今はどんな分野でも、アナログがデジタルに置き換えられることが進んでいます。
私はこだわりがないので、アナログへの郷愁というものは持たず、デジタルのほうが利便性が高いのであれば、デジタルへの抵抗感は持ちません。
本を読むにしても、紙に印刷された本に固執することはありません。今、新たに読書の対象を見つける場合、電子書籍版が出ていることがわかれば、迷うことなく電子書籍版を選びます。
私はフィルムの時代から写真撮影を趣味としてきました。この写真の分野もデジタル化が著しいです。
私は今もフィルムの良さを知っており、フィルムの価格や現像代がある程度抑えられるのであれば、フィルムで撮影したい気持ちはあります。
しかし利便性という点ではデジタルに圧倒的な有利性があり、今、フィルムで写真を撮ることは百パーセントありません。
このような前置きを書いたあと、音におけるデジタルとアナログについて書きます。
音楽を楽しむ環境もデジタル化が著しいです。
この分野でも私はデジタルに抵抗感を持ちませんでした。1980年代にコンパクトディスク(CD)が登場してからは、アナログのレコードでしか発売されていない場合以外はすべてCDのアルバムを購入するようになりました。
今はネットで音楽がストリーミング配信される時代になりました。音楽を楽しむ環境がデジタルで埋め尽くされている状態といえましょう。
ここまで書いてきたように、私はデジタルへの抵抗感がありません。そんな私が、ふと、アナログレコードを聴き、その音を確認することをしました。
ネットの動画共有サイトYouTubeでも、アナログとデジタルで録音された音楽の違いを解説する動画があります。
それらをいくつか見て、見たときは、そこで話されていることに納得しました。
そうした動画のひとつでは、アナログのレコードを完全に否定することが語られています。
私は本動画を見て、納得し、本サイトで紹介しています。
本動画で解説されていることは、正しい知識に基づいたものだと思います。私は本動画の配信者のような専門知識を持たないので、反論することはできません。
しかし、耳から入った音を処理するのは脳です。
それを意識するようになったのは、2年前の9月、私の聴力が「音響外傷」を負ったことによってです。そのときのことは本コーナーで取り上げています。
私の場合は医師に診てもらったわけではないので、私のケースが音響外傷だったとはいいきれません。自分で勝手にそのように考えているだけです。
幸いなことに、私に起きた聴力の傷害は、何もせずに、半年か一年ほどで完全にもとに戻りました。
この外傷らしきことが起きたとき、ネットで調べ、人間が音を音として認識する仕組みを知ることができました。
単純化していうと、耳の奥には微細な羽毛のようなものが生えていて、耳から音が波となって入ってくると、それが風に揺れるようなことが起きるのでしょう。
その振動のようなものが脳へ送られ、音として認識される、と私は素人なりに理解しました。私の理解が間違っているかもしれません。
ともあれ、アナログの音であれデジタルの音であれ、耳から入った音は、そのような過程を経て音として認識し、その音にリズムやメロディがついていれば、音楽として愉しむということになります。
その場合、脳内では、音の周波数の領域まで認知し、これはアナログ、これはデジタルとハッキリ分けて聴き取るものでしょうか。
上で紹介したYouTube動画では、CDのほうがアナログレコードよりも広い周波数の音が記録されていると述べ、だから、CDのほうがアナログレコードよりも優れているという結論を導いています。
上の動画の配信者は、別の動画で、真空管アンプの音に温かみのようなものを感じるのは、真空管アンプで聴いているという心理的効果が働いた結果で、真空管アンプから出る音が、特別に柔らかくなったりするようなことは起きない、というようなことを述べていました。
しかし、結局のところ、耳から入った音を処理するのはそれぞれの人の脳です。その処理の過程で、たとえば心理効果が働いて、なんとなく良い音に聴こえるのも、その人特有の聴こえ方で、それを他人が否定することはできないのではないか、とも考えたりします。
他人の脳内で起きていることは、他人には理解が及びません。そこで、心理効果を働かせようが、働かせまいが、その人の自由ではないのかと考えたりするからです。
人が音や音楽を楽しむ行為は、すべてを数値に置き換えることはできないように考えます。
たとえば、紙に数字の「2」が書かれているを見たら、それを見た誰もが「2」と認識します。
しかし、一枚の絵だったらどうでしょう。見る人によって、その絵から受ける印象は違うだろうと思います。子供であっても、百人いたら、百通りの見方になるのではないでしょうか。
音でも、「あ」という声が録音されているのを聴いたら、聴いた人すべてが「あ」という音に認識します。
音の場合でも、たとえば、さまざまな重機の音や作業の音、大勢の人の声が入り混じった工事現場の音を収録し、それを聴いてもらったらどうでしょう。
それを聴く人が、それぞれのイメージを持つのではないかと思います。
私は一昨日、ふと、アナログレコードを聴いてみようと思いました。そのとき、たまたま手にしたレコードは、『MISTLETOE MAGIC(ジャズクリスマス/PAJショーケース)』というジャズミュージシャンによるクリスマスソングの定番を9曲収めた限定版アルバムです。

