2001/03/19 松田優作

明日の春分の日、彼岸の中日を前にして、あるいはそれに相応しい話題を書いてみようと思います。以下は、今日の朝日新聞の記事から仕入れた“にわか知識”です。

その昔、というにはまだ早いやや昔に、松田優作という一人の俳優がいました。

彼は『太陽にほえろ!』のジーパン刑事で名前を売り、その後も『探偵物語』『蘇る金狼きんろう』といったドラマや映画に出演し、一部に熱狂的なファンを持っていました。しかし、1989年、ハリウッド映画『ブラック・レイン』出演を遺作として残し、この世を去っていきました。

享年40歳(戸籍上は39)。早すぎる死でした。その彼が亡くなって早12年が経つそうです。

そんな松田優作の名が今日の朝日新聞・社会欄の記事中に載っていたのです。

私にとってはまさに初めて目にする名前でした。で、その名前とは_金優作というそうです。彼が日本国籍を取得する以前の本名です(『太陽にほえろ!』に出演が決まった1973年に日本国籍を取得)。

彼は1949年9月(出生届上は1950年)に山口県下関で生まれたとのことです。地理的に朝鮮半島に近いということもあってか、今でも韓国・朝鮮籍の人が市民全体の1.7%を占める土地柄だそうです。

彼は在日1世の母と日本人の父との間に生まれました(某ファンサイトにあるプロフィールによると、彼の父親が韓国人で、母は日本人とあります。新聞の記事と食い違いがありますが、私はどちらが正確なのかはわかりません)。しかし、父は母が妊娠中に姿をくらまし、その後会ったことがなく、顔を知らないそうです。

今現在はどうか知りませんが、彼が少年時代を過ごした下関では、在日に対する偏見が根強く残っていたそうで、そんな中で彼は自分を強く見せる親分肌の少年として振る舞いました。

彼は高校を中退すると「アメリカ国籍を取得したい」思いでアメリカへ渡りますが、1年ほどで帰国し、その後どのような伝手つてを経たのかはわかりませんが、俳優の道へ進みました。その頃には、目の整形手術も済ませていました。

ここで話は少し変わりますが、昨夜、『特命リサーチ200X』(日本テレビ/日曜19:58~20:54)を見ていたら、飽きた美人、、、? いえ、「秋田美人(^_^; の謎」について“リサーチ報告”していました。

それによると、そこには単なるいい伝えなどではなく、「秋田美人」といわれるからにはそれなりにちゃんとした根拠があるというのです。それによると、「はるか古代に今の秋田県周辺の東北地方に、ヨーロッパ系の民族が移住してきたのではないか?」ということでした。それは遺伝子レベルの検査(だったかな?)で証明できるそうです。

もしその仮説が真実だとしたら、ロマンを感じさせる話ではありますね。そうしたことも含め、そもそもが、日本という国は様々な民族の血が混じり合ってできているのかもしれません。

そこには当然、遥か昔から朝鮮半島の人たちの血も混じっていたことと思います。なのに、なぜか今現在の日本にはそうした在日(「在日韓国・朝鮮人」)に対する根強い偏見が残っています。同じハーフであっても、欧米人とのハーフならむしろ歓迎されるのに対し、韓国人・朝鮮人とのハーフは周りの人間も当人自身もどこか触れたがらない部分がなくもありません。

たとえば芸能界ですが、例の「紅白歌合戦」にしても「在日抜きには成り立たない」といわれているほど在日の歌手が活躍しているのだそうです。しかし、歌手本人もファンも誰が在日であるのかは明らかにしないし、されず、一種のタブーにされています。

同じことはプロ・スポーツの世界にもいえそうです。

私は個人的に読売ジャイアンツの西本聖というピッチャーが好きでしたが、彼もそんな在日の一人でした。

ジャイアンツ入団は、その年のドラフト1位だった定岡正二と一緒です。しかし、定岡が当時のマスメディアや周囲からチヤホヤされたのとは対照的に、ドラフト外入団の西本は、誰からも注目を集めないプロ野球人生のスタートでした。いってみれば日陰の苦労人。だからこそ、あれだけの成績を残せたともいえるのですが。

話を松田優作に戻しましょう。

彼、松田優作の演技、人となりにはいつも陰のようなものがつきまとっていた、と多くの人がいったりするのを聞いたことがあります。その原因が彼自身の生い立ちの中にあったのか、なかったのか。今となっては誰も断定できません。

ただ、彼を良く知る人の話として「彼(松田優作)は過去を背負ったり、どこかに帰属したりするようなことはなかった。いつも現在形から未来形で考える」という“証言”があったことを記事の中には書いています。それが本音か、それとも彼一流の強がりだったのかは別にして_。

いずれにしても、私自身は、それが生い立ちであれ、その他の要因であれ、何かしら陰を感じさせる人は嫌いではありません。

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