哀しい男と女の物語

本コーナーの前回分で、小池真理子1952~)の最新書下ろし長編作『神よ憐れみたまえ』を読み始めたと書きました。それを読み終えましたので、感想めいたことを書いておきます。

本作を読み始めるきっかけについては、前回分に書きました。朝日新聞土曜版に政治学者の原武史氏(1962~)が担当する「歴史のダイヤグラム」というコーナーがあり、その10月16日分は、最悪の鉄道事故とされる鶴見事故が取り上げられています。

それについて書いた中に、この事故を織り込んだ小池の最新作があることを知り、関心を持って読むことになりました。

事故は、前回の東京五輪の前年、1963(昭和38)年11月9日午後9時50分頃に起き、この事故により161人が亡くなりました。小池の作品は、事故の前に発生した殺人事件の現場から始まります。映像作品でいえば、始まってすぐのクライマックスといえましょう。