曲名 | アーティスト名 |
---|---|
サンタが街にやって来る | エルビン・ジョーンズ・クインテット |
きよしこの夜~赤鼻のとなかい | フリー・フライト |
われら3人の東の王 (われらはきたりぬ) | ラリー・ブコビッチ・セクステット |
オー・ホーリー・ナイト (さやかに星はきらめき) | フル・フェイス&クレディット・ビッグ・バンド |
そりすべり | リッチー・コール・クインテット |
クリスマス・ワルツ | メレディス・ダンブロッシオ~ハンク・ジョーンズ |
クリスマス・ソング | マル・ウォルドロン・クァルテット |
リトル・ビバップ・ドラマー・ボーイ (リトル・ドラマー・ボーイ) | レス・デマール・セクステット |
われら3人の東の王 | フル・フェイス&クレディット・ビッグ・バンド |
アルバムの帯に、日本公演のスケジュールが印刷されており、そこに1983年とあるので、その頃に手に入れた一枚だろうと思います。

本バルバムのB面一曲目に収録されているリッチー・コール・クインテットの『そりすべり』を、ヘッドホンで聴いてみました。
私が使っているヘッドホンは、城下工業製の”SOUND WARRIOR SW-HP10s”というモデルです。特別高級なヘッドホンではありませんが、気に入って使っています。
そのヘッドホンから聴こえる音楽を聴き、久しぶりに本物の音を聴いたように感じました。
それは心理効果というもので、デジタルの音に比べてアナログの音が特別優れているわけではない。そのことは音を測定すれば、数値で説明できるといわれるかもしれません。
しかし、そんなものでは説明できない音に圧倒されたのは事実です。音を言葉で表現するのは難しいです。ひとことでいえば、音に厚みのようなものを感じました。そして、その厚みを、デジタルでは表現できないのではと感じました。
レコードでそれを聴いたあと、比較する意味で、その音楽を収録してあるAppleのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)のiPod classicで聴きました。

聴くのに使ったのは、同じヘッドホンです。音量もほぼ同じぐらいにしました。
聴こえてきた音楽を聴き、聴こえてきた瞬間、レコードで聴いたのとは別物に感じました。圧倒的にレコードの音が私には優れて聴こえました。
ただ、私のこの比較は、レコードとCDの音の比較としてはふさわしくありません。なぜなら、iPod classicに収録してある音源は、アナログのレコードだからです。
今回聴いたアルバムがCDになっているかどうか私は知りません。私はアナログのレコードで持っているだけです。
そのレコードの音源を自分でデジタル化し、その上で、iPod classicに収録したのです。
ですから、デジタルといっても、CDで再生した音をそのまま聴いたわけではなく、デジタルの音とするには問題があるのかもしれません。
それは差し置いても、YouTubeで次のような切抜き動画を見ました。
この短い動画で、配信者は、個人的な意見と断ったうえで、アナログレコード用に録音された音楽というのは、それが録音された当時の再生環境で再生されることを前提に録音されているのだから、当時の環境になるべく近い装置で再生するのが望ましいというような考えを述べています。
本更新は、とりあえずといった感じで書きました。別に深い意味はなく、デジタルのほうがアナログより優れているとする人の考えを否定する考えもありません。
自分の耳で聴いたら、レコードから聴こえた音楽が、とても厚みがあり、非常に良い音に聴こえたという、私が感じた「事実」を書いたまでと受け取ってください。
このあとは、レコードとCDの両方で持っている音楽を聴いて、その違いを比較してみようと思っています。それで気がついたことがあれば、本コーナーで取り上げることにします。