ジャニーズに明け暮れた日本株式会社の異常

昨日に引き続き、本日は朝日新聞がジャニーズ問題を振り返る「紅白とジャニーズ 終わった蜜月」と見出しをつけた記事を掲載しています。

朝日新聞の系列にもテレビ朝日というテレビ局があります。その局の「ミュージックステーション」は、ジャニーズ事務所に忖度することで有名な番組だそうです。

その番組を通じて、問題の本質に迫ればいいところ、朝日は、日本放送協会(NHK)「紅白歌合戦」に焦点をあてて記事にしています。

本記事の右端にある小見出しは「44年ぶり出場ゼロ NHK幹部、視聴率への影響を不安視」です。

この見出しを見た読者の中には、「44年前からジャニーズ事務所のタレントが紅白に出ていたのか」と勘違いする人がいるかもしれません。

記事の本文を読むことで、同事務所の最初のアイドルグループの「初代ジャニーズ」19621967)が、前回の東京オリンピックの翌年、1965年の「紅白歌合戦」に、同事務所のタレントとしては初めて出演したと書かれています。

58年も昔から、「紅白」を見る国民は、好むと好まざるとに拘わらず、ジャニーズ事務所のタレントに付き合わされたことになります。

その多くは、ジャニー喜多川19312019)の「毒牙の洗礼」を受けたわけですよね。そんなタレントらが、朝日が本記事で書く「国民的番組」に半世紀以上にわたって、大手を振って出ていたということです。

朝日はNHKで芸能番組の制作に関った、元職員も含めて、話を訊いて記事にしています。

それらの内容に目新しいものはありません。中には問題意識を持つ人もいますが、大きな力によってそれが維持されているため、個人の力ではどうしようもなかったでしょう。

社会学者の太田省一氏によれば、「紅白」でジャニーズ事務所のタレントが特別な存在になったのは1990年代後半で、同事務所に所属したSMAP19912016)が台頭してきてからだと指摘しています。

私は「紅白歌合戦」は嫌いで、その頃にはもう見ることをやめています。また、アイドルグループにもまったく興味がないため、そんなグループがあることは知っていましたが、彼らの歌を自分から好んで聴いたことは一度もありません。

このあたりの事情について、2010年代にNHKの番組制作分野にいた元幹部は、次のように取材に答えています。

若者の(「紅白」の)視聴率を上げろとは言ったが、ジャニーズを起用しろとは言っていない。視聴率も上がっていない中、むしろ出すのはやめようと言った。

その要求を制作現場が受け入れなかったことについても次のように述べています。

ジャニーズと結びつきを強め、がんじがらめだったんだろう。

ほかのNHK元職員も、異口同音に、次のように当時を振り返っています。

嵐が司会に起用された10年頃から、ジャニーズとNHKはズブズブの関係だった。

2016年に解散したSMAPに替わって「紅白」の盛り上げ役になった19992020)は、2009年から2020年まで、12年も連続の出場です。

それだけでなく、2010年からは、グループやグループの中の個人が白組の司会をすることまでNHKはさせています。

ここまで来ると、上に描いたNHKの元幹部や元職員のように、その異様さに、問題視する人が出てくるのも当然といえましょう。

ここまでは、「紅白歌合戦」をめぐるNHKの対応です。

本問題からも、日本のマスメディアが構造的に抱える悪しき構造が見えてきます。

マスメディアとひとくくりにいっても、それぞれはまったく別の会社組織です。そうであれば、他局や他紙に問題があることに気がつけば、その都度、マスメディア同士で、意見を闘わして然るべきです。

ところが、日本のマスメディアはそれをほとんどしません。

それどころか、「紅白歌合戦」などでは、関係がないはずの他局や他紙が、このイベントに乗っかって、自分たちの記事にするありさまです。

今年の「紅白」にしても、「44年ぶりにジャニーズのタレントの出演がゼロになる『紅白』はどうなる?」といったように。

結局のところ、他者も「紅白」というイベントに乗っかって商売をする環境が出来上がってしまったため、本来は批判すべきところもそれをせず、日本のマスメディア全体で、ジャニーズ事務所が幅を利かす「紅白歌合戦」を盛り上げる構造になっていました。

それが問題視されて以降も、なお、それに乗っかるメディアが数えきれないほどある状況です。

この日本の構造を改革するのは、口でいうほど簡単なことでありません。

マスメディアばかりでなく、識者といわれる人も、これまで、「紅白」に鋭い指摘をした例がほとんどありません。

日本を代表するような企業であっても、この構造に乗っかり、自社の広告にジャニーズ事務所に所属するタレントを進んで起用してきました。

また、マスメディアが提供する娯楽を、多くの国民が抵抗なく受け入れて来ました。

私は本コーナーで昔から書いているように、「紅白歌合戦」は嫌いで、見ることをしてきませんでした。しかし、私のような人間は少数派といえましょう。

マスメディアはこのところ、少数派の意見も聴けなどと偉そうに「説教」を垂れます。しかし、そのマスメディアが、多数派の声を重視して、少数派が眼中にないかのような紙面づくりや番組作りをしています。

それらこれらを根底からひっくり返すには、相当大きな覚悟と力が要ります。

それが起きることを私は期待しますが、期待倒れに終わらないか懸念します。

ともあれ、今までの風習をやめ、各メディアが独立した精神を持つことを願います。他社の顔色を見ることばかりせず、他社に問題があるのであれば、それを報じることを控える必要もありません。

それでこそ、日本のマスメディアも多様化となり、活性化できます。

同じことは、識者や個人にも求めたいです。それができるようになったとき、新しい日本が始まります。