世界中を見渡して、日本国民ほどマスメディアの煽りに無抵抗の国民はいないかもしれません。
個人的には確認できていませんが、漏れ聞く話によりますと、欧米では日本ほどノーベル賞受賞に大騒ぎすることはないそうです。それに比べて日本ときたら、受賞する前から、たとえばノーベル文学賞を受賞するのではないかと村上春樹氏に注目することを何年も繰り返しています。
そしてもしも村上氏が受賞するようなことになれば、国を挙げて大騒ぎするつもりでしょう。このあおりを仕掛けるのは日本の出版界であり、マスメディアであり、大手広告会社の電通であり、受賞を我が手柄のように利用したい安倍政権であったりするのでしょう。
この秋に行われたラグビーワールドカップの騒動を見ても、いかに日本国民の多くがミーハーであるかわかります。それまでラグビーに関心がなく、ルールも知らなかったような人までが、自国の勝利に固唾を飲んだりしています。
私はこの手の馬鹿騒ぎが大嫌いです。煽り連中の術中にはまり、彼らの掌の上で騒いでいる人たちがバカらしく見えて仕方がありません。
こんな日本国民が大好きなフェスティバルが五輪です。これもまた、世界で最も日本国民がこの馬鹿騒ぎが好きとされています。そろそろ浅はかさに気がつきませんか?
こんな国民だから、先の大戦では鬼畜米英を信じ込まされ、大戦になだれ込まされたのです。そして戦争が終結後は、鬼畜であったはずの米国の属国になったのに、それを疑うどころか、戦後は米国に憧れる始末です。
本当に、何とかにつける薬はありませんね。
そろそろ馬鹿げた国際運動会にはそっぽを向きませんか? 私がこの馬鹿げた運動会が2020年に東京で開催されることが決まった時、心底落胆しました。またこれで、それが終わるまで、国を挙げて馬鹿騒ぎするのが目に見えるようだったからです。
案の定、程度の低い日本のテレビや新聞は、開催が決まった直後から馬鹿騒ぎを始めました。
この五輪の花であるマラソンの会場が東京から札幌へ変更するよう、国際オリンピック委員会(IOC)から伝えられました。
日本に真のジャーナリズムがあるのであれば、東京での五輪が決まったときから、問題点があればそれを問うべきでした。
五輪が行われる7月下旬から8月はじめは、日本が最も暑くなる時期に重なります。何でも大騒ぎすることしかできない日本のマスメディアは、その時期にどんなことで騒いでいますか?
日本の猛暑です。テレビをつければ、連日、危険な暑さになると伝え、屋外での運動を控えるよう繰り返し伝えています。
そんな状況下で世界のアスリートに運動をさせる五輪を東京で開くのは正しいことなのか、日本のマスメディアは考えることをしなかったのでしょうか。
それどころか、日本の大手新聞社の読売、朝日、日経、毎日は大会のオフィシャルパートナーに、産経と北海道新聞はオフィシャルサポーターになり、大会を盛り上げる役目を担うことをしています。これでは、大会に否定的な報道は封印せざるを得なくなります。
また、大会の模様を中継するNHKは、この大会を日本に誘致するのにダーティな働きをした電通とズブズブの関係にあり、ある意味、新聞社以上に大乗り気です。
先の大戦では、ブレーキ役になるべき新聞社や放送局が軍部になびき、大本営発表を繰り返しました。新聞やラジオが伝えることが正しいと信じ込まされた国民は軍部に逆らうことなく、死への道をまっしぐらに進まされました。
日本でオリンピックが開かれても国民の命に危険に晒されることはありません。しかし、構図は戦争に突入していった戦前・戦中の日本と同じ構図です。
マラソン会場を札幌に変更するようにほぼ命令された形の小池百合子東京都知事は、これでは自分の面目丸潰れと受け止めたのか、矢継ぎ早に思いつきの抵抗を見せ始めました。
直後に、藪から棒に北方領土を持ち出したかと思えば、次は、東京での開催に固執し、時間を30分早めた午前5時のスタートではどうかといい出しました。賛同する人が少ないと見たか、続いては、東日本大震災の被災地での実施案をぶち上げています。
ほとんど酩酊状態に思われる小池知事は、東京開催に戻り、午前3時にスタートする案を、今日、IOCで調整委員長を務めるジョン・コーツ氏との間で持たれる会談で、持ち掛ける予定だと伝えられています。
スタート時間を午前3時にすることでどの程度の暑さ対策になるのか私はわかりません。それは、レースが行われる前日から当日の気温次第ですが、前日が猛暑日かそれに近い暑さになり、それが朝まであまり下がらない状況であれば、時間を早めても効果は少ないように思います。
また、IOC側から会場変更を迫られて慌ててスタート時間変更に動くということは、それまで数百憶円かけたとされる対策が真の対策になっていなかったのを自ら認めるようなものです。
