ラットに「投与」したといわれても

本日の朝日新聞一面に次の見出しの記事があります。

小林製薬が製造・販売するサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取したことで、健康被害が相次いだとされたことについて、厚生労働省が原因を調査をし、その結果を昨日(18日)発表した内容を伝えるものです。

本記事内に、本サプリを摂取した人が、17日時点までに502人が入院し、120人が亡くなったと書いています。記事にする以上、読者に誤解を与えないよう、もっと正確に書くべきです。

本騒動をマスメディアが大々的に報じることで、それに刺激された人が、小林製薬に相談を寄せています。本サプリによって死亡したとする相談が当初は170人に上りました。しかし、よく話を訊くと、その内の91人は本サプリを摂取していなかったことがわかりました。

マスメディアの報道に煽られた人が、家族が亡くなったことと本サプリを関連付けて、同社に相談を寄せた結果でしょう。

こうしたことを考えると、入院している502人も、本当に本サプリを摂取した人だけなのか疑わしくなります。

その後、同社の本サプリを摂取して亡くなったという相談が97人になりました。その人たちを専門家の意見も聞いて慎重に調べ、97人の約8割に当たる79人は、本サプリ摂取と無関係だったことがわかったことはすでに報じられています。

残るのは18人です。上に書いたことが報じられてから時間が経っているので、もう結論は出ていると思います。

しかし、その後の結果は報じられていません。もしも1人でも本サプリと死亡の因果関係が明らかになればマスメディアが大きく報じるでしょう。それがないことから、そのような結果が出なかったことが窺われます。

ここまで書いたことでわかるように、本日の朝日の記事で伝える「接種が確認された死者は120人」という記述は、読者に誤解を与えかねません。もっともそのあとに、「死亡との因果関係は自治体や企業が調査している」とは書いていますけれど。

朝日の記事は、次のように結ばれています。

厚労省は18日、プベルル酸が含まれる製品を摂取した可能性があり、何らかの腎障害がある死亡例が6人報告されたと明らかにした。

これもよくわかりません。この6人は、これまでの調べてまだ結果が出ていなかった18人に含まれる6人と考えていいわけですね。ということは、18人のうちの12人には本サプリとの因果関係がなかったことが確定したということになりそうです。

こういう大事な途中経過は、その都度記事にしてください。

それにしても、因果関係を調べるのには時間がかかりますね。残った6人にしても、因果関係は確定しているわけではないということです。

もうひとつの、「プベルル酸が含まれる製品を摂取した可能性がある」というのも曖昧です。

この6人が摂取した本サプリに本当にプベルル酸が含まれていかどうかは、いまさら確認するすべがありません。亡くなって、火葬に付されてしまったからです。もう確認できないものに、どのような結論を出すつもりなのでしょう。

今回の厚労省の発表でわかったのは、本サプリの製造過程で、青カビ由来の「プベルル酸」が健康被害の原因と「強く推定」しているらしいことです。結局のところ、それはいくら「強く」ても、「推定」の段階なわけですね。ということは、それが「確定」したわけではないことになります。

朝日の記事には、健康被害の原因をプベルル酸と推定した上で、その毒性の強さについて実験したことが簡単に書かれています。実際のところ、その実験の詳細もよくわかりません。記事には次のように書いてあるだけです。

プベルル酸を実験用ラットに7日間投与したところ、腎臓の尿細管の壊死が引き起こされることが確認されていた。

ラットにはどのように「投与」したのですか? これが大きな問題です。

プベルル酸を注射器でラットの体内に直接注入する「皮下投与」であるとすれば、適切な実験ではないといわざるを得ません。それでは、今回、健康被害を訴えた人とは異なる投与方法になるからです。

健康被害を出したとされた本サプリからプベルル酸だけを抜き出し、それだけを注射器で皮膚投与した人は1人もいません。

プベルル酸が危険だとされた実験でも、それだけをマウスに皮下投与し、5匹中4匹が死んだとされています。それをもって、プベルル酸の毒性が強いことの根拠にされています。

しかも、実験に用いられたマウスは健康体ではなく、マラリアに感染させています。それでは、マラリアとプベルル酸のどちらがマウスを死なせたかわかりません。

どちらにしても、すぐ上で書いたように、それにどのような毒性があっても、製造の過程で、おそらくはごく少量が主成分の紅麹に混じった程度でしょう。

しかも、それは大量に作られ、錠剤状になったものを、接種者は口から体内に送り込む「経口投与」をしています。そのことで、死亡したり、入院が必要になるほどの健康被害を出したとは信じがたいです。

厚労省は「原因究明は一段落した」としていますが、もう一度、実験用ラットにプベルル酸を含む本サプリを作り、それを粉末状にするか、それを水に溶くなどして、7日間、ラットの口から「経口投与」する実験をお願いします。

その結果、本当にラットが腎臓の尿細管が壊死するか観察してみてください。

その実験を受けたラットに同様の症状が起きることがわかって初めて「原因究明は一段落した」と結論付けることができるようになります。

厚労省は小林製薬の紅麹サプリが健康被害を出したとしていますが、その健康被害の原因が、実は別のところにある可能性に目を向けて欲しいです。

小林製薬が本サプリの販売を始めたのは2016年です。それから8年ほどの期間、健康被害を訴えたり、本サプリで亡くなることは起きていません。どうしてそれが、今年になって俄かに問題にされているのですか?

そのあたりのことを俯瞰して見る目を持てれば、本サプリ以外に原因を求めるのがまともな態度といえましょう。

とりあえずは、上で書いたような方法でもう一度実験をされることをお勧めします。

小林製薬の紅麹サプリを液状にし、それを皮下投与した人は1人もいませんから。

結論を出すのは、そのような実験をして、その結果を見てからでも遅くありません。