日新聞の記事によりますと、マルセ太郎は高校時代から演劇の勉強を始め、1956年日劇ミュージックホールパントマイムでデビューしたとのことです。

何といっても、マルセを有名にしたのは、彼の後半生の代表芸である「スクリーンのない映画館」でしょう。

私は彼を描いたドキュメンタリー番組(多分NHK)を見たことがありますが、その中でもその“芸”を披露していました。マルセは、映画の初めから終わりまでを彼の話芸だけで描き出します。それはまさに、スクリーンのない映画館です。

あれは黒澤明監督の映画『生きる』の一場面だったでしょうか。ガンに冒されて余命幾ばくもない市役所の老役人(志村喬)が夕刻、ブランコに揺られながら、独り歌を口ずさんでいるシーンがありました。確かその時点で、マルセ自身もガンに冒されていたのではなかったかと思います。いずれにしても、そうした背景があるせいか、見るものを引きずり込むような“凄み”が彼の芸の中にあったのを憶えています。

マルセ太郎 「生きる」より「ゴンドラの唄」場面

さっきも少し触れたドキュメンタリーの中で、マルセと妻がテレビを見ながら、ああでもないこうでもないと“議論”しているシーンがあったのを思い出しました。

マルセの生い立ちが彼をそうさせるのかどうかわかりませんが、テレビなどを見ていてもやたらに腹立たしくなり、テレビに“いちゃもん”をつけながら見るという話でした。で、挙げ句の果てには妻との“論争”に発展するというわけです。

そのときのテレビは何を映していたのか? 確か、有名人が誕生日とかいってバースデー・ケーキのろうそくを吹き消したりしているシーンだったか? マルセはそれを見ながら、

「オレは誕生日にあんなことをしてもらったことは一遍もないなぁ、、、」

そうしたら彼の妻も同じ画面を見ながら、

「私だってないわよ。あんなこと」

といっていました、ね。

マルセ太郎。享年67歳。

気になる投稿はありますか?

  • 2013/01/11 サムライのイメージ論・芸術家の場合2013/01/11 サムライのイメージ論・芸術家の場合 質問をひとつさせてもらいます。「侍」と聞いてあなたはどんなイメージを持つでしょうか? 正直な話、私は、昔に侍といわれた人たちが日々をどんな風に過ごしていたか、すぐにイメージすることができません。 ネットの辞典ウィキペディアにある記述にさらっと目を通してみますと、世の中が安定してからは、彼らは支配階級に仕える下級役人で、今の多くのサラリーマンと同じように、上昇志向 […]
  • 伊丹十三を取り上げた番組を見たけれど伊丹十三を取り上げた番組を見たけれど 今月10日午後から14日の昼頃にかけ、私が使うインターネット回線が途切れ、使えなくなったことは本コーナーで書きました。 https://indy-muti.com/49963/ 原因は、光ファイバー回線が物理的に断線したことです。それが起きたのが三連休の初日であったことが結果的には災いし、復旧までに時間を要すことになりました。 空き時間ができれば、ネッ […]
  • 今のテレビ界を象徴する漫画家の死今のテレビ界を象徴する漫画家の死 漫画の神様といわれた手塚治虫(1928~1989)が、テレビアニメを嫌っていたことはご存知でしょうか? たしか、そういう態度であったと記憶しています。 日本のテレビアニメが手塚の「鉄腕アトム」で始まったことを思うと、逆のような気もするかもしれません。しかし、手塚はテレビアニメを嫌っていたのです。 理由は何となく理解できます。 日本のアニメの長寿番組に「サザ […]
  • 人には「助け」が必要人には「助け」が必要 初めて会った人に、私は「こけし70体と一緒に暮らしています」と自己紹介したら、相手はどんな反応をするでしょうか? 理由を説明したら、はじめは驚いた相手も納得するでしょう。 朝日新聞・土曜版に「私の The […]
  • 私が考える天才の条件は二つ私が考える天才の条件は二つ あなたは、「天才」と聞いてどんなことや人をイメージしますか? 朝日新聞は、新年幕開けの紙面に、「天才」を巡る考え方をたしか六回にわたって取り上げました。 その最終回に、同時代を生きる天才として、大谷翔平選手(1994~)と藤井聡太八冠(2002~)を挙げ、書評家の渡辺祐真氏(1992~)が次のような考えを示しています。 大谷翔平選手や藤井聡太八冠がこれだ […]