オリンピックにまったく興味がない私は、東京都が暑さを和らげるためにしているという対策をテレビで見るたび、そんなことで本当に対策になるのかと疑問に感じていました。
問題だと思うのは、そうしたまさに焼け石に水の対策を、テレビや新聞はさも効果があるように報じていたことです。私がたまたま見たNHKのニュースでも、それらに批判的に伝えるものはありませんでした。
おそらく、IOCはそれらが対策になっていないことがわかっていて、東京都には任せておけないと判断し、トップダウンで会場変更を東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に迫ったのでしょう。
後手後手に回る日本のマスメディアは、これまでの不手際を一気に解消する機会をIOCによってもたらされました。IOCの案にのり、東京五輪の招致段階からの問題をこの機会に取り上げ、責任の所在を問うこともできたはずです。
しかし、日本の賢くないマスメディアはその機会を逃しました。挙句の果てには、小池都知事の尻を叩く格好で、IOCの意趣返しとも採れそうな決断に必死の抵抗をさせています。
これを先の大戦の構図にあてはめますと、負け戦が決まっているのに、戦争へ突入させた軍部の判断の誤りを正さず、愚かな軍部に従って国民を負けが見えている戦場へ駆り立てるが如き報道ぶりです。
IOCは、2020年の大会を「7月15日から8月31日まで」の期間に開くことを前提に開催都市を募りました。東京五輪が決まったあとにこの期間が決まったのではありません。
すでに書きましたように、この時期、日本は例年猛暑になります。それを承知で日本政府は東京を開催都市にふさわしいとして招致に名乗りをあげているのです。
東京五輪の招致委員会は、立候補ファイルに次のように記してIOCに提出しています。
(五輪が行わっる期間、立候補都市の東京は)晴れることが多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候
今度の問題が起きたあと、それらを伝える記事に反応したコメントには、東京が暑いであろうことを知っていて選んだIOCにも問題がある、というようなものもありました。
しかし、日本国民が考えているほど、他国は日本のことを知りません。逆に、日本で人気のパリの気候を、どの程度正確に把握しているでしょうか。オリンピックの開催期間、最低気温と最高気温がどの程度なのか、日本人で正確に答えられる人はそう多くないのではないでしょうか。
今はどうか知りませんが、以前見聞きした話では、米国の学生に日本の地図を書かせると、多くが正確に書けないそうです。ましてや、日本の気候は、大ざっぱな印象しか持っていなくても不思議ではありません。
ですから、日本からの正式な立候補ファイルに五輪を開くのには最適とあれば、それを信じたIOCを責めることはできません。
責められるのは、そのファイルを作成した東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会であり、正しくない日本のアピールに気がつきながら、問題視して報じなかった日本のマスメディアです。
マスメディアは、問題視するどころか、IOCから会場変更を強く迫られる今になってもなお、小池都知事を盾にして無駄な抵抗をしているありさまです。
また、先の大戦を持ち出しますが、国内に残った女性や年配の男性には竹槍を持たせ、敵兵への抵抗を迫ったそうです。米機からは焼夷弾や爆弾を落とされます。それに、竹槍でどう立ち向かうというのでしょう。
この理不尽な命令を知っていた当時の新聞やラジオは、軍部の無能さは一切批判せず、日本人の戦意を高揚するような報道に徹していました。
今のマスメディアにできることがあるとすれば、2020年に行われる予定の東京五輪を冷徹に俯瞰し、できる限り正確に伝えることです。
大会招致の段階で、その時期に国際陸上競技連盟(IAAF)の会長をし、アフリカ票を差配できたラミーヌ・ディアック氏に接近し、彼の息子のパパ・マッサタ・ディアック氏経由で多額の金が動くなど、不正な動きがありました。
また、安倍晋三首相が招致のためのプレゼンテーションで述べたことも、真実でないことばかりでした。その挙句に勝ち取った東京五輪ですが、開催される時期が、日本で最も暑い時期なのであり、アスリートには最悪の時期です。
これらを日本のマスメディアは国民に正確に伝えるべきです。それができないのであれば、竹槍で対抗させようとした軍部の戦略のなさを暴けなかった当時の新聞やラジオと何ら変わりがないといわざるを得ません。