私が昔から写真を趣味にしていることは本コーナーで事あるごとに書いています。
昔ですからデジタルのカメラなどはあるはずがなく、カメラといえばフィルムに撮影するものでした。通常は35ミリ幅のフィルムを使い、撮影します。
そのため、コンパクトカメラであっても、デジタル時代の今でいう35フルサイズで撮るのが当たり前でした。
デジタルカメラが一般的に使用される直前だったと記憶します。「アドバンストフォトシステム」という新しい規格が登場しました。略して「APS」といわれました。
その規格のカメラが出たあと、私の姉がAPSのコンパクトカメラを購入しています。たしか、江角マキコ(1966~)がコマーシャルに出ていました。
デジタル全盛の今、カメラを趣味にしている人であれば、「APS」には聞き覚えがあるでしょう。35ミリフルサイズより一回り小さな撮像素子を持つ規格に「APS-C」があるからです。
私がデジタル一眼レフカメラを使い出したのは2009年4月です。最初に買ったのは、キヤノンのEOS Kiss X2というエントリークラスのカメラです。

それを購入する前、ネットでそのカメラについて調べました。X2に搭載されている撮像素子がAPS-Cだったからです。当時、ネットの「価格.com」などの掲示板にある書き込みを読むと、同じ焦点距離のレンズであっても、APS-Cなら、1.5倍(キヤノンの場合は1.6倍)焦点距離が長くなるといったようなものがよく見受けられます。
私は当時から、マウントアダプタを使い、フィルムの時代に使い、最も好んでいた、ヤシカ・コンタックス用のカーツ・ツァイス、プラナー50ミリF1.4を使ったりしました。

プラナー50ミリをX2に初めてつけたとき、それまでに聞いたような、50ミリのレンズが1.5倍や1.6倍にならず、50ミリのレンズは50ミリのレンズであることを知り、驚くと同時に、とても嬉しくなりました。
考えて見れば、撮像素子がサイズが変わったからといって、レンズの焦点距離が物理的に1.5倍や1.6倍になることはあり得ません。50ミリのレンズであれば、APS-Cで使おうが、マイクロフォーサーズで使おうが、50ミリのままです。当たり前のことです。
1.5倍や1.6倍云々といわれていたのは、ファインダーで見える範囲と、実際に撮影できる範囲が、APS-Cは35ミリフルサイズの1/1.5や1/1.6であることから、1.5倍や1.6倍長い焦点距離のレンズを使っているように感じるということです。
本日、YouTubeで、次の動画がお勧めに上がっていたので見ました。
本動画の配信者も、撮像素子のサイズと焦点距離の関係を勘違いされています。
すでに書いたように、撮像素子が変わっても、レンズの焦点距離が物理的に変わることはありません。ですから、どのサイズの撮像素子であっても、そのレンズの焦点距離で、ボケるのであればボケます。
以前、YouTubeでご自分のチャンネルを運営されている桜風涼(はるかぜ・すずし)氏が同様の勘違いをされた動画をハインされていたので、本コーナーで取り上げたことがあります。
そのときの桜風氏は、フルサイズとAPS-Cのカメラに同じレンズをつけ、ボケがどのように変わるかについて話されていました。
この種の写り方を「検証」する人が陥りやすい勘違いがあります。それは、同じレンズを使い、撮像素子サイズの違いを比較するとき、被写体を同じ大きさに写るように揃えてしまうことです。今回紹介した動画の配信者も同じような「検証」をしています。
レンズの特性として、フォーカスが合う範囲内で、被写体に近づけば近づくほど、フォーカスがあったところ以外のボケが大きくなります。
これを理解すると、たとえば、フルサイズとAPS-Cに同じレンズをつけ、被写体を同じ大きさに撮影した場合、ボケ具合がどのように変化するか想像できると思います。
APS-Cサイズの場合は、フルサイズよりも撮像素子のサイズが1/1.5や1/1.6小さいのですから、フルサイズで撮影するときより被写体から離れなければならなくなります。
被写体にレンズが近づくほど、フォーカスがあっていないところがボケると書きました。それと反対に、フルサイズよりもAPS-Cは被写体から離れるわけですから、ボケる量が少なくなるのがわかってもらえるでしょう。
このような理由から、APS-Cはフルサイズに比べて「ボケにくい」といった誤った認識が持たれやすくなります。
たとえば焦点距離が50ミリのレンズを使い、フルサイズとAPS-Cで、被写体から同じ距離で撮影すれば、どちらもまったく同じボケ具合になります。レンズの焦点距離は物理的に変化することはないからです。
その場合に撮影できる写真がフルサイズとAPS-Cで違うのは、写った被写体の大きさです。APS-Cはフルサイズの1.5倍や1.6倍大きく写るということです。
このあたりの理屈をご理解いただけたでしょうか?
